トレイルランニングをきっかけに山に入るようになったから、軽さこそが正義という考えを疑ってこなかった。それを見つめ直すきっかけになったのは、皮肉にも超軽量、超高速山行を志向する山岳レース〈TJAR(トランスジャパン・アルプス・レース)の取材だった。
この取材では北アルプス、中央アルプス、南アルプスで選手を待ち構える。楽しみの山行ではないから、ピークハントや稜線歩きが目的ではなく、ピンポイントで停滞して選手を長時間待つことが予想された。環境変化にできるだけ対応したかったし、移動距離自体はいつものファストパッキングよりもかなり短いから、しっかりした大きなバックパックで臨もうと考えた。そこで、憧れていながら今まで手が出なかった〈BALTORO 65(バルトロ 65)〉を購入することにした。
まず、店頭での購入体験から違っていた。フィッティングに長けたスタッフが、丁寧に体のサイズを測り、的確な大きさの〈BALTORO 65(バルトロ 65)〉をチョイスした上で、背面長を調節してくれる。上手く調整するとヒップベルトがちょうど腰の上に乗って安定する。バックパック自体は決して軽くないのに重さを感じない。体の一部のように感じられた。
いざパッキングを始めると、いつも工夫しながらなんとか詰め込む装備が、ブラックホールのようにどんどん吸い込まれていく。ただ、これはあぶない。必要ないものまで“一応保険に”なんて言いながらどんどん詰めてしまう。するとあっという間に重量オーバー。ULTRA LIGHTとULTRA HEAVYの間で、あるべき着地点を見極める。
実際の山行では、各コンパートメントへのアクセスのしやすさが際立っていた。サイドワインダー・ボトルホルスターは、移動しながらでもボトルの出し入れが簡単だし、ヒップベルトに配された大型ポケットは、コンパクトカメラも収納できる。下部のコンパートメントにも独立したジッパーがあるので、テント場に着いた時にも寝具など停滞用の装備がすぐに取り出せた。
取材の現場では、圧倒的な安心感を与えてくれた〈BALTORO 65(バルトロ 65)〉。来年の夏は、移動速度は多少落ちたとしても、ゆっくりと長く、山での時間を過ごすことのできるこんなバックパックを相棒にしたプランを考えてみようと思っている。
BALTORO 65(バルトロ 65) COLOR:ブリックレッド / GREGORY
48,400円(税込)
問い合わせ先:グレゴリー/サムソナイト・ジャパン
TEL: 0800-12-36910