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今年も数々のドラマが繰り広げられた世界最高峰のトレイルランニングレース、UTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)。モンブランを行く171km、獲得標高10,000mには各人のストーリーがあるが、生後3ヶ月の息子に授乳をしながら完走を果たしたロンドンのランナー、ソフィー・パワーさんが話題になっている。

Sophie Power

(写真/Alexis Berg for Strava コメント提供/Strava)

2018年8月31日にスタートを切ったUTMB。そこには、ある決意を持った女性ランナーがスタートラインについていた。ロンドン在住のウルトラランナー、ソフィー・パワーさんだ。3ヶ月前に次男を出産したばかりだったが、UTMBを走ることに決めた。順位ではなく、ランを楽しむこと、そして母親としてフィットネスを続けることの重要さを身をもって証明するためだった。

生後3ヶ月のコーマック君は定期的な授乳が必要な時期。パワーさんは夫のサポートもあり、授乳しながらのレースを決意した。Stravaに彼女はこう語っている。

「オーマイゴッド……私は辛い思いでいっぱいでした。いつもコーマックに3時間ごとの授乳をしているので、クールマイヨールで最初に彼に会うまでの16時間、私はルート上の大丈夫そうなところで母乳を絞り出していたのです。彼がお腹を空かせていて、ほっとしました! その後は、夫のジョンが立ち入りが許可されているエイドステーションに毎回ポンプを持って私のところへ来てくれて母乳を運んでいってくれました。レースの直後は、コーマックが2時間おきに授乳を求めてきたので、結局3日間不眠のままでした。

これまでしてきたランニングの何よりも、今年のUTMBを楽しんだと言えます。私の体は脂肪を燃やせるようになっておらず、心拍数を必要以上に上げることができなかったのと、骨盤を守るためにダウンヒルを全開で下ることはできなかったので、それはもうゆっくりと走るしかなかったですが。

普段ならエイドステーションは可能な限り長居せず早く出発するけれど、ここではとにかく十分な補給を摂ることに専念し(自分と、コーマックのために!)、そして休憩をとりました。今大会での私のゴールは、素晴らしい眺望や参加者との会話、ここで経験できる全てのことをしっかりと自身に吸収させて、このコースを走ることでした。久しぶりに自分一人のことだけ考えていればいいという時間を持てて、精神的なよい休息になりました」


今回のUTMBを43時間33分で完走したソフィーさんは、トレイルランニングレースの関わり方に変化が出てきたとも語る。

「もっとゆっくり走ることでUTMBのような特別なレースを楽しもうという、新しいレース哲学が自分に生まれてくるのを感じています。山の中を走っていても、景色を見もしないランナーがいますが、ロンドンの中心に住む私としては、できるだけその余裕を持ちたいなと思っています。

妊娠期間中にもらった、どんなアドバイスも、ゆっくりと休んで脂肪を摂りなさい、というようなものでした。その他のことはリスクでしかない、という具合です。でもそれが母親になる準備として最高の方法ではないと思います。フィットネスを続け、健康で強くいることはとても大事で、安全にそうできるには何が必要か、ということがもっとアドバイスされるべきです」


ひとりのトレイルランナーとして、そして母として偉大なUTMBを走り切ったソフィー・パワーさん。ゴールは、コーマック君を腕に抱き、長男のドナチャ君(彼もキッズレースをすでに走ったそう!)と一緒に迎えたのでした。

Sophie Power

ソフィーさんのUTMB行程 ※Stravaより転載

ソフィーさんのUTMBログをStravaで見る
www.strava.com/activities/1824036620/