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(写真 八木伸司 / 文 倉石綾子)

現在、「INTO THE MIND TOUR 2014」で全国を巡回中のアシュタンガヨガ正式指導者、更科有哉さん。1台のバンに乗ってヨガのワークショップを行いながら日本各地を巡るヨガトリップも今年で4回め。8月の札幌から始まり12月の長崎までおよそ4カ月間、人々と出会い、各地のランドスケープに癒され、自らとの対話を行う日々で得た、旅の気づきや心象風景を綴る。

一人旅上手のススメ

初回と2回目の「INTO THE MIND TOUR」はクリエイティブパートナー(清水雄太氏)と一緒に旅したんですが、そもそもは彼が「ヨガをからめて日本一周してみたい」と言い出して始まったプロジェクトなんです。当初は竹田城や白川郷など日本の美しい風景を巡っていたんですが、回を重ねるごとに訪ねる先も少しずつ変わってきました。

さすがに4回目ともなると、我ながら旅上手になったなと感じます。移動中の過ごし方しかり、スケジュールの組み方も無駄がなくなりましたし、何よりも本能が「行きたい」と求めている場所にぱっと行きつけるようになったことは、旅が洗練されてきた証しだと思います。

どこか一カ所に留まっているより次の行き先へ移動しているときのほうが、頭が活性化しているように思います。道中はヨガをやっている時間よりも運転している時間のほうが長いわけですが、それは自ずと自分と向き合う時間になる。ちょっとしたアイデアやひらめきは、こんな何気ない時間から生まれることも多くて。そうやって一人静かに対話するひとときの先には、ヨガを通じてさまざまな人と出会う場がある。みんなと一緒にヨガをすることで解放されるというんでしょうか、静と動のエネルギーのコントラストがまた楽しいんです。

アシュタンガヨガを通じて学んできたことを少しずつ伝えていきたいと思って始めたツアーですが、さまざまな場所でいろいろな人と関わりあうなかで、逆に僕の方が影響を受けることが多いんですね。このツアーでは初心者から上級までレベルの異なる6種類のクラスを用意し、各スタジオのオーガナイザーに選んでもらっています。ハーフプライマリーにフルプライマリー、マイソールクラスもあればレッドクラスもあります。つまりレベルもバックグラウンドも目標も全く異なる参加者たちが集まって、それぞれが一生懸命ヨガと向き合っている。そうやって独自の個性、スタイルを持つ人たちに、どういうタイミングでどう教えたら伝わるんだろうか。アシュタンガヨガ指導者としてのデータも日々、更新されているんです。

「Before Activity」としてのヨガ

去年と今年の旅の最も大きな違いは、旅にサーフィンの要素が加わったこと。朝起きてヨガの練習をして、波がよければ海に行って。ヨガはいつでもどこでも、ヨガマットさえ敷けばできるけれど、サーフィンはそうもいかない。まずは海がなくてはいけないし、波がなくてはいけない。ということは、サーフィンができる気候、環境に自分を合わせるということなんですよね。
アシュタンガヨガでは「太陽礼拝」というシークエンスがありますが、これは生命を育む太陽のエネルギーと恩恵に感謝を捧げる動きです。海に行って波と風のタイミングがぴたりと合ったとき、自分たちを取り巻く太陽や自然の大いなる恵みをあらためて感じます。

そもそもヨガとの出合いも、スノーボードがきっかけでした。僕がまだ東京で俳優をやっていたころの話ですが、久々に地元・札幌に帰って仲間と一緒にスノーボードをしようと思ったら、彼らが突然ヨガを始めたんです。それまでサッカー、スキー、スノーボードばかりをやってきた僕には、あのゆったりした動きと呼吸は衝撃的だった。

もともとは自分の身体の「取扱説明書」を作るために始めたヨガですが、最近ではそのなかに「サーフィンを行うため」という要素も加わってきた。だから今では、他のスポーツのために行うヨガの効能を実感することができます。僕はいつもサーフィンをする前は必ずヨガをやって身体を十分にほぐしてから海に入るんです。やっぱりどんなスポーツでもストレッチされた状態で臨んだほうがうまくできると思うし、怪我も少ないはずですから。

そんな考えもあって最近、「Before Activity」をテーマにパタゴニアでヨガのワークショップを行っています。いい状態でスポーツをするために、10分でもいいからヨガをする。それは身体ももちろんですが、メンタルにも関係してきます。ゆったりとした呼吸がもたらす鎮静と冷静さは、あらゆるスポーツのパフォーマンスを向上させるはず。事実、ドイツのサッカー・ナショナルチームでも練習にヨガを取り入れているほどです。

一方で、サーフィンを始めたからこそ見えてきた謙虚な気持ちや、新たに生まれた向上心もある。あの大きな海の中にいると自分の小ささや儚さにどうしても気づかされる。遠く彼方に見える水平線は瞑想状態を誘発させる。そんな中サーフィン2年生のひよっこな僕は悔しい思いばかり味わっていますが、もっともっと練習してうまく乗れるようになりたい。『いつの日にかチューブの中へを』明確な目標に、少しでもたくさん波に乗るべく海に出かける日々です。

ここでの写真は、更科さんのinstagram yuya67におけるハイライト。日々アップデートされる今回の旅の模様がヴィジュアルを通して楽しめますのでぜひご覧ください。

ストイックにならないヨガトリップ

愛車は2002年製のランドローバー ディフェンダー。ローテクなデザインも好みだし、最もアクティブなクルマだと思って選びました。3年前からこの旅を供にする相棒ですが、サーフィンを始めてからは板を積めるようにルーフキャリアを装着しました。車中泊を考えてクッカーなど一通りの道具は揃っていますが、コーヒーを入れるぐらいで料理はあまりしないかな。今回の旅では石川県でクルマが故障してしまったので、石川から長野までは代車の軽自動車で行ったんですが、車中泊に苦労しました(笑)。

「ヨガトリップ」なんていうとストイックな旅を思い浮かべられるかもしれませんが、サーフィンもしながら楽しくやっています。家に帰れないゆえの疲れもありますが、オーガナイザーや参加者とその土地のソウルフードを食べに行ったり、その土地の風習や素敵なお店を紹介してもらったり、想像もできないダイナミックな風景に出逢えたり。こういう体験は旅ならではと感謝しきりの毎日です。

というわけで全国縦断ヨガツアーはまだまだ続きますのでぜひ、遊びにいらしてください!

更科有哉(さらしな・ゆうや)
1977年北海道生まれ。俳優を志し、20歳のときに上京。当初は身体作りのために我流でヨガを学んでいたが、後に最も有名なアシュタンガヨガ指導者の一人、アトモ・クランティ氏に師事。2008年から年に一度、インド・マイソールに渡ってヨガを学ぶように。2010年アシュタンガヨガ正式指導者資格を、翌年には同資格のレベル2を取得。2009年から、ヨガで全国を縦断する「INTO THE MIND TOUR」をスタート。

INTO THE MIND TOUR 2014
11月14日(金)15日(土)16日(日)@大分

11月23日(日)@福岡

11月24日(月祝)@熊本

11月29日(土)& 30日(日) @宮崎

12月6日(土)& 7日(日)@長崎

12月14日(日)@北海道 モエレ沼公園

intothemind.syncl.jp