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週末行われたUTMB(Ultra Trail du Mont Blanc)。距離にして171km、累積標高は10,000mD+に及ぶこのUTMBは世界中から注目を集めるトレイルランニング大会としてその名を馳せています。

今年はこれまでこのUTMBを3度制覇したキリアン・ジョルネが6年ぶりに戻ってきたこと。そして、過去にはUTMFでも優勝経験のあるフランソワ・デンヌとのトップ争い。さらに、アメリカ勢がどのようにレースを盛り上げてくれるかに注目が集まりました。

結果的には、フランソワ・デンヌが19時間1分54秒で優勝し、キリアン・ジョルネは19時間16分59秒で2位に。3位となったティム・トルフソンをはじめ、アメリカ人ランナーが20位以内に6人入るという強さも象徴的なレースとなりました。

サロモンのインスタグラム投稿より。優勝したフランソワ・デンヌ、本業はワイナリー経営。

UTMBのレースの模様はリアルタイムで公式サイトやFacebook、Twitterを通して、世界中に発信され、ここ日本でも多くのトレイルランナーやファンがその行く末を見守っていたと思います。筆者も例に漏れず、日本時間の金曜深夜に眠い目をこすりながら、スマートフォンを片手にUTMBのスタート時間を待っていました。

ふとFacebookを開けるとスタート地点の映像がライブ配信されていたので、クリックして再生。スタート前の喧騒と緊張感が入り交じる雰囲気が映像からも伝わってきます。

しかし、この映像よくよく見てみると、スタート地点に立っている、ランナーの中から撮られている? そんな疑問が湧き上がり、よくよく配信されているアカウントを確認すると、なんとキリアン・ジョルネ自身のFacebookページからのライブ配信ではないですか。


実際の映像がアーカイブとして残っています。

当初はUTMBの公式アカウントによるものと勘違いしていたのですが、実はキリアン本人が、自身でデバイスを手に持ち、トップ集団の中からライブ配信していたのです。

キリアンはもともと山でのアクティビティを頻繁にライブ配信することがありましたが、まさか世界的なレースの大舞台のスタート地点で、自分自身の手によりライブ配信するとは。王者の余裕なのか、その無邪気さゆえなのか、驚きで思わず笑いすらこみ上げてくるというものです。

しかも単に周辺の様子を映し出すだけでなく、レポーターよろしくランナーに声をかけてインタビュー。女子優勝を飾ったヌリア・ピカスはじめ、そうそうたるランナーのレース前の顔を確認することができます。ナイキのトレイルランニングチームのデイヴィッド・レイニーは座り込んでリラックスしていたりと、ランナーごとに面持ちが違いますが、キリアンにカメラを向けられると一様に笑顔に。

さらに、キリアンのライブ配信は2回目の映像でスタート後、群衆の間を走り、トレイルに入って、関係者に配信デバイスを手渡すまでつづきます。時間にして30分強。シャモニーの盛り上がりや、山々に入っていく様子を観ることができます。


こちらも実際の映像。キリアンへの声援に目頭が熱くなります。しかし、走ると画面が揺れるので見ていて気持ち悪くなりそうに(笑)。

遠く離れたモンブランから、まるで自分自身がそこにいるかのような臨場感をもって画面から伝わってくるのを観るにつけ、通信技術やデバイスの革新的な発展に驚かされるのはもちろんなのですが、筆者がここで特に感じたのは、キリアン自身の”人間力”。

UTMBという大レースにも関わらず、その場を思いっきり楽しもうという彼自身の根幹にあるアティチュードのようなものがにじみ出ているとともに、技術的な革新すら凌駕するかのような、人間自身の行動が呼び起こすきらびやかな真価のようなものを見せつけられました。

それは、ちょうど『BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族”』を読んだ時と同様の「人間すごい!」というピュアな情動にも似たものがあって、トレイルランニングを楽しむという初心に回帰するような思いが湧き上がったのも事実です。

王者としての強さだけでなく、トレイルランニングへ向かう姿勢を見せつけてくれたキリアン。おそらく、筆者同様に彼のUTMBでの快走を観て、トレイルランニングへのモチベーションを高めた方も多いことでしょう。将来UTMBに出場することを硬く胸に志した方も多いと思います。どんな瞬間も、キリアンのように楽しむことを忘れない。そんなことを胸に刻んだ今年のUTMBでした。

UTMB®︎公式サイト→http://utmbmontblanc.com/
キリアン・ジョルネ公式Facebookページ→https://www.facebook.com/kilianjornet/