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SPORTS TRAVELING特集第一弾として、先日公開した平山ユージさんの前編に引き続き、後編をお届けします。(前編の記事はこちらから)

後編は、平山さんがプロデュースを手がけ、名だたるトップクライマーが集結する日本最大のボルダリング大会〈The North Face Cup〉。本年度(2014年)の決勝大会の模様と、その決勝後に毎年世界を代表するクライマーを集めて催行する、クライミングの旅〈Rock trip〉についての平山さんご自身によるレポートを掲載します。

〈The North Face Cup〉
(文 平山ユージ / 写真 ONE bouldering)
記録的な豪雪のなか、海外の猛者を含め1000人以上が集結
〈The North Face Cup 2014〉は9月28日の埼玉予選から始まり北は北海道、南は九州まで全国9会場で1087人が参加し予選会が行なわれた。そして2月8日、9日と45年ぶりの記録的な大雪の中〈Climb Park Base Camp〉で本戦が行なわれた。

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まずは初日、全国9会場で行なわれた厳しい予選会で勝ち抜いた321人の選手達による準々決勝。今年は新しいDivision(レベルごとのクラス設定)としてDivision Funが加わった上にDivision制が始まって2年目にも関らず、下位のDivisionから上位のDivisionへ昇格した選手もこの準々決勝の舞台に上位Divisionの選手として集まっていた。そんな光景を見るとDivision制の導入が一歩踏み出したことを感じる。そしてこの大雪にも関らず2日間で延べ1000人を越える人々が集まり熱戦が繰り広げられたことに選手をはじめ多くの方々の想いが伝わってきた。

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海外からは、シンガポールの姉妹大会〈Boulderactive〉優勝者、ポンティ・ハーディヤント(インドネシア)、ジュディス・シム(シンガポール)そして、チリの姉妹大会〈Master de bouldering〉で優勝したキャロライン・シヴァルディーニ(フランス)、そして男子では〈The North Face Cup 2〉連覇中のダニエル・ウッズ(アメリカ)を押さえ5位に入ったジェームス・ピアソン(イギリス)が参加した。

王者の貫禄を見せた野口啓代の二連覇。ワールドカップ2013の覇者杉本怜が初優勝!
大会は下位のDivisionから華やかに行なわれた。注目のDivision 1(以下D1)とWomen’s Division 1(以下WD1)では、今回ダニエル・ウッズやキム・ジャイン(韓国)の来日は怪我などもあり実現できなかったが、〈Boulderactive〉WD1での2年連続チャンピオンのジュディス・シムが7位と健闘。キャロライン・シヴァルディーニもリードが主な活躍の選手ではあるが決勝にしっかりと残り、6位と日本代表組の中に登りと存在感で刺激をあたえてくれた。そして、ジェームス・ピアソンも決勝にはあと一歩及ばなかったが7位という結果を残し、しっかりと実力を発揮してくれたと思う。

WD1の決勝、勝負は2本目の課題『Rocodoromo』からとなった。選手達はハリボテからのマントルに苦労しそこを抜けた野中生萌、そして完登した野口啓代が3本目の『Proset』に進む。その3本目を二人が完登しスーパーファイナルの4本目『planet』へ。ここでの一騎打ちを世界の野口が制し、王者の実力を見せてくれた。

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続いて男子のD1、WD1もそうだがD1も〈Japan Cup〉前哨戦と言って過言ではなく、残った6人は必ず優勝戦線に絡んでくる面子だ。そして決勝一本目Entre-Prisesを杉本怜、中嶋徹、安間佐千がしっかりと完登、そして高度とアテンプト差(課題にチャレンジした回数)で村井隆一が2本目、『tripledino』課題に進んだ。

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そしてこの課題を征した杉本、続いて高度差で中嶋が次の3本目Prosetに進む。そこで杉本がまずは見事に完登、続いて中嶋が出てくるが2本目で指を負傷し3本目を棄権、ついに杉本が〈The North Face Cup〉の初優勝を飾った。

