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(写真 三浦咲恵 / 文 小泉咲子 / 協力 BRIEFING

選手として、そして指導する立場から日本トライアスロンシーンを引っ張る大西勇輝さんと中村美穂さん。スイム、バイク、ランニングの3種目から成るトライアスロンは、過酷というイメージが先行しがちだが、シーンの真ん中にいるふたりにとって、それはどんな魅力をもったスポーツなのだろうか。3種目と生活を上手にマネジメントするふたりのライフスタイルを聞いた。

できることよりも、できないかもしれないことに挑戦することに価値がある

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  • 写真提供:BRIEFING
  • 写真提供:Mr.Kuroda

――スイム、バイク、ラン、それぞれのスポーツ人口は少なくないですが、トライアスロンになった途端、日本では楽しむ人がぐっと減ってしまいます。3種目やるということが、壁になっているように思うのですが。

大西 僕は、3種目あることは壁ではなく、スポーツの引き出しを増やしてくれることだとポジティブに捉えています。それぞれのスポーツを懇々と続けるのも素晴らしいですが、一種目だとたとえばプールに通えないところに引越したり、何かのきっかけでやれなくなってしまう。その点、3種目あれば選択の幅が広がるので、結果的にスポーツを長く続けられます。その日その日で違う種目をやれば、飽きずにできますしね。

中村 確かに。怪我をしてランニングができない時期は、プールで泳ぐこともできますしね。

大西 泳げるのか心配で、踏み出せない方も多いんでしょうね。でも今、まったく泳げなくても、泳げるようになります。

中村 実際に私が指導している方には、元カナヅチからの挑戦という方も少なくないです。4割はそうじゃないかな。指導のアプローチによって、生徒さんの上達が変わるのが、難しくも面白いところ。ある人は「「あと5㎝肘を前に引き抜く」と数字を出すと響き、ある人にとっては、「「トン・トン!ではなく、トーン・トーン!のリズムです」とリズム化する方が伝わりやすい。僧帽筋、上腕三頭筋、ハムストリングス…など、筋肉で説明をするとイメージしやすい方もいます。指導には終わりがないですし、アスリートとしての自分も、まだまだ進化の余地があるなって思うので、まったく飽きません。

――トライアスロンをやる人は、どういったタイプが多いですか?

中村 現状に満足していない人。好奇心旺盛な人が多いです。指導している方の多くは、少年のように目を輝かせ、「どうしたらいい?」と積極的に質問してくれるんです。

大西 人は、簡単にやれてしまうものではそんなに燃えないんじゃないかな。泳いで、自転車を漕いで、最後には走って。できるかどうかわからないところに価値がある。だからこそ、できたときに、とてつもなく大きい感動が待っています。

中村 タイムマネージメント力に優れている方も多いですね。仕事が忙しく、家庭もある状況で、パフォーマンスを上げるトレーニングを積むのが上手いです。

――タイムマネージメントは、スポーツをライフスタイルとして楽しむときに、大切な要素ですが、コツはありますか?

中村 私は、トライアスロンのスイム指導がメインなので、泳ぎに関していうと、速く泳げるようになるには、極論を言えば、「毎日泳ぐ」ことに尽きるんです。でも、それは仕事や家庭など時間や環境要因によって無理……では、どうするか。水泳で使う筋肉に毎日刺激を入れるトレーニングを提案しています。

大西 時間がなくて外を走れない、泳ぎに行けないとなると、やってないことが精神的な負担になるので、ストレッチをするとか筋トレをするとかね。

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スポーツライフのベースになっているのは、朝時間。

――おふたりが、スポーツのある暮らしを送れているのは、まさにタイムマネージメント力に長けているからだと思うのですが、一日のタイムスケジュールはどうですか?

中村 私は、朝4時に起きて、夜は9時には寝ます。成長ホルモンをバンバン出したいので、睡眠のゴールデンタイムはしっかりと。このリズムは普通のことかと思ってたら、みんなには驚かれ自然児扱いされます…。(笑)

大西 僕も、朝は5時台に起きていますね。朝食は、ほぼ毎日、スムージー。果物を剥くのがずいぶん速くなりました(笑)。今、仕事の割合が、教えるのとマネージメントが半々くらいで、デスクワークをするときの朝食は、軽めにした方が調子がいいと感覚的にわかってきたので、抑えています。

中村 私は、朝起きたら、ずらっと小鉢を並べた和定食や、ココナッツミルクから作るタイカレーだったり、化学調味料に頼らないかぼちゃのリゾットだったり、朝食をたくさん作ってモリモリ食べます。

