markでも度々取り上げてきた稀代のトレイルランナー上田瑠偉。彼を11年間追い続けたのが、日本のトレイルランニング・フォトシーンの最前線に立ち続ける藤巻翔だ。ふたりの山への思いが詰まったフォトブックが発売中だ。
2014年の第22回日本山岳耐久レース(ハセツネCUP)で7時間01分13秒という驚異的な記録で優勝し、トレイルランニング界にその名を轟かせた上田瑠偉選手。だが、フォトグラファーの藤巻翔氏は、その前年2013年のハセツネCUPでの上田瑠偉を目にして、被写体としての魅力を感じたという。
上田瑠偉と藤巻翔の最初の出会いは2013年の「山岳耐久レース」。
「足の速い大学生がいるぞ、陸上あがりらしい」、
狭い世界だ、瑠偉の噂はメディア関係者に知られていた。
翔は、フィニッシュで逆転されてボロ泣きの瑠偉を撮ることになる、
「5位が6位になっただけなのに、そんなに悔しいのか、この選手は」
それが最初の出会い、最初のカット。
たくさんのレースに出場し、たくさんの写真を撮り撮られてゆく。
いつしか藤巻は気がつく、瑠偉の足の速さは、陸上あがりだから、だけじゃないな、
そして北アルプスの玄関口、大町の出身であることに納得する。
「そうか、山男の遺伝子か、だからか」。
欧州の急峻な山で開催される「スカイランニング」に出場するようになって、
瑠偉は最初の山をトップで上がるくらいに力をつけてくる。
先回りして、山の上でカメラを構えていると、
海外のメディアが瑠偉の順位を教えてくれる、「ルイが1番で来ているよ」と。翔は誇らしい。
この11年の軌跡をまとめようと言い出した瑠偉、応じた翔、
この上田瑠偉フォトブックにはふたりの、たくさんの山への思いが詰まっている。
(「TRAILRUNNER RUY UEDA」プレスリリースより)
テキストは、同じく上田瑠偉選手を長年追い続けてきた雑誌ターザンに創刊時から関わる内坂庸夫氏。読み応えがある。
ゆっくりとページを繰ると、上田瑠偉選手と藤巻翔氏がどれほど多く山での時間を共に過ごしたのかを想像してため息が漏れる。これは上田瑠偉選手のフォトブックであると同時に、世界中の山々のその時にしかない瞬間を捉えた写真集でもある。