気候変動への早急な対策が叫ばれる中であらゆる活動に解決への糸口が求められる昨今。スポーツブランドも例に漏れず、新たなギアだけでなく、アスリートや地球に対してより良いソリューションを生み出すことが要求されています。
そんな中でビル・バウワーマン氏(NIKE共同設立者)が「身体さえあれば誰もがアスリートである」と語ったように、オリンピアンやプロの選手だけでなく、我々のように日頃からスポーツを楽しんでいるすべての人に対し、サステナビリティへの取り組みをより強く、明確にしていく姿勢がNIKEから垣間見ることができます。
常にイノベーションを追い求めるNIKEが実際にどのようなことをやっているのか? その内容を数字に注目しながら紐解いていきたいと思います。
Index
NIKEが排出する二酸化炭素量はアムステルダムに匹敵?
NIKEはまずその事業規模の実態を明らかにしています。2020年度における総従業員数は75,400人、それに加え自社およびサプライヤーの工場には100万人を超える従業員を抱え、1500以上の拠点を有し、11,706,664トンの二酸化炭素を排出しました。ちなみにこれを都市と比較すると、その人口と二酸化炭素排出量はオランダのアムステルダムに匹敵するということです。
低炭素素材の使用率を50%に引き上げる
NIKE,Inc.の中にはNIKE、ジョーダン、コンバースの各ブランドが含まれますが、それら全製品の78%が何らかのリサイクル素材を使用しています。カーボンフットプリント全体の約70%を占める素材を調整することは、環境への影響を軽減する最大の機会の一つであるため、この数字を増やすよう努めているのが実情です。
具体的には製品の素材にスタイルや性能を損なうことなく、低炭素の代替素材を使用する方法を検討。例えば、主要素材(ポリエステル、コットン、レザー、ゴム)のうち、低炭素素材の使用率を50%に引き上げることで、2025年までに50万トンのGHG(温室効果ガス)排出量削減を目指しています。
リサイクルポリエステルを使用することで10億本のペットボトルが…!
NIKEの製品に使用されているリサイクルポリエステルは再生ペットボトルからできています。リサイクルポリエステルはバージンポリエステルと比較して、二酸化炭素の排出量を最大30%削減するもので、NIKEがそれを使用することで、毎年10億本ものペットボトルが埋め立てごみ処理地や水がある場所へ流れつくことを回避していることは意外に知られていません。


85~90%のリサイクル素材によるフライニットの糸を採用したシューズ
ペットボトル、Tシャツ、工場から出るスクラップなど、85~90%のリサイクル素材を使用したフライニットの糸を採用したフットウェア コレクションであるスペース ヒッピーは昨今のNIKEのサステナビリティの取り組みの中でもアイコニックな存在と言えます。
標準的なフォームに本来ならば廃棄物となるはずの素材を集めてできた約10%のナイキ グラインド ラバーをブレンドすることで、より低炭素なフォームを実現しているのが特徴です。パフォーマンス製品であるコズミック ユニティや新たに発売されるライフスタイルモデルのナイキ クレーター インパクトでも革新的な素材が採用されています。


クラシックモデルも積極的に再検討するその気概
NIKEと言えばナイキ エア フォース 1をはじめとするクラシックモデルが多数存在しますが、そんな定番のアイコンにもフライニット アッパーやクレーター フォーム ミッドソールを採用する勇気には眼を見張るものがあります。


ナイキ エアの製造過程で出る廃棄物の90%以上を再利用する
NIKEの大きなイノベーションのひとつであるナイキ エア。NIKEのフットウェアの50%に採用されているこのマテリアルは製造過程で出る廃棄物の90%以上を再利用することができ、多くの場合、それを新しいエア バッグに変えているということです。
これによりナイキ エアのソールはすべて、少なくとも50%のリサイクル素材を使用することになり、エア マックス ゲノムのような革新的で環境負荷の少ないフットウェアや、ナイキ ネクスト ネイチャー フットボールのようにエア バッグのスクラップを再利用する新しい方法を生み出しています。


一桁台そしてセンチメートル単位の調整で3,500トン以上の廃棄物削減を達成
他にも、フットウェアを輸送する際の梱包材(巨大なダンボール箱)を再利用可能なカートンに変更したり、衣類やフットウェアのピースの隙間を狭くし、ピース間の無駄な素材を少なくする最新式の裁断機を数百台導入する作業を数年かけて継続するなどにより、2020年度単年では3,500トン以上の廃棄物削減を達成したとのこと。
製品の開発だけでなく、物流や梱包においても創意工夫を施すことで、サステナビリティへの取り組みを推進しているNIKE。その姿勢は今後もスポーツシーンに留まらず注目されるべきだと言えるでしょう。