ナイキのシェア率は驚異の96%
1月2日、3日に開催され、駒澤大学の大逆転で幕を閉じた第97回東京箱根間往復大学駅伝競走(以下:箱根駅伝)。順位と同様にランナーが「どのブランドのどのシューズを選ぶか」に注目して見た人も多いのではないでしょうか。
昨年はNIKE ZOOM X VAPORFLY NEXT%でNIKEが85%にも及ぶシェアを獲得しましたが、先日公開した記事でも触れている通り、MIZUNOのWAVE DUEL NEOや、adidasのadizero adios Proなど他メーカーも意欲的な新作を発表していたため「今年はNIKEのシェアが下がるのでは?」という向きもありました。しかし、蓋を開けてみると総勢210名のランナーのうち、201名がNIKEをチョイス。実に96%ものシェアを勝ち取りました。2区、5区、6区、8区に至ってはシェア100%。その他の区間でも他を圧倒しました。NIKE以外のブランドでは、4名がadidasを、3名がMIZUNOを、2名がNEW BALANCEを選んでいます。
大学別で見ると、優勝した駒沢大学を筆頭に走者全員がNIKEのシューズを選んだ大学は13校。関東学連選抜も含めると14チームの選手全員がNIKEのシューズを選びました。NIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT%かNIKE ZOOM X VAPORFLY NEXT%か、どちらかを選んでいます。
※onyourmark編集部調べ
*公開当初、6区と10区の選手について、着用シューズをNIKE ZOOM VAPORFLY 4%と記載しましたが、NIKE ZOOM X VAPORFLY NEXT%と判明しましたので、修正しました。(2021年1月7日 15:45)
出走者が全員NIKEのシューズをチョイスしたチーム
1位 駒沢大、3位 東洋大、5位 東海大、6位 早稲田大、7位 順大、9位 國學院大、12位 中大、14位 日体大、16位 城西大、17位 法大、18位 国士舘大、19位 山梨学院大、20位 専修大、関東学連選抜(※オープン参加)
ヴェイパーフライ ネクスト%かアルファフライ ネクスト%か、それが問題だ
こうなると、NIKE ZOOM X VAPORFLY NEXT%と、NIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT%でどちらがより選ばれたのかが気になるところ。
結果は、全体で111人(約53%)がNIKE ZOOM X VAPORFLY NEXT%を、90人(約43%)がNIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT%をチョイス。NIKE ZOOM X VAPORFLY NEXT%が、第96回大会に続き、第97回大会でももっとも履かれたシューズとなりました。
最新作であり、“NIKE史上最速シューズ”であるNIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT%がより多く選ばれるのが通常のことのように思われますが、これはコロナ禍の影響によって練習時間が確保できなかったことも少なからず影響しているでしょう。
NIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT%を履きこなすには充分な走力とともにその特性を身体に馴染ませないと難しいという意見があります。そのためのトレーニングモデルとしてNIKE AIR ZOOM TEMPO NEXT%も発売されています。トレーニング環境が例年通り充分に取れていたら、また違った結果になっていたかもしれません。区間賞数で見た場合、NIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT%の方が多いというのも注目ポイントです。
山登りで圧倒的だったヴェイパーフライ ネクスト%
ちなみに5区山登りでは17人がNIKE ZOOM X VAPORFLY NEXT%を選択。4区まではNIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT%とほぼイーブンだった割合に、大きく差をつける形となりました(NIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT%は4人で、5区の全ランナーがNIKEをチョイス)。数年前までは「厚底は登りに向いていない」という意見もあり、実際にNIKE ZOOM VAPORFLY 4%発売以降も山登り区間では薄底のシューズが選ばれていましたが、今年はその常識が完全に覆えされる形となりました。
また、NIKE ZOOM X VAPORFLY NEXT%を最も多く履いた大学は東京国際大学と東洋大でそれぞれ9人ずつ。逆にNIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT%を最も多く履いた大学は早稲田大学と国学院大学でそれぞれ8人ずつでした。
NIKE ZOOM X VAPORFLY NEXT%とNIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT%のシェアの割合
※以下、NIKE ZOOM X VAPORFLY NEXT%=VAPORFLY 、NIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT%=ALPHAFLYと略【全ランナー】
VAPORFLY 111名(53%)
ALPHAFLY 90名(43%)
※他シューズ:9名(5%)
(往路 VAPORFLY54名(51%): ALPHAFLY 45名(43%)
※他シューズ:6名(6%))
(復路 VAPORFLY57名(53%): ALPHAFLY 45名(43%)
※他シューズ:3名(3%))【1区間におけるシェア数】
往路
1区 VAPORFLY:10 ALPHAFLY:9
※他メーカー:2
2区 VAPORFLY:10 ALPHAFLY:11
3区 VAPORFLY:9 ALPHAFLY:10
※他メーカー:2
4区 VAPORFLY:8 ALPHAFLY:11
※他メーカー:2
5区 VAPORFLY:17 ALPHAFLY:4復路
6区 VAPORFLY:14 ALPHAFLY:7
7区 VAPORFLY:13 ALPHAFLY:7
※他メーカー:1
8区 VAPORFLY:11 ALPHAFLY:10
9区 VAPORFLY:7 ALPHAFLY:13
10区 VAPORFLY:12 ALPHAFLY:8
※他メーカー:1【区間賞数】
ALPHAFLY:5(1区、3区、4区、6区、9区)
VAPORFLY:4(2区、5区、8区、10区)
※他メーカー:1 (7区)※onyourmark編集部調べ
NIKE以外で走った9人、そのシューズは?
