屋外で料理をし、星空の下で眠りにつく。そんなアウトドアライフに魅せられたキャンパーに勧めたいセカンドステージが、アウトドア・アクティビティだ。フィールドに出かける目的が増えれば、キャンプライフはさらに深化するはずだから。今回はスタイリストの平健一さんが、キャンプ&フィッシングの魅力を紐解く。
山歩き、川遊びが最高の娯楽だった
日本にグランピング・カルチャーを根付かせたといわれるスタイリストの平健一さんは、自身もキャンプ歴35年を誇る熟練キャンパー。撮影、イベント出店、ギアのフィールドテストにプライベートのお楽しみと、年間100日超をキャンプ場で過ごす。そんな平さんがキャンプを始めたのは小学校にあがったころのことだ。
「僕の父は、60リットルのポリタンクを背負って山に入り、タンクいっぱいにヤマメやイワナを捕ってくる仙人みたいな人でした。小学校にあがると、そんな父がキャンプに連れて行ってくれるようになったんです。川べりにテントを張って、渓流で捕った魚を焚き火で焼いて食べて。僕は山形県で生まれ育ったのですが、周囲には山、川、森以外の遊び場がなかったから、それが最高の娯楽でした」
子どものころからキャンプスキルを磨いてきた平さんにとって、キャンプはもはや日常の一部。とはいえ、誰と、いつ、どこへ、何をしに行くかによって過ごし方は全く変わる。その懐の深さこそ、キャンプの醍醐味なのだとか。
「キャンプのいいところは、ルールがないところ。音楽を聞いて過ごす、料理を楽しむ、何もせずのんびりする。どう過ごすかは自分のプランニング次第。楽しみ方の幅が広いですよね。最近はいろいろなブランドからキャンプライフを追求するためのグッズが続々とリリースされていて、これを利用すればさらに多彩な楽しみ方を見つけられそう」
生きる力をキャンプで養う
「ファミリーキャンプは最高の情操教育」というのが平さんの持論だ。キャンプは生きる力を養う。生きる力、つまりいざというときのスキルや経験値は、防災にも大いに役立つ。だから子どものうちから身につけておくに越したことはない。
「ナイフは危ない、火遊びをするな、ではなくて、危なくないナイフの使い方や火との安全な付き合い方をきちんとガイドしてあげればいいんです。それに、自分のスキルやアイデアで工夫を凝らし、無いものを補うという体験は、便利すぎる社会に慣れてしまった大人にも必要だと思いますよ」
自分で釣って、捌いて食べる醍醐味
そんな平さんとワンデイキャンプを楽しむべく、向かったのは栃木県の渓流沿いにあるキャンプ場。ここではキャンプと釣りが楽しめる。というのも、平さんのおすすめがキャンプ&フィッシングという楽しみ方。平さんの長年の趣味である釣りが、キャンプライフの奥行きをぐっと広げてくれるというのだ。
「小学生のころから父に習って渓流釣りをしていました。当時は釣り竿より手で捕る方が多かったけれど、魚を捕れないと食べるものがないわけで、だから一生懸命捕っていましたよ」
自分で釣って、食べる。その行為には人間の根源的な悦びが宿っていると感じる、と平さん。お店に行けば、季節や場所を問わず食べたいものをなんでも食べられる時代だけれど、だからこそ自分の手を使って欲求を満たすことが、達成感や満足感に通じるのではないか。
テントを張って手早く昼食の準備をし、さっそく釣り竿の準備にとりかかる。釣りビギナーも楽しめるよう、このキャンプ場には渓流と釣り堀が備わっている。まずはイワナを釣れる釣り堀へ。釣り堀の水面を一瞥するなり、「すぐに釣れると思いますよ」。その言葉通り、釣り竿を投げるそばからイワナがかかり、まさに入れ食い状態。
「初めて釣りをするという方は、曇りや雨の日、時間帯は朝もしくは夕方がおすすめ。水面に人影が映ると魚が警戒するので注意してください。もし釣れなかったら浮きの深さを変えてみてもいいですね」
釣り堀の次はニジマスの泳ぐ渓流へ。流れのあるところに釣り竿を振ると、こちらも2投目でヒット!あまりにも釣れるので、普段はやらないというルアーにも挑戦する。
「ルアーは自分ですべてをコントロールしている感じがいいですよね。釣れなくてもアタリがあると面白い」
短時間で9尾を釣り上げ、そのままキャンプ場内にある焼き場へ。平さんは自分で捌くが、こちらの施設では釣った魚を捌いて塩焼きにしてくれる。ビギナーには嬉しいサービスだ。
「自分で釣って捌いて食べると、食への感謝の気持ちが自然と生まれますよね。子どもたちにも、自分たちが口にしているものがどこからやってくるのか、ぜひ見せてあげてほしい」
自然は、人間が敵わないものだから
塩焼きを口にしながら、キャンプ&フィッシングを楽しむコツを平さんが語ってくれた。
「今日は釣りもキャンプも楽しかった。それがいちばん大事だと思っています。楽しむこととは無理をしないことだと思っていて、楽しむこととはつまり自然に逆らわないことじゃないかな。
川のそばでキャンプをするなら鉄砲水を警戒するとか、雷が落ちたら釣りはしないとか。特にキャンプビギナーの方で、せっかく休みを取ったから、遠くまで来たのだからと、悪天でも無理をする人もいますが、時には勇気を持って撤退することが自然を敬うことだと理解していてほしいですね」
失敗も大歓迎! キャンプギアはデザイン重視
最後に、アウトドアギアのプロデュースなども行う平さんに、キャンプギアの選び方を聞いてみよう。
「道具の選び方にはいろいろな視点があると思いますが、自分の場合はデザイン先行です。デザイン重視で買ってから、フィールドに出て実際の使い勝手を検証します。もちろん、大失敗することもあるけれど、このギアの何が悪いんだろう、どうすれば良くなるだろうって考えることも面白い。ギアに関してもそうやって試行錯誤することが、キャンプライフを深めてくれるはず」
「使い勝手に正解はない」という平さん。いろいろ試して自分なりのポイントを見極めることで、自分なりのキャンプスタイルが確立されるはずだ。