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1940年にサンフランシスコのミッション地区にオープンしたBi-Rite Market(バイライト・マーケット)。1964年からネッドとジャックのモガナム兄弟がオーナーとなり、主婦たちが集まる地元に欠かせない食料品店となった。そこで6歳の頃から高校を卒業するまで、放課後や週末に働いていたのが、ネッドの息子であるサム。現在のオーナーだ。

「高校を卒業して、オヤジにマーケットを継ぐように言われたが、断って学校に進んだ。もっと広い世界を見てみたかったんだ。料理人としてスイスに1年間住み、こっちに戻ってきてからもレストランで働いた。契約が最終年だった1997年、またオヤジに声をかけられた。『マーケットを継いでくれないか?』って。ミッション地区に人気が出始めた頃だったから、ここで自分のレストランを始められたらいいなって考えたんだ」

1989年、サンフランシスコを巨大な地震が襲うと、父のネッドは一度マーケットの権利を他者に譲り、ビルのオーナーとして経営を見つめていた。しかし97年、経営陣がマーケットの閉店を決めたため、再び声をかけたのが息子のサムだった。
「オヤジにレストランのプランを話したら拒否されたよ。『朝7時から夜中まで働き、家に帰って酒を飲んでまた早朝から仕事に行くような生活は認めない』って。だけど私は料理をしたいという思いが強かった。だから食料品店のり方を見直そうと考え方を変えたんだ。キッチンを設けて、客から見える場所で料理をしてみんなに味見してもらう。そんな食料品店ができれば、レストラン時代に持ち続けた安全で高品質な食材へのこだわりを表現し続けられるからね」
レストランの厨房で働いている頃からファーマーズマーケットに通い、生産者の話を聞きながらオーガニックな食材を常に選んでいた。安全で高品質な食材を丁寧に調理すれば、食卓は豊かになる。その考え方をそのままマーケットの経営に持ち込むことはできないか。従来の食料品店から、地産地消とオーガニックにこだわるコンセプトの店としてBi-Riteが再オープンしたのが1998年の6月のこと。子どもの頃から一緒にマーケットを手伝っていた弟のラフがバイイング・ディレクターとなり、レストランで一緒に働いていた6人の調理師を引き抜いて8人でスタートした。

料理人のバックグラウンドが 生産者の信頼に結びつく

ファーマーズマーケットに通い、いい生産者を見つけると声をかけ、生産規模や土の特性、こだわりなどのヒアリングを続けた。そして自分は食料品店の経営者であることを話し、店に卸してほしいと伝えてもすぐに首を 縦には振ってもらえない。なぜなら有機農法は手間がかかる。生産量が限定されるため、ファーマーズマーケットに出店するか、レストランに直接卸すかの2つの方法でしか販売を行なっていなかったからだ。
「Bi-Riteには料理人がいて、キッチンもあり、食材を丁寧に扱うことを伝えて説得したんだ。最初は私と弟がトラックで買い付けてくるこ とがほとんどだったが、徐々に理解してもらえて、また、Bi-Riteに来るお客さんもうちで扱う食材の質を信頼してくれるようになった。いい生産者と関係を築き、適正な価格で通常のレストランよりも多くの量を仕入れることで、ビジネスとして成立するようになる。その関係を継続することが何より重要だ」
オープン当初、野菜や肉、乳製品も含め、直接取引をしていた生産者の数は10〜15ほど。現在、その数は100を超える。
「生産者とのコミュニケーションを通して私たちが学び、それを来店客と共有すると、今度は彼らからフィードバックを得られる。もしかしたらそれは、カリフォルニア文化の特性の一つなのかもしれない。知識を独占しないで誰かと共有して、互いに教育し合うことでコミュニティとして進歩していこうとする。今だってBi-Riteは前進を続けているし、常にライブで立ち止まることはない」

北カリフォルニアは海側と内陸部というだけに留まらず気候が細分化されており、多様な植生によって豊富な食材が年間を通して生み出されている。

右上・ローカルな食材で 調理された惣菜が並ぶデリカテッセンは、料理人の視点を食料品店に持ち込むと いうコンセプトの核となった。左下・写真の中央がオーナーのサム・モガナム。「ほら食べてごらん」と味見させてくれた桃は、程よい甘さと酸味がバランスよく、香りが濃厚な山の果物といった風情。

食育のプラットフォームとしてBi-Riteが果たす役割

現在、Bi-Riteは〈18 Reasons〉と題する教育プログラムを展開している。生産者を講師に迎えて生産プロセスや土壌などの話を聞き、ともに料理し、最後に一緒に食事をするような授業であったり、子どもたちと都市菜園で栽培や収穫を行う野外活動であったり、食を通して様々な企画を実施。年間の受講者数は5,000人を超えるという。
「今世界中でコミュニティの結束力や人間関係が希薄化しているのは、みんなが誰かと時間をかけて一緒に食事をする時間が十分に取れていないからじゃないか……私たちのミッションは、食を通じてコミュニティを作ること。食事は生活の中心と言えるほど重要なのに、そのことを多くの人が忘れている。誰かと一緒に食事をする時間の大切さに気づきさえすれば、世界の見え方は変わる。教育という側面から食と関わるこのプログラムはこれからもずっと続けていきたいし、世界に広めていきたいね」

Bi-Rite Market (18th street店 )
3639 18th Street, San Francisco
TEL +1 415- 241-9760(Divisadero店)550 Divisadero Street, San Francisco
TEL +1 415-551-7900
営業時間:8:00~21:00
定休日:感謝祭(10月 第4木曜日)、12月25日
biritemarket.com

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