屋外で料理をし、星空の下で眠りにつく。そんなアウトドアライフに魅せられたキャンパーのセカンドステージが、アウトドア・アクティビティだ。フィールドでの遊びが増えれば、キャンプライフはさらに深化するはずだから。今回はファッションランニングアドバイザーとして活躍するサブ3ランナーの牧野英明さんが、キャンプ × eマウンテンバイクに挑戦。コンシャスにランニングを追求してきた牧野さんに、eバイクは果たしてどんなインプレッションをもたらすのか。
ファッションを本業としながらもランニングアドバイザーの資格を取得、ラン仲間とともにさまざまなレースに参戦するなど、ランニングを中心としたライフスタイルを送る牧野英明さん。現在は毎日のランニングに加えて週に1〜2度の高強度トレーニング、さらには週末のサウナと、充実した“スウェットライフ”を送っている。
主戦場はロードだが、近年はトレイルも走るようになった。牧野さんにとってのトレイルランニングは、仲間と楽しめるトレーニング兼レクリエーションという位置づけだ。ロード以上に得手不得手が明らかになるオフロードでは、走力とはまったく別のテクニックが問われる。そんなところがトレイルランニングの魅力だとか。


そんな牧野さんを誘って出かけたのは、斑尾高原に新設された「ジロ グラベル バイクパーク斑尾」。グラベルバイク専用のコースである。ここでキャンプ&マウンテンバイク、しかもeバイクを楽しもうという趣向だ。
トレイルライド用のeバイクで、いざパークへ!
牧野さんが乗るのは、ドイツのスポーツバイクブランド、corratec(コラテック)の「E-POWER X VERT CX」。BOSCHの新型マウンテンバイクユニット「Performance Line CX」を搭載したハードテイルのeマウンテンバイクである。
「日本で展開されているeマウンテンバイクの多くはクロスカントリーマウンテンバイクをベースにしたジオメトリ(寸法)ですが、『E-POWER X VERT CX』は日本オリジナルのジオメトリを採用し、トレイルライドを楽しめるように設計しました。ヘッドアングルを寝かせることで下りの安定性を、リアセンターを短くすることで旋回性を高めているのが特徴です。また、これに搭載した『Performance Line CX』はその時々の路面コンディションに応じて最適なトラクションを発揮するので、eバイクにありがちな不自然なアシスト感がありません。普通のマウンテンバイクに近い、自然な乗り心地が楽しめます」(corratecを担当する「グローブライド」の兼岡邦旭さん)

百戦錬磨のライダーでもある兼岡さんにガイドしてもらいながら、はじめてのマウンテンバイクに挑戦する。まずは乗り方から。上りではギアを軽くしてペダルを漕ぐ。下りでは立ち乗りが基本、ペダルを水平にして腰を浮かせる。膝や肘は軽く曲げてバランスをとるイメージで。目線は10メートル先を意識する。ブレーキは人差し指だけ、もしくは人差し指と中指で操作し、ブレーキを掛ける際は左右バランス良く。
自転車でオフロードを走るのは小学生以来、という牧野さん。果たしてはじめてのマウンテンバイク体験は……?

バイクでダートを駆け下りてみたら
スピードに乗ってコーナーに入るや、「これは面白い!」と、乗った瞬間から楽しそうな表情を見せる。ダートを駆け降りる疾走感と、eバイクならではのぐいぐいと坂道を登っていくパワーを体感し、マウンテンバイクの魅力に開眼した様子。
「『eバイクで坂を登る』というと、リフトに乗って上までアクセスする印象を持っていましたが、それが大間違い。サボったという罪悪感は一切ありません! ちゃんと自分でペダルを漕ぎつつも、いつもの3倍の出力で登っていく、そんなイメージです。つまり、同じ時間でもいつもより3倍長く登れて、下れる。電気のサポートを受けることで遊びの範囲が広がっていくと考えるなら、これこそいまの時代にフィットした、遊びを極める手段なのでは」


信越エリアに広がる、素晴らしいバイクフィールド
まったくのビギナーである牧野さんがこれほどの高揚感を味わえたのも、今回のフィールドとなったバイクパークのレベルが高いからだろう。「ジロ グラベル バイクパーク斑尾」は、オンロード、グラベル、シングルトラックなどさまざまな路面をミックスしたルートを走るサイクルイベント、「GRINDURO JAPAN」の初開催をきっかけに生まれた施設だ。長野県北部と新潟県にまたがる信越エリアではもともとトレイルランニングが盛んで、素晴らしいダートが長距離に渡って広がっていた。「GRINDURO JAPAN」の開催によってこのエリアにおける自転車のポテンシャルが、サイクリストにも一気に広まった、というわけ。

「斑尾高原ではハイカー、トレイルランナー、サイクリストと、異なるアクティビティを楽しむ方々が共存するフィールド作りを目指しています。キャンパーに人気の斑尾高原キャンピングパークに隣接するので、自転車という遊び道具を持ち込めばキャンプ&バイクという新しい文化を発信できるはず。新しいルールやガイドラインを考えながら、トレイルをもっと多彩に楽しめるような取り組みを進めていきます」(「ジロ グラベル バイクパーク斑尾」酒井さん)

大人がハマる最高の遊び道具
牧野さんが走ったのは、大草原の中をローラーコースターのように駆け下りる中級者向けルートと、信越エリアらしいブナ林を抜けるシングルトラックの2ルート。2本のコースを実走した感想は、「キャンプと自転車を組み合わせると、特にトレイルランナーにおすすめの、最高に贅沢な遊びになる!」


「タイトなコーナーが続く中級者向けルートではマウンテンバイクらしいスリルや躍動感を、トレイルランナーにもおなじみの、森の中のシングルトラックでは、バイクならではのスピード感と登りの快適さを味わいました。自然の中を走る楽しさはトレイルランニングそのまま、キツい登りまでも下りと同様に楽しめるのがいい。これならたとえ初心者でも、片道10kmのアップダウンのあるコースを快適に遊べそう」
牧野さんはつい、キャンプとランニングを組み合わせたくなるというが、テントを張った後にトレイルを真剣に走るとなると、トレイルランニングのパートがヘビーになりすぎ、キャンプを楽しむ余力がなくなる。
「その点、eバイクなら時間も体力もそこまで消費せずにフィールドで遊べるから、テントに戻って料理をしたり、音楽を聴いたり、近場の温泉を探したり、そんな余裕のある過ごし方ができそうです」

キャンプとeバイクの組み合わせの面白さは、日頃からアクティビティに触れている人にこそ伝わるはず、と牧野さん。未舗装のトレイルや林道を行くバイクには、いい年をした大人たちを童心に返してくれる魔法が備わっている。