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シクロクロスが日本でちょっとした人気を博している。もちろんまだまだ一般には知られていないマイナーな自転車競技だが、スポーツとしてカルチャーとして、日本らしいカタチで根付きはじめている。その火付け役、通称“野辺山シクロクロス”は今年もアマチュア、プロ、観客を問わず意味のある、白熱の2日間となった。写真で振り返る。
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シクロクロスは不思議な競技だ。どんなものなのか言葉で定義しようとしても、その魅力は伝わらない。ただ言えるのは、「苦しい」ということ。それはアマチュアのカテゴリーであっても、プロレーサーであっても。

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家族でシクロクロスを楽しめるように、という主催者の願いから、幼稚園児以下のカテゴリーであるキンダーガーデンが行われるのも野辺山の特徴。シケインと呼ばれる障害物もちゃんとコースに設置される。大人の心配は取り越し苦労、子どもはわけなく乗り越えていく。だいたいのこともそうだよね。

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大人のコースに設置されるシケインの例。女子カテゴリーにも、もちろんある。もはや自転車競技と言えるかわからないが、どう越えるかにテクニックがある。

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フィニッシュにたどり着き、同じレースで競ったライバルと称え合うひととき。この瞬間が数多のアマチュアライダーを魅了する。

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もしあなたが出し切ったのなら、ゴール後はこうなる。

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プロのカテゴリーでなくても、テクニックや華のある走りで会場を魅了することはできる。日本各地のローカルヒーローが一堂に会す日、それが野辺山だ。

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ここからはエリートカテゴリー。野辺山は国際自転車競技連合(UCI)が定める国際基準を満たした数少ない国内レースだ。それが今年はさらに格上げされ、プロ選手にとって重要度の増した2日間となった。獲得できる数多くのUCIポイントは、世界選手権やワールドカップといったレースのスタート位置を決める要素となるため、海外の選手にとっても来日する価値が十分にある。女子エリートレースは、アメリカからやってきたサミー・ルーネルズ(スクイッド・スクワッド)が2日間他を寄せ付けずに連勝した。

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スタート位置。それがシクロクロスでは何より重要だ。ときに「シクロクロスはスタートからスプリントする競技」と言われる。男子エリートのスタートラインには、まるで短距離走の前のような緊張感が漂う。

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スタート直後は100名近い選手が細い道に殺到する。接触、渋滞、落車がやむなく発生する。これを避けるために、スタート位置を前にするUCIポイントがレーサーたちにとって重要となる。

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どんな競技にも、誰からも尊敬されるレジェンドがいる。シクロクロスはこの人、小坂正則(左)をおいて他にいない。このとき齢54。20年を越えるキャリアでの中で全日本選手権では何度も2位になったが、まだ勝てていない。しかし、今もトップカテゴリーで、それも上位を走っている。

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正則の息子、光(右)は父の背中を追いかけ、日本で屈指のシクロクロス選手に成長した。2位が続いた全日本選手権で、昨年悲願の初優勝をここ野辺山で遂げた。彼が着る白地に赤のジャージは、全日本優勝者が1年間着ることのできるナショナルチャンピオンジャージ。父が挑み続けた夢を叶えた息子だが、同時に追われる立場となった。今年の全日本選手権でその真価が問われる。

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トップレベルのシクロクロスレースは、一人では走れない。F1、あるいはウルトラ系のトレイルランニングレースのように、レース中に支えてくれる人がいる。ピットクルーと呼ばれるサポーターが、バイク交換や洗車、トラブル対応を一手に引き受ける。彼らもまた、戦いの最中。

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エリートレースには80%ルールと呼ばれる足切りがある。トップの選手が速ければ速いほど、アマチュア選手はレースを続けられなくなる。赤い旗が見えたらレース終了。落胆のうちにコースを去る彼らとて、下位カテゴリーを勝ち上がってきた選手たちだというのに。

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前週のレース、そして前日の野辺山でも圧倒的な走りで勝ちをさらったアンソニー・クラーク(スクイッド・スクワッド)が連勝すると思われた2日目は、劇的なフィナーレが待っていた。最後まで彼に食らいついた前田公平(弱虫ペダルシクロクロスチーム)が最終周回、最後のストレートでスプリント勝負に持ち込んだ。1時間のレースは、僅かゴール5m手前で決した。前田の勝利に、会場がどよめいた瞬間。

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フィニッシュ直後のクラークと前田。エリート選手も、座り込み倒れこむ。全力の戦いがそこにはあった。

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ゴール後にわかったことだが、前田の後輪はパンクしていた。敗れたクラークがその事実を知り、おどけてみせる。

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もの言わぬ潰れたタイヤが、激戦を雄弁に語ってくれるようでもあった。

シクロクロスの日本一を決める全日本選手権は、2018年12月9日、滋賀県マキノ高原で行われる。