チームを強くするのは“ストーリー” 東洋大学陸上競技部（長距離部門）

9月半ばの福島県猪苗代はまるで夏の盛りのような暑さを残していた。それでも見渡す限りに広がる水田には黄金に色づいた稲が穂を垂れ始めている。10月14日に開催される出雲駅伝まで１ヶ月余り、駅伝シーズンのスタートに向けて東洋大学は十数名のトップ選手を集めた合宿をこの地で行っていた。

昨年度の東洋大学は、出雲駅伝で7位、全日本大学駅伝では14位となりシード権を落としている。しかし、箱根駅伝では９区の吉田周選手（当時3年生）が区間2位、10区の岸本遼太郎選手（当時2年生）が区間1位と追い上げを見せて、4位という結果を残すことができた。苦しいシーズンをなんとかまとめたかたちではあったが、今年度に入ってからはトラックシーズンで結果を残す選手も多く、今年のキャッチフレーズ通り、鉄紺の“覚醒”を期待させるシーズンインとなっている。

酒井俊幸監督は「1 年⽣の突き上げはトラックシーズンからありますし、選⼿たちも引き続き良い練習ができています。2年⽣、3年⽣が1年⽣の突き上げと4年⽣の頑張りに刺激を受けて、昨年出てこられなかった選⼿が今⾛れていると思います」とチーム全体が良い刺激を与え合いながら一体感を持つ手応えを感じているようだ。

また、4年生の小林亮太選手も「チームとしては後輩が⼒をつけてきたと感じます。練習にしっかりついてきて、上級⽣をひっぱる選手も増えてきたので、全学年がいい調子で練習ができている。特に1年⽣の宮崎（優）選手がすごく⼒をつけたと思います。淡々とAチームで練習をこなすところもすごく頼もしい。後輩からの突き上げもあるので、⾃分達としても危機感につながりますし、刺激を与えてくれる選⼿が後輩にもいるのはありがたいですね」と、１年生の積極性が全学年の頑張りに自然と繋がっているチームの雰囲気を語ってくれた。

選手とチームを強くするのは“ストーリー”

トラックシーズンを振り返ると、例えば３年生の網本佳悟選手は関東私学七大学対校の1500mで自己ベストを更新。さらに5000m、10000mでも自己ベストを更新し、全⽇本予選でも組をトップで⾛るなど、ぐっと力を伸ばしている。このように選手が成長する時には、何かきっかけのようなものがあるのだろうか。

「きっかけは、もちろん練習や試合での成功体験ですが、その前には思い通りにならなかったことや、選手それぞれのストーリーがあります」と酒井監督は話し始めた。

「網本佳悟は、昨年捻挫をしてメンバーに⼊れなかったのですが、逆に自分の⾛り⽅やフィジカルをもう１回やり直す契機と捉えて、今年スピード練習を始めました。⽯⽥洸介も同じで、悶々としたり、⾛りたくても⾛れなかったり、体調不良や長期故障があったりしても、そこから抜け出してぐんと伸びた。

そして、チームのストーリーを構成しているのも、やはり選手一人ひとりです。もちろん監督やコーチのストーリーもありますが、選⼿のストーリーが織り交ざりながらのチームだと思います。最近、選⼿たちにも“チームは⽣き物”という表現を使って、“その体の⼀部があなたたち一人ひとりなのだから、それぞれがどう動くのか、どう考えるかによってチームは変わっていくんだ”と伝えています」

“生き物としてのチーム”のストーリーを織りなすために監督は、その構成員である選手のストーリーを細やかに感じ取らなくてはならない。１年生の内堀勇選手が「監督は選⼿一人ひとりをしっかりと⾒てくれている。誰かと話している途中だったとしても、選⼿が⾛っていたら必ずその選⼿の⾛りを⽬で追いかけてくれていますし、すごく細かく選⼿達を⾒てくださっています」と話していたように、多くの選手が監督の視線を常に感じながら、自身のストーリーを作り上げている。その集大成が駅伝というチームプレーの中に結実する。

最終学年の物語

大学駅伝のチームを語ろうとする時に、最終学年である４年生の存在は欠かすことができない。今年の東洋大学の４年生の中にも物語がある。

「梅崎がキャプテンになったことは彼にとって⼤きなストーリーですし、周りの選⼿たちもそれを助けようとしています。こういったことがチームのストーリーにも影響してくるのだと思います」と酒井監督が語るように、梅崎蓮選手がキャプテンになった経緯にも物語がある。

