「逃げる」という言葉。
普段の生活では、あらゆる事象で良くないイメージのほうが多いと思われる「逃げる」言葉ですが。
自転車競技のとくにロードレースで使われる場合はその印象が違ってきます。
ロードレースの勝利は一番最初にゴールすること。
至極単純なルールでありますが。
そのゴールまでに至るまでには複雑な駆け引きが展開されます。
そのなかで「逃げ」は走り方、作戦のひとつ。
高速で進行するロードレースは空気抵抗をいかに抑えて走るのかがポイントになります。
そのために集団はひとかたまりになって、みんなで風を除けるように走るのです。
とはいえ、ずっと集団に居ても勝ち目がない選手もなかには居て、そういう選手は早い段階から逃げを打ち、勝利を掴みに行くのです。
それで、独りかもしくは数名で先行して集団の前を時間差を保って走り続けるわけですが、集団よりも圧倒的に人数が少なくなってしまうことにより空気抵抗が増えてしまいます。
それは集団のなかで走るよりも何倍も骨が折れることなのです。
圧倒的に有利で巨大なチカラを持つ集団から逃げている。
同じように1着でゴールするのが勝ちのスポーツであるマラソンやモータースポーツでもあまり聞く事ではないのは、この少人数と集団のコントラストがロードレースの場合は重要な要素になるからなのでしょう。
ですから、逃げ切りの勝利はサイクリストやファンの尊敬の的になります。
逃げ切り勝利のためには、脚力はもちろんのこと少しの運も必要になりますが。
重要な要素は勇気ではないかとわたしは思います。
勝ちを意地でもつかみ取りに行く度胸と、集団という巨大な難敵に立ち向かう勇気。
そんな難敵を背にして逃げているにもかかわらず、実は必死に闘っている。
逃げているのに。
闘っている。
文章にすると、なんかヘン。
そんなシュールなところがロードレースの魅力なのかもしれません。
この道を行けばどうなるものか
危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし
踏み出せば その一足が道となりその一足が道となる
迷わず行けよ 逃げればわかるさ
リスペクト