名前:ぼくはお金を使わずに生きることにした
著者:マーク・ボイル
訳者:吉田奈緒子
発行:紀伊国屋書店
発売日:2011年11月26日
ページ数:286ページ
価格:1,700円(税抜)
関連のスポーツ:自転車
2008年、イギリスで一年間お金と無縁の生活をした人物がいます。彼の名前はマーク・ボイル。まるでナチュラリストのバイブル、ヘンリー・D・ソローの『森の生活』を現代に置き換えたような話ですが、彼の目的は単なる自然回帰ではなかったようです。
「食」と「エネルギー」を自給して生きる。著者は、不用品交換で入手したトレーラーハウスに太陽光発電パネルをとりつけて暮らし、半自給自足の生活を営む。手作りのロケットストーブで調理し、石鹸や歯磨き粉などの生活用品は、植物、廃材などから手作りしている。衣類はリサイクルを活用し、移動手段は自転車。彼の主宰するフリーエコノミー・コミュニティのウェブサイトには、160カ国34,834人が参加し、461,766種類のスキル、95,088個の道具、554か所の空間を分かち合っているー帯より
”お金というツール”が生まれたことで、価値の交換に複雑な要素が含まれ、物事の本質が見えなくなっているのではないかというのが、彼の主張。ですから、採用したのは完全な自給自足ではなく、物々交換(労働力も含む)を基にした、どちらかといえばシェア経済の発想。WEBサイトを立ち上げ、インターネットを駆使して人々とコミュニケーションしながら”金なし生活”を送る彼の姿には、オープンな清々しさがあります。
軽妙な語り口の彼の主張は一見極端に見えます。しかし、じっくりと耳を傾けてみると、いかに現実的に今の社会と折り合いを付けながら、次の経済を見据えて行くかという、わくわくするような可能性を感じることができるはずです。
(写真 鈴木泰之 / 文 mark編集部)