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梅雨が明けると本格的な山シーズンが始まります。標高やアクティビティの種類に関わらず、自然を相手にするからには万が一を想定し、安全対策には気をつけたいところ。山のアクティビティを楽しんでいる人ならよく耳にする、山岳保険や捜索ヘリサービス ココヘリといった基本的な安全対策を改めて紹介します。

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近年の登山ブーム。その背景には、ギアの機能向上や情報入手のしやすさなどにより、山の存在がより身近になったことがあります。また以前と比べ、団体行動から少人数もしくは単独行動が増えたことも最近の山岳アクティビティの特徴のひとつです。

その一方で、楽しい側面ばかりが出回り、万が一への備えが足りていないことも事実。2020年はコロナ禍による外出自粛や訪日外国人の減少があったものの、過去4番目に多い2294件の山岳遭難が発生しています。

通常、遭難時の民間ヘリコプターは1分間1万円と言われており、捜索が長引けば経済的に大きな負担がかかります。また、遭難だけでなく落石などによる怪我、特殊な環境の中での他の登山者や携行品への損害など様々なリスクがあります。

自分だけでなく家族や知人のためにも、遭難対策制度や山岳保険、ココヘリへの入会といった「もしも」を想定した対策をしておくことが大切になります。

遭難対策制度と山岳保険

登山中の怪我、また他人を怪我させてしまったときの賠償、遭難捜索救助にかかった費用負担の軽減などが目的です。選ぶタイプは、大きく分けて①契約期間②アクティビティの内容で決めていきます。①契約期間は、長期契約タイプか単発で申し込みのできる短期契約タイプか、②アクティビティは、軽登山やハイキングか登攀(※)や雪山などの本格的な登山かに分けられます。

※登攀:ピッケル、アイゼン、ザイル、ハンマーなどの登山用具を使用し険しい岩山をよじ登ること。

日本山岳救助機構(略称 jRO)

まず紹介するのは、犬のマークが特徴的なjRO(ジロー)。トレイルランニングのレース会場で見たことのある読者も多いかもしれません。jROは会員の相互扶助によってなりたっている山岳遭難対策制度。会員で出しあう年会費で万が一遭難してしまった人とその家族を助ける、大きな「共助」のシステムです。

jROの特徴は捜索・救助に特化したシンプルな制度であるため、山岳保険や遭難対策制度の中では年会費が安いことです。軽登山タイプも本格登山タイプもひとつのプランでカバー。国内であればハイキングから雪山のスキーなど山をフィールドとするすべてのアクティビティが対象となるので、幅広いジャンルで山を楽しむ方におすすめです。

※前年の捜索・救助費用が、基本料金で賄えない際にオーバーした超過分を会員全員で均等に負担する制度。2020年度は300円。

会員になると山に関する講演や講習会にも参加ができます。

会員ではなくてもjRO公式サイトには「自救力アップ講座」と題して、山のグレーディングや国立公園の魅力、天気の読み方講座、安全講座などのコラムが充実しています。ぜひアクセスしてみましょう。

また、jROは保証内容が基本的に捜索・救助に特化しているので、個人賠償請求や携行品補償などが含まれません。ご自身が加入されているほかの保険と合わせて選んでみてはいかがでしょうか。

日本山岳救助機構合同会社(jRO ジロー) 
www.sangakujro.com/

モンベル

日本を代表するアウトドアブランドのモンベルは保険も扱っています。モンベルの保険の特徴はアウトドアスタイルに応じて内容や保険期間を選べることです。日帰りの軽登山や夏山のテント泊なのか、あるいは本格的な登攀なのかで選ぶ保険プランが異なります。

年間を通じて山岳アクティビティを楽しむ人は長期タイプがおすすめ。単発契約でも日帰りから6泊7日までに対応しており、出発当日に申し込むことができるのも嬉しいポイントです。

また、jROにはないケガによる医療費や持ち物の損害、他人に対する賠償責任なども補償するプランもあり、登山者行動に寄り添った内容になっているのはアウトドアブランドならです。長期タイプは店舗と公式サイト、短期タイプは公式サイトでのみ申し込みができます。

モンベル山岳保険 
hoken.montbell.jp/

捜索ヘリサービス ココヘリ

発信機能付き会員証。縦58mm、横39mm、厚さ12mmで大変コンパクト。右上から時計回りでSimpleプラン、Standardプラン サハラベージュ、Standardプラン マットブラック。キーホルダーとしても使え、ザックにつけている登山者も多い。

発信機能がついた会員証を利用した会員制捜索ヘリサービス。山岳保険との違いは、あくまで「見つけてもらうための会員制サービス」であることです。

登山計画書を出していれば捜索してもらえるのでは? と思うかもしれませんが、ココヘリのポイントは発信機機能がついた会員証端末から捜査隊が探知可能な電波が常時発信されており、要救助者の居場所を素早く正確に把握できるということ。

つまり「72時間の壁」(※)の前に発見でき、大幅な生存率の向上に貢献するシステムです。

※72時間の壁:災害発生後72時間を過ぎると生存率が急激に下がることから、救助活動の現場では72時間以内の救助が勝負と言われています。

また、自ら携帯電話で救助ヘリを呼んだとしても、樹々や雪などで上空からでは要救助者の確認が難しいケースが多いのが現実。ココヘリの発信機は、視界が遮られていても場所の特定が素早くできることがポイントです。

上記年会費に別途入会費3,300円(税込)必要ですが、8月31日までご友人紹介や上記で紹介したjRO会員優遇で入会費無料キャンペーンが行われています。 

居場所特定のメリットは「72時間の壁」だけではありません。

万が一遭難者が見つからなかった場合、「死亡」ではなく「失踪」扱いとなりすぐに生命保険が適用されません。入会者へのアンケートで入会理由「家族のため」が50%以上を占めているのはこのような理由がありそうです。

また、捜索時の負担軽減や早期発見による遭難者の生存率の向上のため、ココヘリを義務化しているトレイルランニングレースも増えています。

2021年度ココヘリ義務化トレイルランニングレース
ニセコアドベンチャーレース、TJAR2020、S-Mountain The 4100D マウンテントレイルin野沢、美ヶ原トレイル、峨山道トレイルラン、ひろしま恐羅漢トレイル、甲州アルプスオートルートチャレンジ 第5回大会、Nagi Peaks Tough Trail Challenge 2021(延期)、奥四万十トレイルレース2021 in 松葉川(延期)

ただし、トレイルランニングにおいてはレースよりも練習時の方が危険性が高いことも覚えておかなければいけません。

THE NORTH FACEデザインのココヘリ会員証。ココヘリの年会費から、毎年1%が安全登山を守る取り組みへ寄付されるチャリティモデルです。Standardプランのみ。

ココヘリ 
www.cocoheli.com/

ここまで山岳保険とココヘリの紹介をしてきましたが、山に入る際に忘れてはいけないのが登山計画と登山届です。最近では、登山計画を作ったあとにそのままWEB上で登山届を提出できるコンパスというサービスもあるのでぜひ活用してみましょう。

また、家族や友人に行き先やルート、下山時間を知らせておくことも救助隊への素早い連絡のために大変重要になるので山に入る際は忘れずに。

コンパス 
www.mt-compass.com/

トレイルランニング、低山のハイキング、本格的な登山。山での楽しみ方は人それぞれ。自分のスタイルを探しながら、その楽しみに合った安全対策の知識を身につけ楽しい山岳ライフにしていきましょう!