日本で初めてグラベルライドのためのバイクパークが2021年春にオープンする。ハイカーやランナーとトレイルをシェアし、日本におけるグラベル文化を促進する試みに注目だ。
スポーツサイクリングにおいて、この数年ホットなジャンルが「グラベル」(砂利道の意味)だ。onyourmarkでも国内のイベントを中心に、その動向をお伝えしてきた。
グラベル関連記事
ランでもバイクでも! 山岳レースOMMを親しみやすくした「CMM」を走ってきた
日本のグラベルシーンが始まった日 〈野辺山グラベルチャレンジ〉
極上グラベル2日間バイクパッキングの旅〈キャンポンド八溝〉
グラベル発祥のアメリカでは、ロード選手がグラベル専業プロレーサーに転向するなど、カルチャー・マーケット面においてもその人気は広がりを見せているが、ここ日本ではすべてのオフロードスポーツがそうであるように、なかなか環境面の整備が追いついていないのが現状だ。
「いいグラベル」が日本には少ない!?
「グラベル」が実際のところ意味するのは、マウンテンバイクが走るようなゲレンデの下りほどはハードではなく、適度な砂利の大きさと起伏がある未舗装路。田舎道でさえ農道がきれいに舗装されている、いわば舗装路天国の日本では、メーカーが想定する「グラベルバイク」に適したルートを見つけるのが難しいという実情がある。
ロードバイクよりも太めのタイヤを履き、荷物も積みやすいという特徴もあって、わが国では「街中でも安心して乗れる」という路線でのマーケティングが盛んなグラベルバイクだが、日本で初めてグラベルライドに主眼を置いたバイクパークの開設は、そうした風潮に一石を投じるものになるかもしれない。
GIRO Gravel Bike Park Madaraoは、サイクリングアパレルブランドのGIRO(ジロ)が長野県飯山市の斑尾高原に開設するバイクパーク。GIROは世界的なグラベルイベント「GRINDURO」(グラインデューロ)を近年開催しているグラベル文化の立役者的ブランドでもある。昨年秋に開催された、日本初のGRINDUROの舞台がここ斑尾高原エリアだったことから、今回のバイクパークがこの地に置かれたことは自然な流れだと思われる。
フィールド天国・信越斑尾高原に加わるグラベル文化
関東圏のアウトドアアクティビティ愛好家であれば、ここが外遊びに最高のエリアであることに異論はないだろう。トレイルランニングやウインタースポーツを楽しんだことのあるonyourmark読者も少なくないはず。そんな場所に作られるバイクパークは、「子どもからコアなライダーまで存分にダートを楽しめること」をコンセプトに設計されているという。
現在準備されているコースは3つ。入門者やキッズ向けのSS2、本格的なオフロード走行が楽しめるSS1、そして今まではハイカー専用だったトレイルを解放し使用する「ふるさとの森ルート」だ。斑尾高原ではハイカーやトレイルランナーなど、ジャンルの違うアクティビティを楽しむ人が共存できるトレイル整備を目指しており、ここに自転車が加わることになる。
また、バイクパーク内のコースだけでなく、周辺エリアを走って欲しいというメッセージを出している点もユニークだ。パークを出ても無数のトレイルやグラベルが広がる地の利を活かす格好だが、温泉や伝統産業、稲作や食文化などこの地のカルチャーにライドを通じて触れて欲しいという思いがある。
GIRO Gravel Bike Park Madaraoの一般オープンは2021年春が予定されている。コースは随時拡張中とのことだ。グラベルをバイクパークという閉鎖された空間に押し込むことは、グラベルをある種特権化することになるのではとうがった見方をしていたが、パークの外へとライダーを導くそのメッセージには、グラベルの自由を尊重する精神が確かにある。
オープンの際にはライドに行って、バイクパークも、その外に広がる斑尾高原エリアも、グラベルバイクで縦横無尽に走ってみたい。
「グラインデューロ 信越 ジャパン」は2021年6月5日(土)開催
また、2021年のGRINDUROシリーズは、ここ斑尾高原で世界で最初に開催されることが決定している。レースでありながらレースの枠には収まらないハッピーなグラベルイベント。日程は2021年6月5日(土)だ。申し込み開始は2月が予定されているが、即売り切れの人気イベントな上に、今年は大会自体がなかったことからさらなる争奪戦になりそうだ。グラベルカルチャーの今を見るには、このイベントは見逃せない。