雪に覆われたフィールドは楽しんでみたいけれど、今からスキーやスノーボードを始めるのはちょっと……という方、「スノーシュー・ハイキング」はいかがでしょう。スノーシューとは西洋版のかんじきのこと。ふかふかの新雪だって深く沈み込むことなく歩き回れるという機動性がスノーシューの強みです。その歴史は古く、実に紀元前までさかのぼるといいますが、レジャーとして認知されたのはここ20年のこと。そういう意味ではまだ「若い」ツールですから、体験したことがないという方にその魅力を少しだけご紹介します。
スノーシューのメッカ、なべくら高原へ
1月末、長野県のなべくら高原で2日間に渡って開催された「スノーシューフェスティバル2012」に参加してきました。今年で12回目を数えるこちらは日本最大級のスノーシュー祭りで、国内の主要スノーシューメーカーが一堂に会してブースを出展します。アトラス、MSR、タブスなど最新モデルのスノーシューが無料で試せるほか、経験者〜初心者までが楽しめるガイド付きツアーが開催されるなど、雪野原とスノーシューを存分に楽しめる内容が盛りだくさん。そもそもなべくら高原は、スノーシューと相性のいいロケーションだと言います。スノーシュー(昔は和かんじき)がないと身動きがとれないくらい雪が深いと言う土地柄、そしてスノーシューを履いてのハイキングに適した、ゆるい尾根がいくつもありコースバリエーションが豊富と言う地形的な強み。そんな背景から、日本でもいち早くスノーシューが根付いたエリアなのだそう。
テクは一切不要、スノーシューの楽しみ方って?
このイベントを主催する「なべくら高原・森の家」の支配人、高野賢一さんにスノーシューの楽しみ方を伺いました。
「スノーボードやスキーのように、技術の習得に時間がかからない。これがスノーシューの特徴でしょう。履いたらすぐに遊びに行けるから未経験者でも始めやすい、そして子どもから80歳の方までが一緒に楽しめます。スノーシュー・ハイキングでは雪原を歩きながらも、雪上に残されたキツネやウサギなど野生動物の足跡を追いかけるアニマルトラッキングを楽しんだり、登山道から外れてブナ林を巡ってみたり、春夏シーズンとは趣の異なる冬の自然を楽しめます」
沢や地形にさえ気をつければ、夏の間は登山道でしか巡れないスポットも自由に散策できる。スピードを楽しむウィンタースポーツとはひと味違う遊び方といえるでしょう。
ガイドとともにいざ、雪原へ
フェスティバル初日は初心者向けのショートツアーが開催されました。出発前に正しいザックの背負い方からポールの持ち方、「休憩・水・行動食」の大切さについてまでレクチャーを受けるので、未経験者でも安心して参加できます。
当日のガイド、玉置健二さんによれば、「歩くと立ち止まるを繰り返すスノーシューでは、息が切れる前、喉が渇く前、お腹が減る前に休憩をとる、水分を摂る、行動食を口にするというアクションが大切」なんだそう。また、その日の夜には「ナイトスノーシューハイキング」にも参加。残念ながらの降雪で月明かりの下の雪見散歩……とはいかなかったけれど、昼間とはひと味違う、銀色に輝く世界を堪能したのでした。
翌日は、レベル別に3コース用意されている1デイツアーを体験。前日の夜から雪が降り続いたこの日は、なんと腰までのパウダースノー!雪面に向かってダイブしたり、交代でラッセルしたりという体験は、スノーフィールドならではのもの。休憩時にはスコップを使って雪のテーブルを作るなど、はじめて雪山に遊びに来たというグループも童心に返ってパウダースノーを満喫しました。
なべくら高原では週末ごとにスノーシューのイベントを企画しています。80キロにも及ぶ信越トレイルの一部を歩いたり、豪雪を活用し雪中酒を掘り出すイベントだったり、内容も行き先もさまざま。また、なべくら高原以外でも玉原高原や奥日光戦場ヶ原周辺、菅平高原などでもスノーシューが楽しめます。平年よりも降雪に恵まれた今季、残された雪山シーズンをめいっぱい遊び尽くすためにも、ぜひスノーシューをお試しあれ。
スノーシュー・ハイキングに適したウェア
歩いている間は汗をかくので、吸湿速乾性にすぐれたアンダーウェア
着用したまま歩くので、ある程度の保温性が得られる中間着。休憩時はぐっと冷えるので、コンパクトに収納できるダウンジャケットがあると重宝する。
防水性・防風性にすぐれた薄手のハードシェル&パンツがベスト。
足下は保温性にすぐれたスノーブーツが最適。
足回りをガードするゲイター(スパッツ)があるとなおよし。
グローブは薄手のインナーと、防水・防風のアウターをレイヤードして使うのがいい。
なべくら高原以外でスノーシューが楽しめるフィールド
奥日光(栃木県)、玉原高原(群馬県)、みなかみ温泉周辺(群馬県)、乗鞍高原(長野県)、ひるがの高原(岐阜県)、奥美濃(岐阜県)などでガイド付きツアーを開催。
(撮影 山本哲也/文 倉石綾子)