――おふたりとも、完全な朝型なんですね。

大西 朝早く起きることで、その日一日が充実することがわかっているので、できる限り活用していますね。朝は、自分の時間として、泳いだりランニングしたり。コーヒー豆を挽いて丁寧に淹れるのもいい。仕事が溜まっていたらデスクワークもします。頭の中がフレッシュなので効率もいい。家を出る時間は変更がきかないので、限られた時間のなかで集中できますし。そもそも朝は、空気もクリーンで、まだ人も街も眠っていているじゃないですか。その静けさが好きなんです。僕が勉強したところによると、起きる時間を一定にした方がいいそうです。22時に寝ても、24時に寝ても、同じ時間に起きるとリズムが整うのだとか。

中村 アスリートはみな感じていると思うんですが、時間も体力も精神力もリミットがあるんですよね。その中で、いかに仕事やトレーニングのパフォーマンスを上げて、いかに一日を充実させて終われるか考えると、朝が大切だなと。夜のお付き合いなどが少ないからできる生活なのかもしれませんが、夜、起きて何かしたいとは思いません。長さよりも「一日一日の質の高さ」が一番大切ですから。

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――いわゆる趣味は?
大西 読書もしますけど、どうしても自然のあるところに足が向きますね。走ったことのないトレランコースを走ってみるんです。人がいなくて、海が見えて、草が茂っている道を見つけると、今の言葉で表現すると“萌える”んです(笑)。DIYも好きですね。工事現場の廃材をもらってきて、棚を作ったり。

中村 私もDIYします。トライアスロンをしている人は、作るのが好きかも。バイクの調整で六角レンチ使うことが日常的だからですかね。その他には、素材にこだわったパン作り、料理、裁縫、園芸、描画、クリエイトな趣味が多いです。サーフィン、乗馬、水族館動物園巡り…好奇心の塊です(笑)

――ご自身のトレーニング時間は、どうやって作っていますか?

中村 私は、いつどんなトレーニングをするか特に決めず、隙間の時間を使うようにしています。フレキシブルですね。

大西 僕も、30分あったら多摩川沿いを走るとか、隙間時間を使うようにしています。出張に行くときは、2時間くらい前に現地に入るようにして、その土地を走ったり、自転車を車に積んでおいて、時間があったら漕いだり。

タウンでもスポーツシーンでもシームレスに使える「BRIEFING」。

――おふたりは、スポーツが仕事でもあるわけですが、オンとオフをどうやって切り替えていますか?

中村 私は、やりたいことを仕事にできているので、オンとオフがないんですよ。服装もそう。スパッツのまま電車移動もしますしね。

大西 僕の場合は、3つあります。先ほどお話した隙間時間に身体を動かすことが、まずひとつ。そして、マネージメントを手掛けるスポーツ施設のスタッフとたわいもない話をすること。スイッチを切るために意識的にしていますね。最後は、着替えること。デスクワークをするときは、必ずスポーツウェアを脱いで、ジーンズとシャツに着替えてからパソコンに向かいます。

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――そうすると、おのずと荷物も増えますよね。

大西 いつも重いですね。ランニングウェアにシューズといったスポーツシーンと、ノートパソコンとノートのビジネスシーンと、常にバッグにはふたつのシーンを用意しています。

中村 私も、荷物は多い!日記を兼ねたスケジュール帳、テーピング、水着やゴーグル、常備薬、サングラス、帽子…あと、食料(笑)。

――たくさんの荷物を収納するのに、おふたりが愛用しているバックパックが、BRIEFING。

大西 着替えるのがオンとオフの切り替えのひとつと話しましたが、ふだんのカジュアルウェアとスポーツウェア、どっちを着ていてもシームレスに使えるものをずっと探していていたんです。惜しいなって思うものはたくさん他のブランドからあるんですけど、なかなか出合えなくて。BRIEFINGは、どれだけ荷物を入れても大丈夫なタフさがあって、シンプルなのに存在感もある。そして、スポーティなのに高級感もあって、年齢的にいいものを持ちたいという欲求さえも満たされ、一目ぼれしました。

中村 私は、スポーツ用のスパッツに白シャツや革ジャンを合わせることもあるんです。そんな自由なスタイルもまとめてくれるBRIEFING。それにこの高級感がいいですね。もちろん、汗をかいたスポーツウェアにもぴったり。新しいレディス用は、女性の背中にちゃんとフィットしてくれます。全体的に柔らかく、服やシーンをより選ばなくなったと思いますね。

