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アメリカに始まり、今や世界的なライドトレンドとなっている「グラベル」。2019年は日本にグラベルの波が一気に押し寄せた年となった。その象徴的なイベントが、〈野辺山グラベルチャレンジ〉だ。実走すると、新しいサイクリングの楽しみ方が見えてきた。

2019年は、日本におけるグラベル元年になる。白州バイクロア、グラインデューロに続き、「野辺山」がグラベルイベントの開催を発表した際にそう直感した。そして、〈野辺山グラベルチャレンジ〉を終えた今、その直感は確信に変わった。

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2010年に初開催された〈野辺山シクロクロス〉(現Raphaスーパークロス野辺山)は、それまでコアな自転車ファンに支持されていたシクロクロスという競技を、より広いサイクリスト層に認知させ、シクロクロスブームの潮流を生み出した立役者。翌年に〈バイクロア秋ヶ瀬〉、2012年に〈シクロクロス東京〉というイベントが続いたことで、その流れは加速した。

シクロクロスと同会場からスタートする〈野辺山グラベルチャレンジ〉

〈野辺山シクロクロス〉は、2012年より国際自転車競技連合UCI指定レース化、2013年から土日で2レース連戦という形式に移行し競技志向を強めてきた。“シクロクロスで世界と戦える日本人選手を輩出する”という使命を果たしつつ、“一般ライダーも楽しめるレース”も担保するバランスを保ってきた。

その〈野辺山〉が10周年を迎える節目のタイミングでアナウンスされた〈野辺山グラベルチャレンジ〉。近年は土日の2日間ともシクロクロスレースだった〈野辺山〉に、土曜日はレース、日曜日はグラベルイベントという切り分けがなされた。

〈ラファ〉の矢野大介代表。野辺山にシクロクロスを作り上げた立役者はグラベルイベントも立ち上げた

野辺山なのに緊張しないレース

〈野辺山グラベルチャレンジ〉は、レース、ロングツーリング、ショートツーリングの3カテゴリーからなる。レースは、1周約27kmのStage1と約24kmのStage2にそれぞれ設定される計測区間のタイムを競う。ロングツーリングは両ステージのロケーションを楽しみながら走り、ショートツーリングはStage1のみを走る。レース志向の人から、のんびりグラベルサイクリングを楽しみたい人、グラベルライドに触れてみたい人まであらゆるライダーが楽しめるフォーマットになっている。

初開催の〈野辺山グラベルチャレンジ〉、スタートの朝は生憎の小雨模様。シクロクロスレース会場でもある滝沢牧場には、続々とライダーたちが集まってきた。誰もが初めての〈野辺山グラベルチャレンジ〉、みなどこかそわそわとスタートを待つ。だが、胃がきゅうっとするような緊張感は無い。そう、今日はシクロクロスレースではないのだ。

2010年の第1回野辺山シクロクロスは牧歌的だった。牧場というロケーションの力もあっただろうが、ライダーを翻弄するこれまでにない初めてのコースを、周回ごとに攻略していくのが純粋に楽しかった。人との勝負というより、自分の持てるスキルと体力への挑戦的な要素があった。

まずは牧場内の〈野辺山シクロクロス〉コースを走っていく

そこからシクロクロスにのめり込み、レースを重ねていくにつれ走る喜びの質が変わっていった。それまでは、泥セクションを足を着かずに行けた、シケインをスムースに越えられたということが嬉しかったが、次第に1つでも前の着順でゴールすることが喜びになった。喜びは目標になり、やがて自らの責務になった。レースとはそういうものだ。

今日の〈野辺山グラベルチャレンジ〉もレース部門にエントリーした。が、スタート前の和やかな雰囲気からして、これは自分の知っているレースではない。周囲と談笑しながらのんびりとスタートしていく。スタート直後の長い舗装路の直線は、シクロクロスレースでは心臓がもげそうなほどに加速し追い込む魔の区間。ここを集団で、のんびりとおしゃべりしながら走っていくのは不思議な気持ちがする。

レースでありながら、和気あいあい

朝からの雨もなんとか止み、滝沢牧場の先へと公道につながる形でルートは伸びていく。あとで聞くと、ここは「目の前に圧倒的な八ヶ岳が見える」、主催者が参加者に早速ため息をつかせようという場所であった。今は重い灰色の雲しか見えないが、これはこれとして冬の冒険が始まるようで悪くない。

残念ながら八ヶ岳は霧の中

そしてお待ちかねのグラベルが始まる。予想に反して締まった路面に砂利粒の小さなグラベルは走っていてスムース。それにしても、オフロードに入った時の高揚感は一体どこから来るのだろう? 自然とテンションが上がる。エンデュランスランが好きな方なら、〈野辺山ウルトラマラソン〉のコースだと言えばどこだか思い至るだろう。

〈野辺山グラベルチャレンジ〉のレースカテゴリーは、コース中盤に設けられた計測区間(SS)でのタイムを競うというもの。つまり、SSが始まるまではサイクリングでいいし、自分の好きなタイミングでタイムアタックに臨める。Stage1のSSは、7.7km地点から開始ということでしばらくはグラベルツーリングを楽しめる……はずなのだが、SS1前にはStravaチャレンジ区間が設定されているのもこのイベントのユニークなところ。

霧に景色が飲み込まれていても、絵になる

Stage1の5.3km地点から7.7km地点まで設定されるStrava計測区間は、GPSデバイスの設定だけ行えば、レースカテゴリーのみならず、2つのツーリングカテゴリーの参加者も挑戦できる。トップ100までに入れば、大会ロゴワッペンやStravaオリジナルグッズが贈呈されるとのことで、頑張りがいもある。

Stravaセグメントを終えると、いよいよレース計測が始まる

Stravaセグメントは、グラベルライドを楽しむことに徹して、SS1の入り口に。ここからはレース! ということで周りのペースも上がっていく。せっかくなので、ここは思いっ切り走ってみよう!

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