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海に想うと書いて“海想(かいそう)”。海への優しい心が伝わってくる名前だ。そして“女海想(おんなかいそう)”は、“海想”をのれん分けした、帆かけサバニを愛する女性だけのチーム。  

沖縄の青い海をチームワークで漕ぐ帆かけ「サバニ」とは、沖縄の海人(うみんちゅ)が使っていた舟のこと。今ではその姿を見ることは稀で、サバニレースなどで使われることがほとんど。中にはこの舟で旅する人たちもいる。 レースで活躍する女海想のメンバーも昨年、海想のメンバーとして沖縄本島から与論島、沖永良部島、徳之島、奄美大島、宝島、悪石島、口之島、屋久島、種子島、そして宮崎へと約805キロの航海を楽しんだ。  

彼女たちは今、青い海に浮かぶ帆船の姿に魅了され、レースだけでなく、沖縄に訪れた旅人たちにその素晴らしさを伝えている。 どのようにして “女海想”は生まれたのか。 「それまでは混合チームにいた3人の女性クルーたちが、応援船から“おんな、がんばれー”と声をかけてもらっていたんですよ。その声がとても力になったし、記憶に残っていたこともあって、いっそのこと女性だけのチームをと思い、“女海想”に(笑)」

レースに出るからにはベストを尽くす。

「個人種目ではないので、フルメンバーで練習するのはなかなか難しいんです。でも、できるだけ休みを合わせて週一くらいは集まるようにしています。そして海に出たら一日中漕ぐ、朝9時に集合してお昼まで漕いで、浜辺でごはんと昼寝をすませたら、夕暮れまで再び海へ出て漕ぐ。

だいたい一日5〜6時間ですね。とにかくひたすら漕ぐんです。よく言われるのは、“海の上にどれだけたくさんいるかが大事。論より証拠じゃないけど、論よりカラダで覚えることを重視しています。 もちろんチームによっていろんな楽しみ方があるけれど、海想は“やるからには一生懸命やって上位を目指す。上位を目指すことによって練習もするし、技術も磨かれる。そうやって楽しんでいこう”というチーム。もちろん参加することが楽しいというチームもあるけれど、私たちは一生懸命ベストを尽くすことも楽しもう、というノリだから」
伝統的なサバニレースに初出場し、43チーム中3位の快挙。

「サバニの伝統的なレースが座間味で開催されています。海想が初参加したのは2003年。34チーム中2位。その翌年には優勝。男女混合チームとして出場していたのですが、徐々に女性のメンバーも増え、次第に女性だけで組んでみたいという思いが生まれ、海想のオーナーである森さん(森洋治さん)の監督の元“女海想(おんなかいそう)”が誕生したんです。座間味のレースに初出場したのが、今から4年前。2009年のレースです。船には6名が乗り、交代要員も含めて女性10名で出場したんです」

今でも鮮明に記憶に残る初サバニレース。

「当時、初めて女性だけで出場する女海想のメンバーに森監督は“まあ、上位入賞狙って頑張れ” って声をかけてくれたんです。とにかくみんな必死。で、ふと前を見たら船が2隻しか見えなくて、仲間の一人が「あれ、ちょっと待って、よく見て?」と叫んだんです。そのあと視力が良い私に「あんちゃん、前見て!何隻いる?」って聞かれて2隻しかいないことに気がついて…。しかも一番前には見慣れた海想。サバニのレースでは座間味丸や海想が優勝候補で、その2隻が前にいることが信じられなくて…。あとはひたすら前に付いていくことと、後ろが結構近くにいたのでとにかく差されないようにと必死で漕いだのを覚えています。結果3位。信じられなかったですね。

でもこの勝つ喜びと、その後南城市で開催されたレースではミスして結果が悪く、負けるってどんなに悔しいかを経験しました。その両方を知ることができたのもサバニをやってきたから。小さなミスとか、気持ちにおごりがあっては勝てないということを教えてもらった気がします。」

海を愛し、パドルスポーツが好きな女性たち

「現在メインで活動しているメンバーは、最も長く経験があるゆうちゃん(友利優子)、海想のスタッフで、普段からマルチでスポーツを楽しむサッチー(大前幸代)、メンバーに加わって一年、後ろで舵をとるアイアイ(三浦藍子)、 3年前のサバニ旅の旅先でサバニの虜になったるみちゃん(山本留美子)、モロカイレースやアウトリガーカヌーも楽しむリコちゃん(渡辺莉子)、子育てしながら一緒にトレーニングするかなこ(吉田可奈子)、イルカのトレーナーをし、トライアスリートでもあるまいちゃん(難波舞)、そして私(まとめ役あんちゃん、荒木瑞枝)。 他にも時間があれば練習に参加してくれる女性たちが何名かいるんだけれど。みんな、普段はのんびりした雰囲気の女性たちばかり。でもレースの時はスイッチが入るみたい(笑)」

“女海想”としての今後

「すべてがまだまだだって思うんです。気象のこと、海のこと、技術もそうだし覚えることがたくさん。例えば、舵取り一つとってもそう。今は一人が担当しているけれど、みんなが舵取りをできるようになったら、お互いの気持ちがわかるようになりますよね。自分のポジションのスキルアップも大切だけど、チームなのでそれも大事。楽しむことも、技術を磨くことも、両方大切に、サバニを楽しんでいきたいんです。 そして女海想は監督の森さんいての女海想。私たちが活躍しなければ意味がない。それが大変とかじゃなくて、ダメじゃん!って言われないように頑張らなきゃとガッツにつながるんだと思います」

帆かけサバニの魅力

「メンバーのほとんどが内地から来ています。いわゆる沖縄出身ではないけれど沖縄の海が好きで移り住んだ人たちばかり。そんな沖縄の海にピッタリとはまる舟がいたから、はまっちゃった、惚れちゃったみたいな感じだと思う。最初は一ギャラリーだった私。まさか自分が乗れるとは思っていなかったのだけど、今の環境のおかげ。舟は船大工さんに作ってもらうのだけれど、それ以外、帆やマスト、細かな備品は売っている物ではないので全部海想の工房で作ってます。その一つ一つを知れば知るほど凄いな…って。 旅をしたり、レースに出場したり、子どもたちに体験してもらったり、大好きな沖縄の海にサバニでこぎ出すことができるだけで楽しいんです」

〈プロフィール〉
女海想のメインメンバーは荒木瑞枝、友利優子、大前幸代、三浦藍子、山本留美子、渡辺莉子、吉田可奈子、難波舞。名護を中心に、年に数回サバニの魅力を伝えるイベントを主催。座間味で開催されている日本で最高峰の『サバニ帆漕レース』初参加で3位。その成績は2011年まで続く。2011年沖縄本島から宮崎までの約805キロを約1ヶ月かけてサバニトリップしたメンバーもいる。彼女たちが所属する海想は、名護で開催される「やんばるレース」を主催する。

フーカキサバニ
サバニ帆漕レース公式サイト

(写真・文 久保田 亜矢)