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スプリントコーチとして小学生から社会人まで「走り」を指導してきた秋本真吾さんが、この度オンラインによるランニングコーチングサービス〈CHEETAH〉をスタートさせた。「人が速くなるのを見るのが楽しい」生粋のコーチが手がける新たな取り組みについて聞いた。

CHEETAH(チーター)はオンラインのランニングコーチングサービス。元陸上ハードルの選手として、現在はランニングコーチとして数々の企業研修や教育機関で指導を行っている秋本真吾さんが長年の経験と知見を投入するサービスだ。

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秋本「これまではご依頼いただいた企業や団体への出張講座という形をとらせてもらっていたんですが、個人で診て欲しいという問い合わせも年々増えていました。そんな時に、知人が運営するオンラインのフットサルコーチングが盛況と聞いて、実際に見てみました。オンラインは、自分がこれまで現場でやっていたことを広く伝えるのに有効な方法だと感じたんです」

オンラインということで、あらゆる人が情報にアクセスできるようになるが、気になるのは金額と内容だ。月額は3,000円(税込)で、Facebookの非公開グループを用いて動画を用いたコーチングが行われるという。更新頻度は週2回を予定しているが、テーマに合うスポーツイベントが開催される時などは、突発的な動画講座も開かれることも。現状は座学ベースの動画講座となるが、ゆくゆくはメンバー同士での学び合いができる仕組みも考えていくという。

では、CHEETAHがサービスを提供するにあたりターゲットとして想定しているのは、どんな層のランナーなのだろうか。

秋本「すべてのアスリートに、と考えています。これまで小学生から大人まで診てきて、本気で走ることに向き合っている人は全員がアスリートだと考えています。どの層にも響くようにしたい。そして、CHEETAHでやろうとしているのはほぼ座学になります。例えば、速く走るとは、ケガをしないとはどういうことか。座学を通じて『走りたい』と思えるような内容にしていきます。『ただ速く走るため』のトレーニングプログラム提供はやりません」

座学というと理論的で難しそうなイメージもある。だが、単なるトレーニングに終始するのではなく、「なぜ」と深掘りすることが走ることのモチベーションになると秋本さんは考える。それを支えるのは、圧倒的な指導経験だ。

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小学生から社会人、アスリートまで秋本さんが指導してきた範囲は幅広い

10,000を超える事例動画から学びを得る

秋本「過去に指導してきて、撮り貯めてきた事例動画が1万個以上あるんです。このアスリートは最初はこういう走りだった。なぜこの走り方が速くないかをみんなで考えていきましょう、というところからスタートします。そしてスローで走り方を見ていく。すると『こういう着地をしているからだ』と分析ができるわけです。それを受けて、どんなトレーニングで改善するか、という話になり、また次の動画を紹介、と続いていきます。そしてそのアスリートがどう変わったのかの結果までお見せします。

動画配信だけのサービスでは、このトレーニングはいい、だけで終わりがちです。なぜそのトレーニングがいいのか、なぜ必要なのかを深掘りするために、座学を通して身につけていくのがCHEETAHです。だから自身が走らなくても、スポーツを見るのが好きな人だったら、スポーツの見方が変わります。走ることはどのスポーツにも通底しているので、例えば野球の盗塁も成功・失敗だけで見ていたのが、『あの走り出しだったから成功したんだ』ってわかるようになります」

外出自粛が叫ばれ、家にいる時間が増えた今にオンラインコーチングはマッチしているように思われるが、CHEETAHは意図してこのタイミングでローンチするわけではないという。

秋本「元々は2019年に始めたかったんです。やりたいと思ったらすぐやりたい性格なので。このタイミングでのスタートになりましたが、『自宅でトレーニングしてください』というメッセージではありません。むしろ今この期間を、知見を蓄え、それをどう活かすかのイメージづくりに当てて欲しいと考えています」

だからこそ、CHEETAHのサービスにはハウツー動画ではなく、じっくりと学べる座学のものが多くある。走るモチベーションをこのサービスを通じて高めて欲しいという。

自分が走る楽しさと、人が速くなる楽しさは同じ

走ることに対して、とにかく真摯な秋本さんは、「先天的に、ずっと走ることが好き」と語る。

秋本「物心がついた時から走るのが好きでしたね。競技ではスランプを経験する辛い時期があっても、結局は好きなものに戻るというか。好きなことをやり続けていまに至る、という感じです。30歳で競技は引退したけれども、37歳でマスターズの100mを走る。そこに好き以外の理由はないです。

それに小学生だったり、他スポーツのアスリートを指導する中で、『走ることの価値は陸上だけじゃない』と気づきました」

走ることが好きだった秋本さんが、教えるという方向へ向かったのはなぜなのだろう?

秋本「もともと人の面倒を見るのが小学生くらいから好きで。キャプテンやりたがり、みたいなタイプです。現役の頃からコーチとプレイヤーを往復しながら活動していたのですが、それで人の結果が出ることの喜びを知りました。子ども達の教室でも自己ベストが出たって彼らが喜んでるのをみると、自分の自己ベストのように嬉しくて。コーチングを通して人に変化してもらう喜びをすごく感じるんです。自分が走る楽しさと、人が速くなる楽しさは同じくらいありますね」

CHEETAHを通して秋本さんが最終的に教えたいことは何なのか。尋ねてみるとそれは、人が人らしく生きることにつながっていた。

秋本「受講してくれる方が、速く走れるようになって人に勝つことよりも、どれだけ自分に自信を持ってもらえるようになるかだと思っています。僕自身、自己ベストがどんどん出ていた時は自信しかありませんでした。CHEETAHをきっかけに、走り方を掴んでタイムを出して、自信を得ていただきたい。CHEETAHを超えて、その自信を仕事などで活かしてもらえればと考えています」

とにかく走ることが好きなコーチは、同じだけ教えるのが好きだ。速さを超えた走ることの価値を見せてくれるCHEETAHに注目したい。

秋本真吾

秋本真吾

2012年まで400mハードルの陸上選手として活躍。オリンピック強化指定も選出。当時の特殊種目200mハードルではアジア最高記録、日本最高記録を樹立。引退後、2013年からスプリントコーチとして野球、サッカー、ラグビーのプロ選手へ走り方の指導を行うとともに、全国各地で年間1万人以上の子どもたちにかけっこ教室を開いている。
CHEETAH cheetah.tokyo ¥3,000(税込)/月
photo:@preside_okano