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コロナ禍で生活のリズムが変化し、心身の健康のためのスポーツや体を動かすことの重要性がかつてないほど高まっています。「ワーク・ライフバランス」という言葉が一定の定着をみた今、体を動かすことが理想の健康にさらに近づく、「ワーク・スポーツ・ライフバランス」のあり方に注目。勤務体系の中で体を動かすことを実践・推奨している先進的な企業の取り組みを紹介することで、この新しい生活様式の健やかな働き方を模索します。今回登場するのは、勤務時間中の「フィットネスタイム」を取り入れている株式会社SmartHR。

今回の、ワーク・スポーツ・ライフバランスな会社は……株式会社SmartHR

何をしている会社?
入退社の書類作成や、年末調整をはじめ各種手続きなど、今まで紙ベースで行われていた業務をペーパーレス化するクラウド人事労務ソフト、『SmartHR』を開発、運営しています。

どんな企業文化?
SmartHRの特徴はなんといっても情報がオープンなところ。創業当時から経営会議の議事録を一般社員も見ることができたり、会社の通帳残高を毎週公開したりと、社内全ての人が同じ情報を持って仕事をしています。それにより、自律的に考えて能動的に動くことができる企業文化が形成されています。

従業員数
349人(2021年2月1日時点)

オフィス所在地
東京都港区六本木

フィットネスタイムについて教えてくれるのは……

SmartHR 副島智子(そえじまともこ)さん。株式会社SmartHR 執行役員・SmartHR 人事労務 研究所 所長。

onyourmark(以下OYM):SmartHRのフィットネスタイムとは何ですか?

副島智子さん:フィットネスタイムは、身体を動かしたりリフレッシュする時間を勤務時間として認める制度です。15分以上を推奨し、最大で1時間以内としています。

OYM:社員のみなさんは、実際にどうやってフィットネスタイムを過ごしているのでしょうか?

オンライン会議システムを使用して、朝と昼の1日2回みんなでラジオ体操をしませんか? と呼びかけてくれる人がいたり、散歩やウォーキング、筋トレをしたりしているようです。私自身は、犬を飼っているので散歩をしたり、エアロバイクを漕いだりしてフィットネスタイムを使っています。

SmartHR副島さん。テレワーク中のため、オンラインでお話を伺いました。

OYM:フィットネスタイム導入の背景には何があったのでしょうか?

副島:昨年の3月に緊急事態宣言が出て強制リモートワークを始めました。しかしその少し前には、産業医の先生から「リモートワークは睡眠障害を発生しやすいので、意識的に運動をしないとメンタル面や身体の不調を訴える人が増えるかもしれない」というアドバイスをいただきました。会社として先手を打ち、意識的に運動する時間を設けて、夜もきちんと眠れるように働きかけしておかないと、ということで始めました。

OYM:フィットネスタイムを行ってみて、社員の反応や好ましい効果などはありましたか?

副島:集中し直すことができる、だらだら仕事し続けることを防止できる、といった声が多いですね。やはり一日中家にこもって仕事をするのは、結構な負担でストレスに感じることが多いんです。リモートワークは作業の区切りがつけにくく、帰宅時間も決まっていない中でどこまでも仕事をしてしまう側面があるので、そういった区切りや切り替えのために使ってもらえているようです。

また、「フィットネスタイム」によって運動する習慣ができ、毎週整体に通っている社員から「整体師から褒められた」というコメントもありました。

OYM:フィットネスタイムがあることによりサボってしまうなど業務に支障をきたすことはあるのでしょうか?

