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(写真 松本昇大 / 文 久恒杏菜)

一番最初に走る喜びを知った遊び。それは「鬼ごっこ」ではなかったですか? RUNNOVATION(ラン&イノベーション)というキーワードで、走ることの楽しさを新しいかたちで提案しているNew Balanceが主催した『メガ鬼ごっこ』。西武ドーム球場で行われた大規模な遊びへonyourmark編集部も参戦、開催の模様を取材してきました!

シドニーオリンピック男子マラソン銀メダリストのエリック・ワイナイナ選手が総司令官を務める“最強鬼軍団”から見事逃げ切り、参加者2000人のなか優勝に輝いた人物とは? また、鬼ごっこのセンスに通ずる、あるスポーツとの共通点についてもお伝えしたいと思います。

明らかになった“最強鬼軍団”の全貌。スリリングな鬼ごっこに大盛り上がり!
懐かしの鬼ごっことはスケールの違う遊びに期待と緊張が入り交じるなか、会場に到着。西武ドームは、中高生から、大学生や20代〜30代の社会人、40代や50代らしき人々まで幅広い年齢層の人々で賑わっていました。参加者の様子を見てみると、チームで参加し作戦を練ったり、グラウンドで練習の追いかけっこをしたり、結構な気合いの入りよう。それもそのはず、この日の優勝賞品はトヨタのヴィッツ。これは、燃えますよね。

ゲームは1000人ずつ赤チーム・青チームに分かれて、10分間の鬼ごっこを行います。それぞれ1回戦で鬼軍団から逃げ切った強者たちで、決勝戦。そこでもう1度最後まで逃げ切った1名が優勝となります。本番の鬼ごっこの前に、ルール説明を兼ねた「ウォーミングアップ鬼ごっこ」が実施されました。公園や学校のグラウンドでやったあの鬼ごっこでは体験できないなにかが待ち受けているはず。胸が高鳴ります。果たしてどんな人がその栄光を手にするのか、それすら見当もつかないのがまた面白い。

スタートの合図と共に司会者からは「鬼はどこからでてくるか分かりません!」という言葉が発せられ、一気に会場がどよめきました。場内の大群は困惑しながら、まずは鬼を視覚に捉えようと右往左往。そうこうしているうちに、赤いタイツと虎柄のパンツに身を包んだ“小鬼”たちが現れ、ひしめきあう人たちを次々とタッチしていきます。タッチされた人は頭に巻いたハチマキを外し、場外へ。人の波に飲まれていた私は、気づいたときには目の前にいた小鬼に右肩を叩かれていました。

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次いで、投入されたのは“駅伝鬼”。駅伝の現役選手や過去出場選手たちによるチームです。いわずもがな、並外れたスピードと持久力で次々と逃げる人々を軽快に捕えていき、ここで半分以上の人が場外へ追いやられます。ゲームの後半には、総司令官であるワイナイナ選手はじめ“ビースト鬼”のボブ・サップや、お笑い芸人のキンタロー。、安田大サーカスの団長、森脇健児も登場。会場を大いに盛り上げました。

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大人の真剣勝負「本番鬼ごっこ」スタート! 強者約200名が決勝進出。
そして、いよいよ本番。全貌が明らかになったメガ鬼ごっこに対して、思い思いの作戦で挑みますが、鬼軍団たちはやはり強い。また、予想以上に鬼の量が多いのと、鬼の種類によって衣装が違うのも落とし穴だったり、1000人規模ともなると鬼を視界に捉えるのがなかなか難しい…。

皆、必死の形相で逃げるも、ひとりまたひとりと場外へ追いやられていきます。チャンスは一度、待ったなしの勝負。もちろん皆真剣ですが、捕まえた鬼と追われた参加者は握手やハイタッチを笑顔で交わしたりとピースなコミュニケーションも至るところで垣間見え、会場には笑顔と活力が溢れていました。童心にかえり、全力で未体験の遊びを楽しんだ参加者の方々に感想も聞いてみました。

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エンターテイメント系の会社の仲間だという4人でチーム参戦していた、カナさん(左下)ヤスヨさん(右下)ユウキさん(左上)マサアキさん(右上)。「なるべく目立たないようしようと作戦を立てました! ハラハラして楽しかったです。」

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先日行われたThe Color Run™に出場したというユウスケさんは、1回戦の後半まで大健闘。「昔から鬼ごっこが得意で、数年前久しぶりにやった友達との鬼ごっこが楽しかったので、開催を知って即エントリーしました!」