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  •  BRIEFING歴3年半の大西さん。いつでも走れるように、ランニングシューズとウェアは常備。トラブル対応のために、ノートパソコンも必ず持ち歩く。アミノ酸サプリメントは、天然100%。「身体が資本の仕事。毎日元気にお客様の前に立てるように、レッスンや運動後に回復を早めてくれるものを摂っています」。BRIEFINGのポーチは、財布やスマートフォン、名刺入れなどを入れ、バックインバックとして使っている。
  •  中村さんの鞄の中身。『パワートレーニングバイブル』は、バイクトレーニングに活用。サングラスと帽子はいくつか持ち歩き、日光の強さによって使い分ける。今日はオークリー。ニット帽は、アイアンマンレースのグッズ。「このIMマーク入りのウェアで走っている人を見かけるとトライアスロンをしているんだな~ってつい話しかけちゃう(笑)」。トートバックはBRIEFINGのノベルティグッズ。買い物で荷物が増えたら使えるように、ふだんから持ち歩く。

スポーツが人生を豊かにすることを伝えていきたい。

――最後に、今後の夢や目指していることを教えてください。

中村 飾らなくてもナチュラルでかっこいい生き方をしていきたいですね。私がやってることは、カタチのあるものではないし、フリーで活動しているので何の後ろ盾もない。常に身一つで勝負。そのためには、常に勉強や情報収集、時には自身の身体を使って実験もしながら、研究しています。自分自身もスポーツを楽しみ、そして心身ともに豊かで健やかにありたい。。それが真の豊かさを皆に届けられる、プロの指導者だと思うから。

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大西 僕は、スポーツと自然が好きなんですね。そのふたつがライフスタイルの一部になる人をひとりでも多く増やすお手伝いをしたい。レッスンの現場でいっしょに走ることもそうだし、クラブや施設を手掛けることもそう。パソコンやスマートフォンといったデジタルツールが発達し、人工物に囲まれたビルで一日の大半を過ごさざるを得ない今だからこそ、自分の脚で山を歩くであるとか、少しでも緑のある場所で過ごすとか、デジタルの真逆にあるものが必要とされていると思うんです。そうしないと、心身のバランスが崩れてしまう。僕は元体育教員だったんです。教員は、病休率が高い職業なんですが、僕の場合、週末にトレランをしたり、トライアスロンを始めて海沿いを走ったりして、バランスが取れていました。そうした体験も踏まえて、スポーツで身体を動かし、自然に触れる環境作りを引き続きやっていきたいですね。

中村 私も、いろんな人と関わりながら、健やかな身体作りをお手伝いしたいです。それが結果的に、その人の人生そのものを豊かにすると思うので。

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  • 大西 勇輝(おおにし ゆうき)
    順天堂大学スポーツ健康科学部卒業。大学時代は、トライアスロン競技部。特別支援学校で5年間の教員生活を送った後、現在は「自然に触れながらカラダを動かすことを日常に」をテーマに、トライアスロンをはじめ、ランニングやトレイルランなどの指導や、アウトドアフィットネスクラブのマネジメントを行っている。木々や植物に囲まれ、人工物の少ないロケーションで走る時間がたまらなく好きである。
    株式会社BEACHTOWNディレクター。BLUE多摩川アウトドアフィットネスクラブマネージャー。

  • 中村 美穂(なかむら みほ)
    スイムスクールTriming代表。法政大学体育会水泳部出身。大学まで競泳競技を行う。会社員を経て、「スポーツを通じてより豊かな人生を」という情熱を胸に、指導者として指導論・心理学・栄養学・児童心理学・東洋医学等を一から勉強し、現在はトライアスリート・スイムフォームコンサルタントとして活動。ベビースイムからエリートトライアスリートまで幅広く指導にあたる。大人のクセ抜き、省エネスイム、カナヅチ克服を得意とし、「美しくラクに速く」の3点は比例するというコンセプトを掲げ、まずカッコ良く泳ぐためのフォーム創りをしている。
    <経歴>春日部共栄中学高等学校卒業/法政大学体育会水泳部出身/競泳インターハイ、ジュニアオリンピック優勝経験多数他
    <保有資格>赤十字社水上安全救助員Ⅰ/日本ライフセービング協会JLA正会員/東京都水泳連盟基礎水泳指導員/ベビーシッター資格 他