副島:あまりそういった心配はしていないですね。むしろ、フィットネスタイムを使っているからこそ、サボっていると思われたくない、仕事が遅いと思われたくないから、仕事に戻ったらすごく集中してるといった声もあります。

それに、オフィスでの勤務は意外と運動時間が長いんです。席にいない時間、例えば立ち上がって誰かに話しかけに行くとか、会議室に移動するとか、そういう時間を全て積み重ねたら、30分以上は動いている時間がある。例えばトイレに行くにしても、うちのオフィスはトイレが遠いので、行き帰りで10分弱くらいはかかってるんじゃないかなといった感じです。そういった席にいない時間としてフィットネスタイムを考えると、オフィスにいた時とそう変わらないとも言えます。なので、サボりや労働時間が少なくなることはあまり問題にはならなかったです。実際、フィットネスタイムによってこの1年の業務評価が悪くなったこともありませんでした。

OYM:リモートワーク以前からフィットネスタイムに相当する社員の健康増進施策はありましたか?

副島:従業員同士のコミュニケーションを促進するための部活制度があり、その内の約2割がフットサルや登山、ボルダリングなどの運動系の部活です。ですが、会社として従業員に運動を推進することは今までやってこなかったのが正直なところです。というのも、ここ1年で従業員数が倍々に増えているんです。しばらく50~100人規模でしたが、現時点では350名近くになりました。従業員数が数百人となった今、従業員に向けて何を推進していくのかさらに考えている状況です。

トレイルランナー加藤桃子さんのフィットネスタイム

フィットネスタイムを活用し、ランニングを楽しむSmartHR加藤さん

1日1時間の運動時間が認められるフィットネスタイム、心身の健康維持に理想的な取り組みに思えます。実際にSmartHRで働く社員さんはどのようにこの制度を活用しているのでしょうか。プライベートではトレイルランニングを楽しむSmartHR社員、加藤桃子さんにフィットネスタイムの過ごし方を伺いました。

OYM:加藤さんはSmartHRでどんな業務を担当されていますか?

加藤桃子さん:広報を担当しています。その中でも、社外のステークホルダーに向けた情報発信をしています。

リモートワーク中の加藤さんにお話を伺いました。

OYM:トレイルランニングをされていると伺いましたが、どんなきっかけで始めたんですか?

加藤:大学3年生のときに体型維持のためにランニングを始めたんですが、正直ランニングが好きじゃなくて。平坦な道をずっと走るのが苦手なんです。そこでランニングを辞める区切りにハーフマラソン大会に出ることにしました。河川敷を走る大会だったので辛く、本当にランニングが嫌いになってしまって。そのタイミングで知人にトレイルランニングの存在を教えてもらい、始めました。

トレイルランニングは足元に岩があったり、木の根っこがあったり、いつ崖から落ちるかも分からないスリリングさがあります。社会人になってから仕事以外はあまり刺激のない生活でしたが、それと真逆な非日常を味わえるのが楽しいです。下る時はどこに足をつけようか集中するんですが、そのときの他のことを何も考えていない、頭の中が真っ白な無の状態になる瞬間がすごい好きです。走り終わった後はすっきりして、月曜から頑張ろうという気持ちになれます。

OYM:フィットネスタイムはどのように使っていますか?

加藤:週に2~3回、ランニングをしたり、近所のパーソナルトレーニングジムに行っています。冬の朝や夜は寒いので、走る気力がなくなってしまって(笑)。昼の暖かい時間に走れるのは嬉しいです。パーソナルトレーニングも朝や夜は予約が取りにくいのですが、昼間は空いているんです。空いていて周りに人がいないのも良いな、と思いますね。

フィットネスタイムには近所を走ることも多い加藤さん。とはいえ、シリアスにではなく、『片道を歩いて帰り道だけ走る』などその日に応じた身体の動かし方をしている。

OYM:フィットネスタイムの導入を知り、どう感じましたか?

