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小腸の細胞は消化吸収を行うだけではなく、消化物の量や中身に応じて食欲や内臓全体の機能を調節する働きを担う。

たとえば、小腸内でセロトニンを分泌するEC細胞は、消化物に含まれるO157(腸管出血性大腸菌)のような病原体に反応する性質がある。この場合、セロトニンは周囲の細胞から水分を引き出し、下痢を起こして病原体を体外に押し流そうとする。

ホルモンを出す細胞も多い。その代表格がL細胞とI細胞。L細胞は消化物に含まれる糖質に反応すると、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)というホルモンを出す。糖質を大量に摂って食後に血糖値が上がると血管のダメージになるが、GLP-1は血糖値を下げるインスリンの分泌を刺激して食後高血糖を抑える。

I細胞が分泌するのはコレシストキニン(CCK)というホルモン。CCKは膵臓に働きかけて消化液の分泌を促すと同時に、胃からの消化物の移動にブレーキをかけて満腹感を演出。胃から分泌される食欲抑制ホルモン、レプチンの分泌を促して内臓の負担となる食べすぎを抑える。

脳よりずっと先に進化した小腸は、リンパ球や神経細胞やホルモンを駆使して生体の健康を守る寡黙な守り神なのだ。

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