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(写真 濱田晋 / 文 倉石稜子 / 写真提供 カナダグース

北極圏の過酷な状況での使用を想定した、タフで機能的なウエアに定評のあるカナダグースは今年、創業60周年を迎える。先ごろ発表された2017AWコレクションは、60年のブランドの歴史にインスピレーションを求め、ヘリテージの数々をコンテンポラリーに再構築し直したものだという。

この度、最新コレクションのお披露目のためにCEOのダニー・リースと、カナダグースのグースパーソン(ブランドアンバサダー)でもあるカナダ人冒険家、ローリー・スクレスレットが来日。カナダグースが求める機能性、ブランドのアイデンティティ、そしてモノづくりのフィロソフィについて語りつくした。

 

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始まりは、トロントにある小さな倉庫
1957年、カナダはトロントにある小さな倉庫でカナダグースは生まれた。当時のカナダグースは、ウールのベストとレインコート、スノーモービル・ウエアを専門とする小さなスポーツウエア・メーカー。まさかそのメーカーが、後にカナダを代表するアパレル・メーカーに成長するとは、創業者のサム・ティックは想像さえしなかっただろう。

誕生から60年、カナダグースは常に機能性と実用的なデザインを最優先するモノづくりを貫いてきた。彼らはそれを“カナディアン・ラグジュアリー”と標榜する。「ラグジュアリーと一口に言っても、いわゆるラグジュアリー・ブランドが提案するそれとは一線を画している」とダニーCEO。
「カナダグースが考えるラグジュアリーとは、パフォーマンス、着心地、使い勝手、それら全てが高いレベルで共存していることを指しているんだ。あらゆるシーン、エリア、局面で、ベストのパフォーマンスをかなえる。それが僕たちなりの“ラグジュアリー”の表現方法なんだよ」

“ラグジュアリー” の根幹をなすクオリティを支えてきたのが、カナダの職人たちだった。カナダグースの製品はすべて、本国・カナダで製造されている。メイド・イン・カナダの矜持と、それを支えるクラフツマンシップ。それこそがカナダグースの“ラグジュアリー”の源流である。
「僕たちのモノづくりには、常に本物を目指すという信念があるんだ。つまり、機能性、素材、仕立てにおいて妥協のないモノづくりを行っているということだ。本物を追求してきたゆえに60年という長きにわたってブランドを続けることができたのだろうし、ニセ物が蔓延する現代において本物だけを追求する姿勢が評価されたのだと思う。現在、多くの企業が第三国の工場で製品を作っている。コストを考えればそうした風潮も理解できるし、それが悪いことだとは思わないけれど、僕たちの方針とは異なるね。なぜなら、僕たちは一つ一つの製品には魂が宿ると考えているからだ。確かに、いまの時代にメイド・イン・カナダにこだわることは難しい。けれどこんな時代だからこそ、どこで誰がどう作ったモノなのか、モノの背景に宿るストーリーを大切にしていきたいんだよ。特に日本やヨーロッパの人々はそうしたバックグラウンドに共感してくれるから」

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地上8,000mの頂きを見据えた機能性
もっとも過酷な環境でカナダグースの“ラグジュアリー”を体験したのが、カナダ人として初めてエベレストに登頂した冒険家、ローリー・スクレスレットである。1982年のヒマラヤ遠征で着用したのが、カールの父で、カナダグースの前身であるメトロ・スポーツウエア社長のデイヴィッド・リースと二人三脚で開発した特別なジャケット。当時、エベレストを目指すプロジェクトには総額で300万ドルという大金が必要だったというが、ウエアやシュラフなど高所で必要なすべてのギアを提供してくれたのがデイヴィッドだった。

「せっかく作ってもらったそのジャケットは、暑すぎて行動中に着用することができなかったんだよ。それから数年後、南米の遠征が決まった時、もう一度デイヴィッドに相談したんだ。前回の反省点を踏まえ、より良いジャケットができるんじゃないかってね」(ローリー)

 

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(Laurie Skreslet)

分厚いダウンジャケットをスリムダウンして機動性を確保するとともに、透湿性と表面の防水性を高めた。どんなに動いてもめくり上がらないデザイン、長い袖は簡単にロールアップすることができる。フードにはアジャスターを備え、ヘルメットの上からでもすっぽり被れる仕様に。ネックを高く設定し、ジッパーを上げれば鼻まで覆われるデザインに改良された。
「ビッグ・マウンテンジャケット」と呼ばれたそれはその後、さらなる改良が施され、2011年に「スクレスレット パーカ」として再リリースされている。ローリーにとっても、自分の名前にちなんだこのジャケットにはひとかたならぬ思い入れがあるようだ。

「2006年、山岳ガイドとしてイギリス陸軍のヒマラヤ遠征に3カ月、帯同した時のことだ。隊はエベレストの北陵ルートをアタックしようとしていて、それに同行するカメラマンを安全に登らせるのが僕の役目だった。現地では隊員が使用するのと同じ装備———イギリス製の高地用の山岳ギアで、もちろん最高峰のもの———が支給されたんだが、実際に使ってみたら重くて暑くて、おまけに動きが妨げられる、およそ快適とは言い難いものだった。この装備ではダメだと判断して、すぐにカナダに連絡して私物のスクレスレット パーカを2着、フェデックスでヒマラヤに送ってもらったんだよ」

