2020年は、世界がより実践的な取り組みを通して、持続可能な社会づくりを目指す節目の年になる。私たちも日々の暮らしの中で耳にする機会も増えてきた「サスティナブル」「持続可能性」という言葉だが、実際にどんなことをすればいいのか、どんなことができるのかわからないのも事実。しかし、意識してか無意識にか、そんな実践を行っている人たちがいる。トレイルランナーだ。
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常に山とともにあるトレイルランナーが、環境問題に敏感であることは、驚くにあたらない。自然が活動の場である彼らのこと、環境保全は走り続けるために喫緊の課題であるし、大げさに言えば死活問題でもある。だが、峻厳な山岳での100マイルレースといった、大自然に人間力を問われた経験をもつトレイルランナーにとっては、目先の利害よりももっと大きな、山への畏敬の念がその原動力となっている。
山梨県の桃・ブドウ農家に出自を持つTHE NORTH FACEアスリートのトレイルランナー、志村裕貴。幼少期から裏山で遊び育ち、常に山が身近なものだった彼は、自らを“マウンテンランナー”と称する。山に対してのリスペクトは大きい。
「山に『遊ばせてもらっている』、という感覚をもっていつも走っています」
山に響く花鈴の音色
だからこそ、ランナーが入ることで山が損壊されてはならないという思いも強い。
「走るときに、登山道を踏み外さないように意識しています。登山道の脇に、絶滅危惧種や美しい花が咲いていることが少なくありませんから。そんな環境に、プラスチックやプルタブのようなゴミが落ちているとすごく異質に感じるんです。ゴミは間違いなく人為的なものですし、他の動植物に悪影響を及ぼすので、見つけたゴミは拾うようにしています」
山に囲まれた日本は、初めは信仰や修験道の実践として登山があった。20世紀の初めにイギリス人ウォルター・ウェストンによってレジャーとしての側面が紹介され、幾度かのブームを経ながら今日に至るまで、登山は老若男女を問わず愛されるアクティビティだ。自然の中で過ごす「山時間」を楽しむ人は多い。
そんな穏やかな環境に、「走る」というアクティブな価値観を持ち込んだトレイルランニング。登山者からすれば怒涛のように走り去っていくランナーたちは、時として脅威に感じられる。新しいスポーツだからこそ、既存のフィールドでどう共存するかのマナー問題が顕在化した。
THE NORTH FACEアスリートのトレイルランナー、宮﨑喜美乃は〈ミウラ・ドルフィンズ〉で低酸素トレーナーとして活動している。日本が誇るプロスキーヤー・冒険家である三浦雄一郎氏が主宰するこのスタジオで、日々登山者たちと触れ合う彼女は、いかにトレイルランナーと登山者が山でお互いに共存できるか意識的だ。
「お子さん連れで山を登っている方は特に、走ってくるトレイルランナーのスピードが何かの動物かのようで怖い、と感じられています。私は、『花鈴』をつけて走るようになりました。熊鈴と違って優しい音色で、鳴らす・鳴らさないのオンオフも簡単なので、ひと気のあるときにはオンにして、さらにすれ違うときには歩くようにしています」
他人事にしておけない
トレイルランニングをしていると身近な山のことだけでなく、地球規模の山が抱える問題にも意識が向く。世界屈指のトレイルランニングレース〈ウルトラ・トレイル・デュ・モンブラン(UTMB)〉は2019年には300人を超える日本人がエントリーするなど、憧れの最高峰レースだ。だからこそ、モンブランの氷河が後退しているというニュースは、遠い国の出来事であっても身近な問題となる。あるいは、北米や豪州での大規模森林火災の頻発について、山が燃えるというショッキングなニュースに胸の痛みも大きい。
