ARC'TERYX(アークテリクス)から2024年5月に登場した、スピードを重視したマウンテンラン向けフットウェア〈SYLAN(シラン)〉。その実力を試す場としてこの秋、高尾山で開催された試し履き会に参加した。製品の特徴と実際の使用感を詳しくお伝えしよう。
試し履き会は小雨が降る中、高尾山エリアで行われた。参加者はメディアを中心としたトレイルランニング経験者たち。距離約11km、獲得標高600mのコースでARC’TERYX〈SYLAN(シラン)〉を体験した。サポートを務めてくれたのはランニングトレーナーの塙翔太さん(写真左)と西岡賢一さん(写真右)。効率的な走り方やトレイルでのテクニックを共有してくれたことで、参加者にとって学びの多い一日となった。
SYLAN(シラン)の特徴
ARC’TERYX〈SYLAN(シラン)〉は、アークテリクスの新設フットウェアデザインセンターで開発された。特徴は以下の通りだ。
軽量設計:27cmモデルで292gと、長距離ランニングにも適した軽さだ。
グリップ性能:Vibram® Megagrip Lite Baseを採用し、滑りやすいダウンヒルでも安定感を発揮する。
ロッカー構造:6mmのオフセットが、スムーズな足運びと推進力を生み出す。
快適なフィット感:ナイロンコアにポリウレタンコーティングを施したMatrix®素材を使用し、通気性と耐久性を両立している。
さらに、防水仕様のゴアテックスモデルや、特定の地形向けに最適化されたアウトソールラグパターンもラインアップされており、幅広いニーズに応えられるシューズとなっている。
高尾山での試履き体験
スタート地点は京王線高尾山口駅近くの〈Mt.TAKAO BASE〉。そこから南高尾エリアへと進み、まずは草戸山(標高364m)へ向かう。この区間では、ぬかるんだサーフェスや木の根が絡み合うトレイルが続き、シューズのグリップ性能が試された。
ここでは、〈SYLAN(シラン)〉のグリップ性能が際立っていた。湿った土や岩場でも、シューズが地面をしっかり捉え、安心感を与えてくれる。ロッカー構造はトレイルでも有効で、上りではつま先部分が傾斜にフィットし、スムーズな脚運びをサポートしてくれた。ダウンヒルでは、安定感とグリップ力が発揮されていた。あえて滑りやすい箇所を選んで走ってみたが、安定性には一切の妥協がない。
滑りやすいアップダウンの中でも、参加者は〈SYLAN(シラン)〉のトラクション性能を存分に体感した。城山湖では湖畔を一周し、短い休憩を挟んでから再び登り返し、草戸峠を目指す。
最後はロードセクションに移行し、舗装された道を駆け抜けながら、ゴールの〈Mt.TAKAO BASE〉へ。ロードに出ると、ミッドソールのクッション性が際立っていた。足への負担が少なく、長距離にも対応可能な快適さを感じた。トレイル用シューズながら、ロードでも違和感のない走行感を実現している点が魅力的だった。
トレイルとロードが絶妙に組み合わされたこのルートと小雨混じりの天候は、〈SYLAN(シラン)〉の性能を試す理想的な舞台となっていた。
ARC’TERYXフットウェアが目指す未来
ARC’TERYX〈SYLAN(シラン)〉の開発には、スキーノルウェーチャンピオンであり、トレイルランナーとしても活躍するヘンリエッテ・アルボン氏が深く関わっている。彼女は特にダウンヒル時の怪我防止を重要視しており、そのフィードバックがシューズ設計に反映されている。
アークテリクスの「TRAVEL FAST & TRAVEL FAR(より速く、そして遠くへ)」というコンセプトのもと、〈SYLAN(シラン)〉はマウンテンランニングの未来を切り拓く一足だと言える。多様なシチュエーションで試した結果、今後のトレイルランニングシューズ選びで上位候補に入る製品だと感じた。34,100円(税込)という価格も、アークテリクスの品質を考えれば納得できる範囲だ。初心者から上級者まで、幅広いランナーにおすすめできる一足だ。