Oakley(オークリー)が「KOKORO COLLECTION」の発表とともに、WHOの新型コロナウイルス対策基金へ20万ドルの支援を表明した。本コレクションのデザインを手がける日本人アーティスト山口歴(やまぐちめぐる)さんに、今回のコラボレーションとアーティストを取り巻く社会状況について聞いた。
日本語の「心」を冠したOakleyの新コレクション「KOKORO COLLECTION」。そのモチーフは、プロ・アマチュアを問わずアスリートが共有するスポーツ愛だ。心情的なメッセージを秘める本コレクションは、支援や連帯が求められる今日の社会状況において“心をひとつに”を呼びかけるものであり、Oakleyはローンチと同時に「WHOのための新型コロナウイルス感染症連帯対応基金」へ20万ドルの寄付を表明している。
斬新なカラーグラフィックを特徴とする「KOKORO COLLECTION」のデザインを手がけるのは、ニューヨークで活動する日本人アーティスト山口歴さんだ。色彩が激しく迸る抽象的な表現で、「立体的な絵画」と評される彼の活動はストリートブランドからハイカルチャーまで、ジャンルを横断しつつ多岐にわたる。山口さんに、今回のコラボレーションについてのショートインタビューを行った。
ロックダウン下のNYC、制作活動の変化
OYM:ニューヨークを拠点に活動されていますが、ロックダウンの状況下で自身の作品をプリントしたマスクを無料配布する取り組みを行われていましたね。
山口:ニューヨークに暮らして13年になりますが、今回は初めての経験でした。3月の緊急事態宣言後、ふだんマスクをしないニューヨーカーがみんな白いマスクをして街を歩いている。街にいるのに大きな病院にいるかのような錯覚に陥りました。
そんな状況を少しでも元気付けられればと、作品を取り入れたマスクの配布を行いました。ちょっとでも街の景色が変わればいいなと思いながら。しかし改めて、前代未聞の状況でしたね。
OYM:ロックダウンは、自身の制作にどんな影響を及ぼしましたか?
山口:それまで電車で通っていた制作場に行けなくなり、1ヶ月何もしない時間を過ごしました。このままでいいのかな、と思い立ってAmazonで自転車用の空気入れを買い、乗っていなかった自転車に再び乗るようになりました。マスク着用のうえ、家族とサイクリングしたら気持ちが前向きになったんです。それで自転車で通えるようにと、近所のスタジオに仕事場を移しました。スタッフも自転車通勤になって、みんな前よりも健康になったくらいです。
「ひとつひとつが1点もの」のKOKORO COLLECTION
OYM:山口さんの作品は枠に収まらないダイナミックさが特徴だと思いますが、「KOKORO COLLECTION」ではサングラスのフレームという狭い範囲での表現。難しいチャレンジだったのでは。
山口:カリフォルニアのOakley本社を2回訪問して、物づくりの現場を見学しました。「アスリートたちに最高のプロダクトを提供する」ことに多くの人が真摯に取り組んでいるのを見て、衝撃を受けました。まるでお城かと思うほど、そのスケールに圧倒されましたね。
僕の制作時のストロークを今回のコレクションで再現するために、技術者のエヴァンが塗装用の回転マシンを作ってくれました。結構な数のサングラスが作られましたが、そのひとつひとつが微妙に色の入り方が違うユニークピース、つまり1点ものです。僕の作品と同じですね。製品コラボレーションというより、エヴァンやオークリーと一緒に彫刻アート作品の制作を行った、そんな感覚です。
OYM:「KOKORO COLLECTION」で用いた色彩について教えてください。
山口:青とピンク。青は僕のシグネチャーカラーでもあります。「ザ・ブルーハーツ」というバンドが好きなのと、自分自身も青い心を持ち続けて制作しようという意味で。ピンクは日本の桜がモチーフです。
OYM:今回のコレクションはあらゆるスポーツをカバーするサングラスのラインナップになっています。山口さんの好きなスポーツは何ですか?
山口:空手をやっていたのですが、それは個人競技だったから。チームワークが苦手なんです。でも、今回Oakleyのチームと一緒に制作をして、チームワークというものを学ばせてもらいました。みんなが一生懸命になって、自分の青の生かし方を考えてくれた。仕事にかける情熱に心を動かされ、それがクリエイティブに生かされたと思います。
最近は先ほどお伝えしたように自転車に乗っているので、Oakleyのサングラスをかけて出かけたいですね。(談)
「KOKORO COLLECTION」から。左:RADAR EV PATH(¥30,100) 右:AIRBRAKE MTB(¥28,600)※価格は全て税抜
「KOKORO COLLECTION」から。左:FROGSKINS(¥21,200) 右:SUTRO(¥25,700)※価格は全て税抜
4月にはアイウェア開発の技術を生かしたフェイスシールドを医療従事者に無償提供したOakley。大会やイベントのキャンセルが続き、世界的にもオークリー着用アスリートの活躍の場が減っていることは否めないだろう。だがその渦中にあって、社会へ働きかけるアーティストとともにコレクションを作り上げ、医療従事者への寄付を行うその姿勢に拍手を送りたい。
「KOKORO COLLECTION」は2020年7月23日より発売が開始される。
オークリー公式サイト oakley.com