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世界に羽ばたくための道筋を造る。そのための活性化
今回の〈The North Face Cup〉決勝は国内選手の戦いとなるなかで、WD1の野中、野口の一騎打ちは見応えがあった。そしてD1では中嶋が指の怪我で棄権をするハプニングがあったが岩場での強さをコンペできらりと光らせ、杉本は昨年優勝した〈ワールドカップ〉での実力を思う存分発揮してくれた。世界レベルのクライミングを目の当たりにし今後Division制がより活性化され、今のD2、D3、WD2、WD3の選手達がD1、WD1で活躍し、そして世界へ羽ばたくための道筋が見えていくよう努力したいと思う。

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そしてもう一つのニュースは、姉妹大会である南米チリで3月に行なわれる〈Master de Bouldering〉に昨年のWD1、D1優勝者である野口、ダニエル・ウッズが向かう。その南米での活躍が本当に楽しみである。

〈Rock Trip 2014〉
(文 平山ユージ)
日本の文化に触れてほしいという想いから始まったRockTrip
〈The North Face Cup〉後、毎年行なわれているRock Tripは海外組や日本のトップクライマーを乗せ愛知県の豊田に向かった。コンペだけではなく日本の岩場や人々、そして文化を少しでも知ってもらいそれぞれの国に帰って日本の印象を伝えてくれたらと言う想いから3年前に始まった。今回は関東近郊ではなく冬でも比較的温暖と聞き、豊田を選ばせて頂いた。

歴史と物語が刻まれていく豊田の岩場
今回の旅の期間は2月10日から13日までの4日間。僕らは名古屋でのトークショーをこなし、翌日まずは大給エリアへ向かった。高台で広々と開けた景色はすばらしく、質の高い花崗岩のクライミングに海外選手も興奮を隠せない様子だった。中でも参加選手全員が取り付いたダイヤモンドスラブでのセッションは男性クライマーが何度も落ち苦労しながら成功したこの課題に、キャロライン・シヴァルディーニやジュディス・シムが高さからの恐怖心に打ち勝ち制してしまった。ジュディス・シムは信じられないかのごとく目を輝かせシンガポールでは体験できない日本のクライミングに心躍らせているようだった。

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そして2日目、僕らは小宮山に向かった。実は僕自身が26年前の話だが1988年、最初に訪れた愛知のエリアが小宮山だった。僕は当時の最難ルートをいくつか登ったわけだが、中でも印象的なルートが“嵐”で今回豊田を訪れて感じたことは僕の記憶に残っていた以上の威圧感を放っていた。そして新しい印象としてはたくさんのボルダーに引かれたたくさんの課題が新しい小宮山のイメージとして目に飛び込んできた。

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そんな小宮山で僕らは楽しくセッションをした。中でも本当に個人的なことかもしれないが26年前、最初に登った“Dance”をハイボールのスタイル(ロープを付けて登る高所へのクライミングスタイル)で登ることができたことが嬉しかった。そのDanceに関してはイギリスのグリッドストーンで磨き上げた冒険的なクライミング能力を存分に発揮しジェームス・ピアソンがいきなりオンサイト(初見のルートで他のクライマーのプレイも見ることなく完登すること)し、僕もこのルートに続いたわけで彼がやらなかったらやっていなかったと思う。こんな個人的な僕自身の岩場との関わりも国内外から訪れる人々がそんな物語に耳を傾けくれる。そんな時の流れをこえて存在する岩場は語らずとも多くのインスピレーションを放っていることも間違いないが彼らが国に帰ってどんな物語を語ってくれるか楽しみだ。

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交流のなかで生まれていく「進化へのアイディア」を生むきっかけに
そんな彼らはRock Tripの後、それぞれの国に帰って行った。そして楽しいセッション、国内外の人々との交流から得たこと、日本の岩場、文化、人々など、いろんな印象を感じてくれたと思う。ジェームス・ピアソンやキャロライン・シヴァルディーニはクライマーのレベルの高さに「何で強いクライマーが多いのか」興味を持ったようだ。シンガポール組も日本に来ることが大きなモチベーションになっていて「来年も〈Boulderactive〉で優勝したい」と語っていた。

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そして参加した日本のトップアスリートにとってもきっと貴重な体験になったと思う。このような交流はこのグローバルな世の中で、それぞれがどう進化して行くかアイデアを生むきっかけになる。今後もシンガポールの〈Boulderactive〉そしてチリの〈Master de Bouldering〉を通してこのような交流を深めて行きたいと思っている。

平山ユージ