氷河を溶かし、地表の干ばつとそれに伴う山火事の原因は地球温暖化と言われる。石炭や化石燃料といった資源エネルギーを燃やすことで発生する温室効果ガス(≒二酸化炭素)が引き起こす温暖化現象は、単に気温の上昇というだけでなく、ハリケーンや豪雨といった気候変動を引き起こす。大気中の二酸化炭素濃度が2019年5月に415ppmを超えたことがニュースになったが、多くの科学者が安全ラインと考える濃度は350ppmだ。そして2017年から2年ですでに5ppm増加しているという事実が、この問題が喫緊のものであることを示している。
こうした現状に際し、21世紀後半に世界全体で温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指す〈パリ協定〉が2015年に合意に至った。世界各国が足並みを揃えて温暖化対策に取り組む枠組みができ、2020年から実際的に運用される。そのキーワードになるのが、サスティナブルだ。だが合意された協定が現実に動き出すのに5年かかることからわかるように、国単位の動きは決して早くない。地方自治体や企業、コミュニティ、そして個人といったより小さな単位からなる、より機敏なサスティナブルの取り組みの重要性は大きい。
生活のちょっとしたところから
サスティナブル、環境保全と聞くと思わず身構えてしまうが、人間生活が生み出した二酸化炭素だからこそ、人間生活のちょっとしたところを見直すだけでも減らすことができる。個々人の意識一つですぐに開始できることは多い。
宮﨑は出場したマラソンレースの給水所で、紙コップが山のように使い捨てにされる光景を目の当たりにして、ショックを受けたという。
「ソフトフラスクやエコカップを持参して給水するトレイルランニングレースになれていたので、改めてロードのマラソンを走ると、大量の紙コップに違和感を覚えてしまって」
そんなこともあって、普段の生活ではマイボトルを持ち歩くようになった。毎朝コーヒーを入れて出勤するのが日課だ。
服飾に関しても、できることは多い。実は日本は、1人あたりの服に関する二酸化炭素排出量がぶっちぎりの世界一という不名誉な立場にいる。つまり、服の生産や運搬を伴う消費に世界のどこよりも二酸化炭素を使っているのである。島国という立地条件もあるだろうが、それにしても考えさせられるデータだ。
THE NORTH FACEというアウトドアウェアを製造するブランドのアスリートである宮﨑は、必然的に多くの服を選ぶ機会がある。だが、「似たような機能や、色の服は極力新しく増やさないようにしているんです。新しいものを欲しくはなりますが、使えなくなるまで着ることの方が大事です」と、そもそもの消費を増やさないよう意識している。
さらには、機能性を失ったウェアでも、その生地を再利用してポーチや小物入れなどを自作するなど、一着の服を着て終わり、にするのではなくとことん使い切る工夫を楽しみながら行っているという。
ダウン産業のリーダーTHE NORTH FACEのサスティナビリティとは
サスティナビリティや環境保全の機運は高まる一方だが、アウトドアブランドはとりわけ企業活動におけるサスティナビリティに心を砕いてきた。THE NORTH FACEは最新の防水素材FUTURELIGHT™の発表に際して、改めて「THE NORTH FACEの哲学と責任は、製品のパフォーマンスを最大限に高めながら、環境への負荷を最小限に抑えることである。この実現においては一切の妥協も許されない。」と表明している。
THE NORTH FACEは2014年にダウンジャケットに用いられる羽毛の出どころを追跡できる基準「レスポンシブル・ダウン・スタンダード(RDS)」を策定した。アパレル産業の持続可能性を追求するNPO団体 〈Textile Exchange〉と農業分野において持続可能な原料の調達を検査・認証する第三者機関〈Control Union Cerifications〉と提携したこの基準は、世界で3000を超える農場で適用され、4億羽を越える鳥がこの認証下で飼育されている。RDS認証を受けたダウンを製品に採用するブランドは50を超え、ダウン産業における存在感を示している。