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「ワイナイナ選手に捕まってハイタッチされました!」「え!うらやましい〜!」となんとも微笑ましい会話を聞かせてくれた高校陸上部チーム(写真左から)マユさん、ヒカルさん、アカネさん、シオリさん、ケイナさん、ミキさん。

私はといえば、5分も持たず呆気なく“駅伝鬼”に捕まりました(笑)。そういえば「昔から鬼ごっこそんなに得意じゃなかったな」と自分のポテンシャルの低さを再確認し、腑に落ちる結果でもありました。自分にはなかった鬼ごっこのセンスについて考えながら、逃げ惑う大群を観察していると、明らかにその才能を感じられる人がいるのです。複数の鬼に囲まれても、サイドステップを踏み、鬼にフェイントをかけて、伸びてくる手からすり抜けていたり。ダッシュしてくる鬼をいち早く見つけて瞬発的なスピードで鮮やかに鬼から遠ざかっていたり。また、運良く鬼に遭遇しなかったであろう人など。そういった、なんらかの鬼ごっこセンスを持った総勢約200名が、10分間を逃げ切り最終ゲームに進出。

頂上決戦では、終盤になると最強鬼軍団の全員が投入され、強者たちを追いかけ回していました。会場の声援を浴びながら、華麗に逃げる参加者たち。鬼たちもギリギリのところですり抜けられたり、さまざまな強いフィジカルを持った面々に苦戦しながらも、ついに15分程の激闘を逃げ切った最後の1名が決定! 熱狂の渦のなか、ゲーム終了となりました。

サッカーに通ずる鬼ごっこスキルに迫る!

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2000人の中から、唯一鬼に捕まらなかった人物、その勝因に迫ってみたいと思います。
獲得したヴィッツで日本一周したい、と壇上でコメントしていた優勝者の山本純平さんは、小さい頃からサッカーをしていて、現在でも大学のサッカーサークルで週2回の練習に励んでいるサッカー青年でした。勝因について聞いてみると「視野の確保。サッカーのトレーニングでタオルを尻尾のようにしてそれを奪い合う、鬼ごっこのようなものがありますが、そのトレーニングの成果かもしれません」と話してくれました。

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「New Balanceが好きなので、参加しました」という会社員のトモヤさん。小さい頃から鬼ごっこが好きで、自信もあったという彼は見事4位入賞。普段は週1回、サッカーやランニングをしているそうです。

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大群を追う側として小鬼を務めたお二人にも話を聞きました。「背後に周りやすい団体の人たちは比較的簡単に捕まえられましたね。苦戦したのは、切り返しのターンが上手い人。鬼同士もアイコンタクトをして挟み込んだり連携していました」というチヒロさん(写真左)とケンロウさん(写真右)もまた大学でサッカーをしているという。

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もう、お気づきだと思いますが、この日最後まで逃げ続けた鬼ごっこセンスの持ち主にはサッカー競技者が多く、サッカーで求められるスキルと鬼ごっこのセンスはさまざまな点で共通しているのです。スピーディーな展開が特徴の現代サッカーでは、ボールを持たない状況にこそ、ボールとチームメイト、マーカーを同時に視野にいれながら良い準備をしておくことが求められます。ただまっすぐ走るだけでなく、サイドステップ、バックステップ、強弱のあるダッシュ、これらをかけひきの中で実施し続けることが大事で、これらは鬼ごっこのときにも発揮される能力そのものなのです。

単なるスピード勝負ではなく、複合的なセンスが試される鬼ごっこについて、この日の開催をサポートしていた〈日本鬼ごっこ協会〉の羽崎貴雄さんに聞いてみました。「鬼ごっこで特に重要なのはサイドステップ、横の動きです。逃げる側は鬼の背後に回る、気配を消して静かに走ることを意識して、いかに鬼から遠ざかれるかというのを考えるのが大事。それに対して追う側は、先を読み自分の動きと相手の動きを計算して、将棋のように相手を追い込める人が強いですね。サッカーと鬼ごっこはとても似ていますよ。」そう話す羽崎さんは、高校時代サッカー選手としてプロ契約をしていたほどの実力者。

現在は〈日本鬼ごっこ協会〉で鬼ごっこを研究し普及するという活動している羽崎さんは次のようにも話してくれました。「鬼ごっこは、コミュニーケーション力とチームワークを強化し、また皆が童心にかえってストレスも発散できる素晴らしいツールとして、今では企業の研修などでも多く採用されています」

走る楽しみにだけに留まらず、スポーツやコミュニケーションツールという角度から見てみても興味深い、鬼ごっこの世界。いつしか思い出となっていた遊びが、全力で楽しめるスポーツのひとつとしてアップデートされていることに驚きの一日でした。