レンジローバーでベースキャンプまで運ばれたジャケットは、ホワイトアウトの状態においても視認性が高いよう、鮮やかなピンクをまとっていた。マッチョな軍人たちには「女の子が着るようなジャケットだ」と軽口を叩かれたそうだが、軽量で動きやすく、その上、保温性を兼ね備えたこのジャケットのおかげで、カメラマンを安全に山頂に導くことができたという。
「冒険でのギアに求めるのは、安全性と温かさ。それを“ラグジュアリー”と表現するとは考えたことがなかったけれど、8000mのような高所において、得られる限り最高の快適さをかなえてくれるものは、“ラグジュアリー”と呼ばれるにふさわしいかもしれないね」

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大都会でも体感できる『カナダグース』の本質

冒険家としてローリーが求めた機能性は、高所以外の場所でもいかんなく発揮されている。例えば映画やエンターテインメント業界だ。カナダグースのウエアは極寒地における長時間の撮影で、出演者や撮影クルーの衣装、あるいは防寒具として採用されている。裏方仕事のサポートはもちろん、そのスタイリッシュなデザインからオンスクリーンにも度々登場している。

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(Dani Reiss, C.M.)

「つまるところ、カナダグースが追求するのは“パフォーマンス・ラグジュアリー”なんだ。ローリーのエピソードは8000m峰という、極めて特殊な状況における機能性のたとえ話だが、東京、ニューヨーク、トロントというような大都市に住んでいる人々にも、僕たちが目指す“ラグジュアリー”は十分に体感してもらえると思う。それは軽量で着心地がいいと言った機能性の他にも、仕立てや素材の良さ、本物としての存在感、クラフツマンシップというような形でも現れるからね」(ダニーCEO)

近年はやヴェトモンやマークジェイコブスやオープニングセレモニー、カナダ人ラッパーのドレイクがプロデュスするオクトーバーズ・ベリー・オウンといった気鋭のファッション・ブランドとのコラボレーションも積極的に展開している。ダニーCEOは「自分たちをファッション・ブランドと考えたことはない」というが、こうしたコラボはファッション業界から高い注目を集めている。
「他ブランドとのコラボレーションは、異なるキャラクターを持つ相手と一つのモノを作り上げるプロセスが興味深いね。クリエイティビティという観点からはもちろんのこと、僕たちが普段接触することのないターゲットにアプローチできるという点も非常に魅力的だよね」(ダニーCEO)

「おしゃれと縁遠い世界で生きている自分にとっては、ファッションというのは摩訶不思議なものなんだよ!例えば、古着のジーンズにプレミアがついて何百ドルという高値がついたりする。もともとは労働者のための作業着なのに、だ。同じように、僕にとっては高所でのユニフォームのような存在のカナダグースのジャケットが、『スポーツ・イラストレイテッド』誌のカバーを飾ったりするんだ。実際、それはとてもスタイリッシュに見えてね。機能性がファッションに昇華することもあるんだと、感心した覚えがあるよ」(ローリー)

カナダグースは現在、37か国で展開している。過去20年でアイテム数は200にまで増えた。男性用、女性用、キッズ用を揃えるほか、スクレスレット パーカのような極地用のアイテムからライトウェイトダウン、軽やかなスプリングジャケットまで、様々な国、地域、シーンにマッチするウエアを作り続けている。
「どんなシーンにおいても実用的で、最高のパフォーマンスを発揮するモノづくり。創業以来守貫いてきたこのアイデンティティをこれからも大切に守り続けていきたいね」(ダニーCEO)

Dani Reiss, C.M.
カナダ・グース社プレジデント兼CEO。祖父が1957年に創業したアウターウェア専門の小さなスポーツウエア・メーカーを、高いパフォーマンスを適えるラグジュアリーブランドに成長させるなど、起業家として数多くの成功を収める。メイド・イン・カナダのモノづくりに情熱を持ち、またそのクラフツマンシップを広く世界に知らしめるという強い信念の持ち主。これまでの功績が認められて2016年に叙勲を受けたほか、2013年「今年のマーケッター」、2012年「エリザベス女王2世ダイヤモンド・ジュビリー勲章」など、本国で多くのアワードを受賞している。現在、ポーラーベアーズ・インターナショナル及びマウントシナイ病院財団の取締役も務めている。

Laurie Skreslet
1982年10月、ローリー・スクレスレットは、カナダ人として初めてエベレスト登頂。このマイルストーンを打ち立てたのち、カナディアンロッキー、ネパール、南米、インドを探検する世界有数の調査旅行に30回以上参加。彼の偉業は世界中の冒険家の共感を呼んでおり、登山と日常生活で起こる問題との共通点に関する講演を行う人気講師としても活躍する。

日本初!メンズオンリーストアオープン
オープン日:2017年8月23日(水)
場所:カナダグース 阪急メンズ東京店
住所:東京都千代田区有楽町2-5-1 阪急メンズ東京 4F
TEL:03-6228-5167(※オープン日より開通)

カナダグースに関するお問い合せ
Sazaby League,Ltd.
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TEL 03-6758-1789