名前:サバイバル! —人はズルなしで生きられるのか
著者:服部文祥
発行:筑摩書房
発売日:2008年11月10日
ページ数:254ページ
価格:760円(税抜)
関連のスポーツ:トレッキング、クライミング
科学と文明を駆使したかつての登山が地球に「人類の限界」を探り、道具を捨てて岩に向き合ったフリークライミングが個人の内面に「登るとはなにか」を求めている。そしてサバイバル登山は生きる糧をできるだけ環境から調達するという方法で「命の輪郭」を求めようとしているのかもしれない(p34)
サバイバル登山家・服部文祥の山岳ノンフィクション。この“サバイバル登山”とは、文明の力に頼らず、食料や装備を極力もたずに行なう登山のこと。時代とともに装備の機能性はあがり、軽量で栄養価の高い行動食も増えてきました。ですが、この本では装備を手放し、できる限り人間そのものの素の状態で山へ入ります。一般的な登山道も避け、沢沿いやけもの道を歩き、岩魚を釣り、山菜を摘み、焚き火で調理をして月の下で眠るというスタイルです。
副題で表記されている「人はズルなしで〜」とは、人は“現代文明の力”なくして生きられるのか、そんな問いかけでもあります。否が応にもさまざまな場面で「○○なしで生きられるのか」を問われた2011年。
筆者がこれまでどのようにして山や自然とズルなしで向き合ってきたのか、本書にはその経過が赤裸裸に綴られています。具体的な登山経験を挙げながら、あえて、危険で難易度の高いルートを選択。そこに身を置いた者にしか分からない感情や感覚とともに、実践されたスキルや知恵を紹介しています。
自分自身の「生きる力」とはなにか? それを引き出した先に何が見えるのか?
山好きの方に限らず、身体を動かすことが大好きな多くの方におすすめしたい一冊です。
(写真 鈴木泰之 / 文 onyourmark編集部)