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(文 倉石綾子 / 写真 平野太呂 / 動画 TOTAL TIME 00:54 記事最下段

先日、初の著書「エグゼクティブ・ボディ・チューニング」を上梓したパーソナルトレーナーの内田あやさん。ジャイロトニックにジャイロキネシス、ヨガなどさまざまなメソッドをベースに行うオリジナルのチューニングが、男女を問わず身体感度の高いクライアントに支持されています。早起きした日のためのストレッチ・プログラムを考案するなど「early bird」生活に思い入れのある内田さんに、とっておきの体験を教えてもらいました。

バリ島・ウブドゥで見つけた、
心を揺らすワンシーン

元々、早起きは苦にならないタイプです。むしろ、かなりの朝型人間。朝は日の出とともに起きだして夜はきちんと寝る、そういう生活サイクルが自分には合っているようで、現在も「early bird」生活を実践中。「日の出とともに」と言っても、我が家にカーテンがないだけなんですが。そもそも私たちの身体にはサーカディアンリズムという体内時計が存在しており、このリズムを規則正しく保っていれば早朝5時くらいから体温が上昇し始めるそう。体温を上げるということはつまり、日中の活動に備えるということ。朝起きて夜眠るというサイクルは、私たちに本来備わっている機能の一つなんですね。

以前、onyourmarkで連載していた「Stay Tuned」というボディ・チューニングのシリーズの一つに「Early Birds」というメニューがあります。これは早起きした朝、気持ちいい一日をスタートするためのストレッチのプログラムで、身体を覚醒させることを念頭において構成しました。

この「early bird」という概念に出合ったのは、3年前にバリ島のウブドゥへ旅したときのこと。滞在中、毎日通っていたヨガスタジオでは早朝6時から始まるクラスを「Early Birds」と名付けていて、欧米人の旅人がたくさん集まっていました。

6時前にスタジオに着くと、ガラス張りのスタジオからはまだ眠りについている、ほの暗いウブドゥの村を一望できます。それが90分のセッションをこなすうちに、辺りがだんだん明るくなってくる。ヤシの木立が茜色に染まるにつれて早起きの鳥がさえずり始め、ライステラスを朝日が照らす頃には虫や動物が大合唱……という、まさに「大地が目覚めていくさま」を体感しました。それはまさしく、レイチェル・カーソンが語った『センス・オブ・ワンダー』の世界。自然が織りなす圧倒的に美しい情景、神秘的な瞬間に立ち会えて以来、朝は私にとってスペシャルな時間になったのです。

日本に帰国して東京ライフに戻っても、疲れた時やくじけそうになった時、私の脳裏に蘇るのはいつも、あの「センス・オブ・ワンダー」の情景でした。あの体験こそがいまの私の心の支えになってくれているといっても過言ではありません。

目覚めのチューニングで
身体の声に耳を傾ける

毎日繰り返される、そんな何気ない、でもとっておきの瞬間をたくさんの人と共有したくて、朝のチューニング・プログラムを考えるようになりました。

睡眠中は同じ姿勢をとり続けているため身体もこわばっています。無理せず穏やかにストレッチを行うことで、身体をほぐし頭を覚醒させることができますから、朝のチューニングは理にかなったことなんですね。

朝起きて自分の身体を目覚めさせる毎朝のストレッチは、「リセット」よりも「リストア=回復」と考えています。この時にいつも感じるのは、生きることへの根源的な喜び。「今日も生きてる、身体が動いている、さあここから今日を始めよう!」というような、ものすごくシンプルなことなんです。細胞レベルで考えてみれば、今日の身体は昨日のそれとはまったく別物。昨日の自分はもう、どこにもいないんです。だから毎朝、新鮮な気持ちで身体の感覚と向き合える。朝は毎日訪れるものですが、それがただのルーティンとなるかどうかは自分次第。新しい自分が、昨日とは違った気持ちで一日をスタートする……そんな風にフレッシュな気持ちで朝のひとときを楽しめたら素敵ですよね。

ボディワークに関していうならば、背骨を1ミリ動かすような小さなことの積み重ねに尽きると思うんです。小さなことに日々、新鮮な喜びを感じられるのも、昨日とは違う自分があるから。そういう感性を大切にしたいから、朝の目覚めのストレッチは「リストア」のための大切なひとときと考えています。

身体には振り幅があっていい日もあれば悪い日もある。昨日できたことが今日できなくなっていても、それはそんなにがっかりすることではないし、そもそも「右肩上がり」は幻想に過ぎません。それを無視して闇雲にルーティンのワークアウトをこなすよりも、五感をフルに働かせ身体の声に耳を傾けることで身体の動きのクオリティをあげるというのが私の信念です。

身体観も人間関係も
その日、その一瞬に感謝して

ボディワークに携わる者として、そうした「一回性」ともいうべき身体感覚を大切にしてきたのですが、人間関係においての考え方も少しずつ変化してきている自分がいます。ウブドゥの「Early Birds」のクラスはオーストラリア人のトレーナーが担当していたのですが、正直言って当時は「彼の生き方って切ないな」って思っていました。クラスに来るのは旅人ばかり。ローカルは一人もいません。二度と会わないかもしれない人に向かってレッスンするってどんな気持ちなんだろう、って。私だったらやっぱり来週も来てほしいし、長く身体を見ていきたいと思ってしまう。

でも今は、彼の生き方も素敵だなって受け入れられるようになった自分がいます。願わくは自分の人生のどこかで私もそんな経験をしてみたい、と思うくらい。「この人とレッスンをするのは人生で一度きりかもしれない」、そう思うからこそ、その一回のレッスンが新鮮だしそこでベストを尽くそうと考えられる。そういうレッスンを毎日、ここ東京で繰り返していきたいと思うようになりました。そう考えると身体の感覚も人間関係も、一期一会に感謝するってことは同じなんですね。

誰かの記憶の中に自分のレッスンが息づいて、その体験が支えになってもらえるってトレーナー冥利に尽きると思うんです。怪我をしてリハビリ中とか今日は疲れたなあという時に、「内田あやというトレーナーとあんな風に身体を動かしたな」と思い出してもらえるようなレッスンができたら、こんなに嬉しいことはありません。それが「センス・オブ・ワンダー」の体験の、私なりのお返しになると思うから。 よく「マジックアワー」って言いますが、私にとっては早朝がマジックアワーなんですね。人生観やトレーナーとしての哲学までも変えてくれるような体験に出合えてしまう、それこそ朝が呼び起こすミラクルだと実感しています。

(TOTAL TIME 00:54 |動画 撮影 松田正臣)

 

内田あや(うちだ・あや)
南青山にあるスタジオ「as・i・am・apartment」を主宰するパーソナルトレーナー。ジャイロトニックR、ジャイロキネシスR認定プリトレーナー、リストラティブヨガ認定トレーナー。「五感」をテーマに掲げ料理研究家とコラボしたワークショップやリストラティブヨガの出張ワークショップなど、パーソナルトレーナーの枠に留まらずパワフルに活躍する。著書に『エグゼクティブ・ボディ・チューニング』(講談社)。
http://www.as-i-am.net/

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