THE NORTH FACEは日本国内でも直営店で〈GREEN CYCLE〉という着古したリサイクルウェアの回収を行っているが、2015年には他社製のウェアも対象に拡大した。トレイルランニングとの関わりでは、協賛する国内最大のレース〈ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)〉において、過去のイベント参加賞Tシャツのリサイクル回収も行った。THE NORTH FACE製の2019年大会参加Tシャツ自体が、リサイクル素材によるものだ。
電気自動車とトレイルランは、似ている
率先してサスティナビリティに取り組むブランドの哲学は、山育ちの志村が共感するところでもある。この日、朝日を見ようと早朝から山へ向かった志村がハンドルを握るのは、フォルクスワーゲンの〈e-Golf〉。暗闇の中を、音も立てず山へと進んでいく〈e-Golf〉に志村も少なからず驚いたようだ。
「とにかく静かですよね。山の中を走っていて、周りの音がよく聞こえました。なんだか、トレイルの中を自分一人で走っているときと似ているなと思いました。例えばシカの鳴き声が聞こえてくるとか、野犬の声が聞こえてくるとか。そういった体験を、クルマに乗りながらできるというのはすごく魅力的です」
石油を使わず、空気を汚さない電気自動車は山行きにうってつけだ。サスティナビリティを考える上で、電気自動車がもたらす恩恵は決して少なくない。
サスティナビリティ社会では、再生可能エネルギーの利用がカギとなるが、概して安定供給ができない風力やソーラーエネルギーについては蓄電できるバッテリーの重要性が増す。発電よりも蓄電にかかる技術とコストは膨大だが、電気自動車産業の発展は、高効率のバッテリー開発を推進した。結果としてバッテリー容量が増大し、コストは減少の一途を辿る。単に「空気を汚さない」という以上に、電気自動車が果たす役割は大きいのだ。
持続可能に、次の世代まで
トレイルランナーの志村には小学校教員というもうひとつの顔がある。そして、トレイルランナーとして子どもたちに伝えたい思いがある。
「子どもたちと触れ合う中で、彼らがゲームや芸能の話ばかりしているのが気になって。家にいて得られる情報ばかりなんです。一方で山に行ったり、自然の中で過ごすと必ず感動や発見があるじゃないですか。それなくして自然を守りたいとか、自然と共存していきたいという意識にはならないので、子どもたちに自然を体験させてあげるのが自分の役目だと思っています」
私たちが生み出した消費社会のツケを払うのは次の世代だと言われる。化石燃料や石炭といった資源は有限で、いずれは枯渇するからだ。だがトレイルランナーの情熱と想いは、そこに山がある限り尽きることはない。次代が引き続きこの素晴らしいスポーツを楽しむために、この自然とともに生きていけるように。トレイルランナーは意識してか無意識にか、サスティナブルな生き方を選ぶ人たちだ。
プレゼントキャンペーン
防水性と通気性の相反する機能を同時に実現する新素材FUTURELIGHT™ 。3層構造の表側と裏側には100%リサイクル素材を使用し、表側には非フッ素系の撥水材を使用するなど自然環境にも配慮。この新素材を使用したFL L6ダウンビレイパーカーを抽選で男女各2名様に贈るプレゼントキャンペーンを実施中!
※プレゼント賞品はMEN’S(SIZE:S、M)WOMEN’S(SIZE:S、M)となります。
※応募期間:2019年12月9日(月)〜12月26日(木)
志村 裕貴
1986年山梨県生まれ。実家はブドウ農家。地元で開催された〈UTMF〉を目の当たりにしたことで山を走り始める。2018年〈HURT100〉7位、〈UTMF〉29位。2019年〈OURAY100〉4位。普段は小学校の先生として教壇に立つ。
Instagram: @sim46_aozora
宮﨑 喜美乃
1988年山口県出身。トレイルランニングを始め1年目の2015年9月に〈STY〉にて女子優勝を果たす。現在ミウラ・ドルフィンズで健康運動指導士、低酸素シニアトレーナーとして活動中。2018年〈UTMF〉で8位入賞。2019年〈Oman by UTMB〉で3位入賞。
Instagram: @miyazaki_kimino