シェアの面ではNIKEの圧倒的勝利に終わりましたが、ではNIKEを選ばないと結果を残せないのかというと一概にそうとは言い切れません。以下はNIKE以外のシューズを選んだランナーとその成績です。
1区 帝京大 小野寺悠 着用シューズ:FuelCell RC Elite*(NEW BALANCE)区間14位
1区 明治大 児玉真輝 着用シューズ:adizero adios pro(adidas)区間17位)
3区 創価大 葛西潤 着用シューズ:adizero adios pro(adidas)区間3位
3区 帝京大 遠藤大地 着用シューズ:モデル名不明 (MIZUNO)区間4位
4区 創価大 嶋津雄大 着用シューズ:WAVE DUEL NEO(MIZUNO)区間2位
4区 神奈川大 西方大珠 着用シューズ:adizero adios pro(adidas)区間10位
7区 東京国際大 佐伯涼 着用シューズ:Fuel cell 5280(NEW BALANCE)区間1位
9区 青山学院大 飯田貴之 着用シューズ:adizero adios pro(adidas)区間2位
10区 拓殖大 工藤翼 着用シューズ:WAVE DUEL NEO(MIZUNO)区間13位
※onyourmark編集部調べ
*公開当初Fuel cell 5280とお伝えしましたが、FuelCell RC Eliteに修正しました(2021年1月5日 08:34)
往路では3区を走った帝京大の遠藤大地選手がMIZUNOの薄底シューズを着用し、日本選手権で27分台を出した早稲田の中谷雄飛選手を含む、8人抜きの快走を見せてくれました。昨年に続き今年も“真っ白なMIZUNO”で4区を走った創価大の嶋津雄大選手は、山梨学院大の留学生オニエゴ選手に負けはしたものの区間2位。惜しくも10区で逆転されてしまいましたが、創価大の勢いを加速させ、レースを面白くしたのは彼の走りによるところが大きかったでしょう。最終学年でもまた“真っ白なMIZUNO”で走るのか今から楽しみですね。
復路では東京国際大の佐伯涼選手がNEW BALANCEのFuel cell 5280(フューエルセル5280)を履いて快走。今大会唯一NIKE以外のシューズを履いた区間賞ランナーに輝いています。昨年の創価大、嶋津選手の快走で話題になったように、一般ランナーの間でFuel cell 5280がシェアを広めるかもしれません。ウェアでadidasと提携する青山学院大は今回、飯田貴之選手が唯一adidas adios proを着用し区間2位。今回青山学院大学で最も良い区間順位で走ったランナーとなりました。
adizero adios proもNIKE AIR ZOOM ALPHAFLY NEXT%同様に履きこなすまでに時間がかかるという声もあります。男女ともに今年ハーフマラソンで世界記録を打ち立てたシューズであると同時に発売から駅伝シーズンまで時間がなかったことを考慮すると、adizero adios proが来年は一気に巻き返す可能性もあります。1年後の箱根駅伝でどういったシェアバランスになるのか、2021年も各ブランドの新作を注目して見ていきましょう。