日本からの取材には、たくさんの時間を割いたよ
小俣 この1985年のツールですが、これは日本が初めて見たツールだったと聞いています。
綾野 そうですね、この中にも見られた方がいらっしゃると思いますが、NHKが現地取材を入れて、特番を流したのが1985年です。
(最前列のお客さんがDVDをカバンから出す)
小俣 DVDをお持ちの方もいらっしゃっていますね。
綾野 それですそれです。この年が、日本人にとってツール・ド・フランスとは何か、映像で見ることができ、かつベルナール・イノーという偉大な選手がいる、ということを認識した最初の年だったと思います。
小俣 ちなみに今日いらっしゃった皆さんの中で1985年のツールをリアルタイムでも、DVDでも見たことあるよ、っていう方挙手をいただけますか?
(来場者の8割ほどが挙手)
小俣 おおー、ほとんどの方が見られてますね。
綾野 僕も、録画したVHSを仲間内で擦り切れるまで、何回も何回も見ましたよ。
小俣 私もDVDで見ましたが、かなりイノーさんと取材班の距離が近かったのに驚きました。
綾野 NHKの取材班が独自に、イノーさんに密着で取材をしていたんですね。本当にすごい番組だったと思います。DVDもまだAmazonで購入できます。
小俣 そんなNHKの取材についてまずは伺ってみましょう。
イノー たくさんの時間を割いたね。というのも、日本が初めて取材に来る、日本に初めてツールが紹介される、ということで重要だと思ったから。
小俣 5勝目がかかっている状況で、取材を受けるのはストレスになりませんでしたか?
綾野 今のチャンピオンだったら受けないですよね。
イノー ツール5勝目がかかっていて忙しかったのは確かだったが、NHK取材班の対応や姿勢がしっかりしていたので、ストレスにはならなかったよ。
小俣 私たちがイノーさんを初めて見たのが1985年ツールということで、85年は特に印象深いところはあるのですが、そして翌年も……ということになりますが、イノーさん自身が特に覚えているツールはありますか?
イノー 全部のツール、全部の瞬間を覚えてはいるよ。全て素晴らしい経験だった。
綾野 どの瞬間が一番印象的でした?
イノー 一番最初のツールを一番覚えているね。その後のツールも全て努力の賜物なので、覚えているけど、一番印象的なのは最初だよ。
綾野 1978年ですね。
イノー 毎年よく覚えているのは、パリに着いて最後のマイヨジョーヌを受け取る時だね。それは一番心に沁みるものがある、もう奪われなくて済むんだ、と(笑)
(次ページ)マイヨ・ジョーヌを着てシャンゼリゼ逃げ切り勝利! 今明かされる、その裏話