競技力が高く、身体的にも安定している梅崎選手は、継続的に計測する血液や体組成にも大きな変化がないという。ただ、同時に感情的にも大きな変化が起きないところは良い部分もある反面、課題ともなっていたそうだ。

「彼はマラソンに対する強い思いがあり、レース経験も2 回あります。マラソンはひとりの⼒ではなかなかできません。多くの⼈の協⼒があってこそ⽬標を達成できるんです。彼には人からの協⼒を受けるような⼈格をあわせ持ってほしいと思っています。ですから、キャプテンにすることで彼の成長を促したいと思いました」

同じく最終学年の⽯⽥洸介選手もこの4年間で、光と影の強いコントラストを味わってきた。ルーキーイヤーは出雲駅伝、全日本大学駅伝で区間賞を獲得するも、箱根駅伝とは相性が悪かった。２年時に走った箱根の２区で区間19位と苦戦してからは、本来の力を出せなくなっていた。昨年は一時期陸上から離れた時期もあった。だが今年5月の関東インカレ10000mでは、28分8秒29の自己ベストで6位入賞を果たした。

「⼤学 4 年間の中で初めてトラックシーズンをしっかりと活動することができました。その中でも、⼀番⼤きな⽬標としていた関東インカレで⼊賞できたこと、加えて⾃⼰ベストを出せたことがすごく良かったですし、⼤きな怪我なく順調に⾛れたことはトラックシーズンの収穫だったと思います」と石田選手本人も手応えを感じている。酒井監督も「⽯⽥は自分自身を超え、新しい自分になれたと思います」と太鼓判を押す。

直前に迫った出雲駅伝に関しては「この夏に頭⾓を表してきた選⼿を起用したいと考えています。他の選手たちの成⻑ストーリーを考えると、学⽣駅伝ではきっかけが⾮常に⼤切です。出雲駅伝はその経験を積む場として考えています。選⼿たちに経験を積ませることを優先しようと思っています。失敗しても後から良い経験になってくれれば良いと思っています」と語る酒井監督。 チームの層を厚くして、目標とする箱根駅伝優勝への軌跡は描けている。

駅伝選手たちを支える〈ナイキ ペガサス プラス〉

今回の合宿では〈ナイキ ペガサス プラス〉を履く選手の姿が目立った。実際に自身も足入れしたという酒井監督は、このシューズの特徴についてこう語っている。

「過去に出ていた〈ナイキ ペガサス ターボ〉は、距離⾛に適しているという声が多くありました。新しいモデルではありますが、〈ナイキ ペガサス プラス〉も距離⾛やペース⾛に⾮常に良いと感じています。

ヴェイパーフライやアルファフライに慣れることも⼤事ですが、その前段階で効率の良い⾜さばきをすることも重要です。シューズ選びは強度に応じて変えるべきで、〈ナイキ ペガサス プラス〉はその段階に適したシューズだと思います」

１年生の松井海斗選手は「想像より柔らかく、クッショニングなどとても好みの履き⼼地です。自分には〈ナイキ ペガサス プラス〉がすごく合っていると思います。フライニットのアッパーのフィット感も気に⼊っていて、 引き続き履いていこうと思います」とクッショニングとフィット感が気に入っているようだ。

「クッション性が⾼いので脚への負担が少なく、スピードも出しやすいです。コンディションやメニューによってシューズ は履き分ますが、ペースの速いジョグなどで着⽤しています」と話す３年生の網本佳悟選手は脚への負担の少なさを感じている。

「⾼校時代によく履いていたペガサス ターボに近いシューズで、懐かしいという気持ちになりました」と話してくれたのは⽯⽥洸介選手。「軽くて反発性も⾼いので、ペースの速いジョグや距離⾛で着⽤しています。フライニットのアッパーがしっかり⾜に馴染みますし、アッパーがブレないので⾛りやすいです。より練習の幅が広がる素晴らしいシューズだと思います」

〈ナイキ ペガサス プラス〉という新しいカテゴリーのシューズが、選手たちのトレーニングの幅を広げ、勝利への大きな助けとなっている。