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万人に向けた物づくりの精神から生まれた
“エナジーセービング”シューズ〈METARIDE〉

「ISSのミッションはスポーツで培った知的技術により、質の高いライフスタイルを創造することにあります。価値ある製品、サービスをすべての人に提供したい。トップアスリートだけではなく、ランニングを始めようとしている人も、子どもたちも、高齢者の方も、ハンディキャップを持たれている方も、すべての人の可能性を最大限に引き出しその生活を豊かにすることが目指すべきところなのです。

〈METARIDE〉に関しては、アシックスがこれまでに培った経験、知見、テクノロジーを通して、より多くのランナーに新しい価値として提供できないか、その考えを元に始まりでした。

アシックスには「Human centric science」という設計指針があり、すべてのシューズのものづくりにおいて“8つの機能”(フィット性、クッション性、グリップ性、耐久性、通気性、屈曲性、軽量性、安定性)を軸として設計を行っています。その考えもまたトップアスリートだけではなく、万人に向けた物づくりの精神から生まれたもの。

その考えからブレずに、ランニングという行為を真剣に考えました。これから作る靴(METARIDE)を履いてランニングという体験を好きになってほしいと思いましたし、ランニングという行為に足を一歩踏み入れた人が、長い時間、楽しく体験を続けてほしいと。幸せな時間を続けてもらうために何かできるか、たどり着いた答えが“エナジーセービング”でした。研究に研究を重ねた結果、余計なエネルギー、無駄なエネルギーロスを省けば長く走れることが見えてきたのです。それは切り口としても面白い答えだなと。

〈METARIDE〉の開発が大詰めになった頃、我々が物づくりを煮詰めていくと、結果、我々のヘリテージにたどり着くことに気づきました。アーカイブには優れた資料が豊富にありますが、これまでに取り組んできたことは間違いではない。「Human centric science」からブレてはいけないと改めて気づいたのです。

それがアシックスらしく、「やっぱりアシックスがいい」と思ってもらえるプロダクトを作れるのだと。〈METARIDE〉を我々の科学技術の結晶と評したのはそういう理由からでした。このシューズにはブランドの熱が込められています」。

制作期間は2年、着想まで遡ると4年、試作は約70足に及んだという。結果、衝撃を緩衝し、足への負担を軽減する、横から見ると厚みがありながら、極端につま先が反り上がった、〈GUIDESOLE〉を開発。着地から足(つま先)が離れるまでの体重移動を効率よく促し、足首の屈曲角度の変化量を減らすことで足関節のエネルギーロスを減らす(最大で約20%削減)という、ブランドのDNAを色濃く反映しながら、まったく新しい作品を生んだ。

原野さんは「エナジーセービングのシューズの研究にものすごく我々のエネルギーをつぎ込んだわけです」と長かった〈METARIDE〉製作期間を笑い話にする。

〈METARIDE〉は、2018年の東京マラソンに合わせて販売する狙いもあたり、瞬く間に完売。昨年の〈GLIDERIDE〉のローンチに合わせてカラー違いのものが販売されるまで、購入が叶わなかった。東京マラソンで実際に履いて走ったランナーも多く、そのインプレッションは軒並み好評。原野さんはそのフィードバックを受け“エナジーセービングファミリー”の方向性を固める。

すでにシリーズ化する話は上がってはいたんですけれども、東京マラソンの反応を見て、確信を持ちました。エナジーセービングのテクノロジーを、ファンランナーに限らず、スピードを求める人、トレーニングに使う人、楽に走りたい人、より多くの人へ感じてもらいたいと強く思ったのです」。

アシックスの執行役員でありISSの所長を務める原野健一さん。「ランニングを生涯のスポーツとしてもらえるように」との思いから“RIDE”シリーズの開発を推し進めた。

次のページ 1枚のデザイン画と“コロンコロン”
デザインチーム、開発チームの“エナジーセービングファミリー”