加藤:良い制度だとは思いましたが、時間的にやる余裕はないかもなと感じました。導入当初は繁忙期だったこともありフィットネスタイムを使えずにいたら、睡眠の質が悪くなり、寝ても寝た気がしないような状態になってしまいました。何か変えなければと思いフィットネスタイムを取り入れると、睡眠の質もよくなり、生活が良い方向にクルクルと回り出しました。

OYM:フィットネスタイムが1日を通して良い影響を与えてくれたんですね。

加藤:走ったという事実から自己肯定感も生まれるし、フィットネスタイムで日中に少し身体を動かすとさらに動きたくなって、夜にウォーキングに行くこともあるんです。身体を動かすきっかけ作りにもなるので、フィットネスタイムがあってよかったと思っています。

また、1週間を通しても良い影響がありました。リモートワークが始まってからは、月曜から金曜までお手洗いと食事を作るとき以外ずっとデスクに座りっぱなしでした。土日には疲れきっていて、家でずっと寝ているなんてことも。フィットネスタイムを取り入れてから、土日にどこかへ行く元気が出たのは、大きい変化だと思いますね。

リモートワーク中の加藤さん。机や椅子、マッサージ器具は『リモートワーク環境を整える手当』を利用して購入したとのこと。

OYM:他の企業でもフィットネスタイムを取り入れた方が良いと思いますか?

加藤:思います! が、実力や成果を重視する会社でないと難しいのではと感じます。勤務実態が不透明になりがちなリモートワークにフィットネスタイムが加わると、さらに何をしているのか分からない状況になってしまうので。一方で、オフィスでのトイレや会議室への移動時間を考えると、業務時間が減ってしまうことへの懸念はあまりないですし、制度の目的を理解してくれる社員さんが多いのであれば積極的に取り入れて欲しいなと思います。

SmartHRに見るワーク・スポーツ・ライフバランス

最後に、副島さんに今後のSmartHRにおける働くこと、運動することについてお聞きしました。

OYM:アフターコロナの働き方についてのお考えは?

副島:具体的な決定はしていませんが、完全出社に戻すことはないんじゃないかな、と想像しています。オフィス勤務とリモートワークの共存をして、集中作業とコミュニケーションを上手く使い分けながら業務効率を上げていくことを考えていく方向性ですね。

OYM:リモートワークが終わったら、フィットネスタイム制度も終わりですか?

副島:オフィス勤務とリモートワークを共存させるとなったときに、フィットネスタイムをどうしていくかは、改めてその時に考えたいなと思います。従業員の意見はもちろんですが、健康診断の結果を参考にするなど、具体的な情報を吟味し、従業員に健康的に仕事をしてもらうためには何が必要か、そのタイミングで考えたいと思っています。

SmartHRの取材を終えて…ただ身体を動かすこと以上のメリット

フィットネスタイムは、リモートワークによる睡眠障害を防ぐ目的で導入されましたが、それにとどまらない多くの可能性を秘めた取り組みだと感じました。実際に少しの運動が、狙い通り睡眠の質を向上させるほか、仕事の切り替えになったり、運動をするきっかけになったり、あるいは1日や1週間の好循環も生み出しています。

海外では、北欧の「フィーカ」と呼ばれるコーヒーブレイクや、シリコンバレーのマインドフルネス、スペインのシエスタなど、息抜きやリラックスの時間を設けているのをよく見かけます。雇用や働き方が多様化する今、勤務時間の全てを業務に費やしている現状は、再考の余地があるかもしれません。

昨年、緊急事態宣言により強制リモートワークとなったと同時にフィットネスタイムの導入をしたSmartHR。企業を取り巻く環境も目まぐるしく変化する日々が続いていますが、今回の取材を通して、常に先を見据えて変化に対応し続ける姿勢が伺えました。今後もSmartHRが従業員に、世の中にどのようなインパクトを与えるのか注目です。

SmartHRで働く
人事労務研究所 所長の副島さん、フィットネスタイムを有効活用する加藤さんの生の声をお届けしました。そんな、SmartHRでは現在スタッフを募集しているとのこと。成長中の企業ということでその職種・地域も多岐にわたります。フィットネスに理解のある会社で働きたい方、要注目です。

募集職種︰人事/総務/営業/カスタマーサポート/開発 等、50職種以上で絶賛採用中
募集地域:東京/東海/関西/九州
応募方法︰以下のサイトから詳細な募集要項をご確認ください。
https://smarthr.co.jp/recruit/