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編集部が実際に体験したものをリポートする「mark gear by onyourmark」。前回紹介したCARBON X-SPEに続き今回もHOKA ONE ONE(ホカ オネオネ) の新作ランニングシューズ、CLIFTON EDGEの体感レビューをお届けします。ブランドを代表するロングセラーモデルの名を冠しながら、その感触はイメージとは大きく異なるものでした。

CLIFTON EDGE は TenNineの完成形か

2014年の1stモデルの発売から「厚底」「*メタロッカーテクノロジー」「マシュマロクッション」と、キャッチーなキーワードと共に、HOKA ONE ONEを代表するモデルとして愛されてきたCLIFTONシリーズ

やや丸みを帯びた歴代のCLIFTONとは異なり、今回紹介するCLIFTON EDGEはせり出したヒール、フレアアウトソールが特徴。「造形」としての違いが意味するものとは? ファーストインプレッションは同じくフレアアウトソールで度肝を抜いた「TenNineをブラッシュアップしたロードランモデル」というものでした。

*メタロッカーテクノロジー = スムーズな足運びを促すため、ドロップを最小限に、かかと部とつま先部を滑らかに削ぎ落とした独特の形状のことで、HOKA ONE ONEが独自に開発したミッドソールテクノロジー。ロッキンチェアーのようなローリング運動を導き、着地から蹴り出しまで自然で効率的な体重移動を実現する。

以前のレビューで紹介した通り、TenNineは「山を思いのままに駈け下ることにフォーカスした“ギア”」。下り坂での着地衝撃による痛みを恐れることなく走れるものでした。一方で、フラットな路面ではヒールの重さ、大きさがネックになり、“シューズ”として普段のランで履くには現実的ではなかった。

今回レビューするCLIFTON EDGEは、その特徴的なヒールからTenNineの面影は感じさせるものの、「現実的に」走れるとわかるシューズデザイン。どうアプローチし、この形にたどり着いたのか。実際はどんな感触が得られるのか。その独特の形状を観察し、想像を膨らませました。勢いに乗って山を駈け下りたあの感覚をロードで味わえるのだろうか、と。

せり出したフレアアウトソールと共にCLIFTON EDGEの造形を際立たせるアキレス腱をガードするような履き口のシェイプ。
従来のCLIFTONよりもややシャープなルックスをしたRINCON(右)と比較しても、ヒール周りを除けばほぼ同じサイズなのが分かる。

フレアアウトソールがもたらす3つの特徴

回数、時間をかけながらシューズの特徴を掴もうと考え、今回は3回のテストランを実施。60分、90分、120分、いずれも基本はゆっくりとしたjogです。

走ってみてまず実感したのは「前足部(母指球〜小指球のあたり)の幅の広さ」。加えて、蹴り出し時に地面をしっかり捉えるグリップ力です。実際にはヒール部分こそボリュームがありますが、前足部は従来のCLIFTONとほぼ変わりありません。ですが、体感では広く感じられる。なぜなのか? この点は次に体感した特徴から深く理解することとなります。

「自然な感覚でフラット着地に誘導される」。それが2つ目に感じた特徴でした。従来のCLIFTONは、着地時に柔らかいクッションを感じた後、その衝撃を前方へ流すように、メタロッカーテクノロジーによって回転誘導されます。

しかし今回のCLIFTON EDGEは、シューズに回転させてもらっているというよりも、自分の足の力を地面に伝えて走っている実感が得られる。クッションとメタロッカーテクノロジーは控えめで、衝撃吸収時に沈み込み過ぎず、重心が乗ってから回転を始めるイメージ。厚みのあるソールながらベアフット感が得られる、従来のCLIFTONとはまったく体感が異なります。

HOKA ONE ONEの発表では、従来のCLIFTONはEVAなのに対し、CLIFTON EDGEでは「復元力の高い新しいフォーム」を採用。どのような仕様なのか気になるところ。

前足部の幅が広いと感じたのも、この強すぎないクッションによるものと理解しました。この仕様変更が、エネルギーを分散させない蹴り出しを可能にしているのだと。

気になったのは、どんなランナーも「フラット着地に誘導される」のか、それとも、普段は前足部のあたりで着地している自分がフラット着地になるように、「接地ポイントを後ろに誘導するシューズ」かということ。この点は他のランナーの感触も確認したいところです。

最後、3つ目に感じた特徴は「足ブレせず、まっすぐに足が出ること」。今回の足ブレとは、着地時の足首のブレではなく、着地後、後方へスイングした足を前方へ引き戻し、前方方向へ運ぶ際の大腿部のことを指しています。

テストを重ねていくうちにフラット着地への誘導はヒールの「重量感」によることが見えてきました。重量感と表現しましたが、誤解のないように補足すると、CLIFTON EDGEは252g、CLIFTON 6は255g(ともに27cm比)。フレアアウトソールでありながらCLIFTON EDGEの方が軽い。

おそらく、このヒールの重量感が持つ意味は、効率的なランニングフォームを身体に染み込ませるため。腸腰筋を使うランニングフォームをガイドしてくれます。一歩一歩の動作に安定感が生まれる。腸腰筋を使えていない人や、ランニングフォームに改善が必要と感じている人には特に良い影響を与えてくれるはずです。

HOKA ONE ONE、新たな章の始まり

3回のテストを終え、ファーストインプレッションで感じた「TenNineをブラッシュアップしたロードランモデル」というイメージとは大きく異なることがわかりました。グイグイ前に進んでいく感触ではなく、CLIFTON EDGEは一歩一歩地面を感じながら走るシューズ、「走りの安定」をもたらしてくれるシューズです。

従来のCLIFTONも同様に安定感のあるシューズでしたが、これまでが靴の力に任せる安定だとしたら、CLIFTON EDGEは靴の力を生かしながら、共に作る安定です。

前足部とハトメ周りは、TPU糸をデポス形状にして使用。強度があるため、つま先のブレを補正してくれる効果も。

想像の域を出ませんが、EVAの配合率において理想に近いものができたのでしょう。アウトソールに触れてみると、ピンク、オレンジ、グレーと微妙に硬さが違います。ヒューマンパワーを活かすソールを、フレアソールにしてさらに安定感を高めた。体感は大きく異なりますが、そう考えると、CLIFTONと名がつくのも腑に落ちます。これはHOKA ONE ONE流のナチュラルランニングシューズではないかと。

CLIFTONは7代目も発表(近日発売)されましたし、今後も長く続いていくでしょう。ではCLIFTON EDGEはどうか。同様にナンバーを増やしていくのか、それともEDGEとはまた違った名のモデルが生まれるのか。継続して発表されることを期待します。いずれにしてもこの感触はHOKA ONE ONEとして新しい。新たな章の始まりを感じさせてくれるシューズでした。

HOKA ONE ONE オフィシャルサイト www.hokaoneone.jp