万有引力の法則の提唱者として知られる物理学者アイザック・ニュートンは「もし私が遠くを見ていたなら、それは巨人の肩の上に立っていたからだ」という言葉を残した。「巨人の肩に立つ」とは人類の英知の積み重ねを踏まえるといった意味だが、学問のみならずスポーツの世界でもそれはあり得る。次世代アスリートのステップとなり、彼らがモチベーションを高めて新たな高みを目指すきっかけとなる5人の偉業を振り返る。
(イラスト 竹田匡志 / 文 井上健二)
100mを10秒切って走る。
その高い壁に人類でいち早く近づいたのは、現在世界の短距離走界を席巻する黒人選手ではなく、西ドイツ(当時)出身のアルミン・ハリーだった。
ハリーは鋭い反射神経を生かしたスタートダッシュで1960年に10秒00をマーク(手動計時)。
9秒台にもっとも近い選手と期待された。
しかし9秒台で最初に走ったのはやはり黒人選手。
’68年メキシコ五輪男子100m決勝でアメリカのジム・ハインズが9秒95を出した(電動計時)。
それからしばらく停滞が続いたが、9年後にキューバのシルビオ・レオナルドが9秒98で10秒を切った2人目の選手となる。
そして3人目が短距離界のスーパースターだったカール・ルイス。
’83年にカリフォルニア州で開かれた競技会で9秒97を叩き出す。
ハインズとレオナルドは空気が薄く有利な高地での記録だが、ルイスは平地で初めて10秒を切ったスプリンターとして歴史にその名を刻んでいる。
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