数万人のランナーが都心を走り抜ける大イベント、東京マラソンが終わり、さらには、3/11の名古屋マラソン、4/15には長野マラソンと春先のマラソン・シーズンが続いていきます。みなさんの中にも、大会に向けてトレーニングを続けている人や、今年フルマラソンに初挑戦するという人も多いのではないでしょうか?
マラソン初挑戦の人は、期待と不安の入り交じった緊張感を味わいながら、フレッシュな気分で大会の日を迎えることになるでしょう。ですがランニングを続けていくうちに、いつしかタイムが頭打ちになってしまった、トレーニング方法やフォームを改善したいけどよく分からない、距離を伸ばすとすぐに故障してしまう、などといった経験者ならではの悩みも良く聞きます。
onyourmarkでは、走力アップを目指すランナーたちが日頃から感じているランニングの「ナゾ」を解くヒントを探して、onyourmarkユーザーのkkwbrさんと一緒に、東京・銀座にあるアシックス・ランニング・ラボへ取材に行ってきました。実際に測定を受けたkkwbrさんの体験を通して、リポートをお届けします。
<ランニング・ラボで測定すること>
ランニング・ラボでは、ランニング障害の予防やパフォーマンス向上といった視点から、ランニング能力や、足形、フォーム、全身持久力などといった測定を行います。ランニングの能力測定は次の6つの項目で行われました。
筋力測定
体組成測定
アライメント測定
足形測定
ランニング・フォーム測定
全身持久力測定
これらの測定で、総合的なランニング能力を知ることが出来るそうです。
<筋力測定>
筋力測定は、等速性筋力測定機を使ってひざの曲げ伸ばしを行い、ふとももの前側(大腿四頭筋)と、後ろ側(ハムストリングス)の体重1kg当たりの筋力を測定します。
kkwbrさんは大腿四頭筋に比べてハムストリングスのほうが弱いことが分かりました。大腿四頭筋とハムストリングスの筋力のバランスが悪いと、筋肉や腱に負担がかかってしまい障害のリスクが高まるそうです。これには、臀部(大臀筋や中臀筋)やハムストリングスを強化するために、レッグランジや片足スクワットなどの筋力トレーニングが有効になるそうです。
<プロネーションと足形>
3次元足型計測器を使って、足の長さ、幅、土踏まずのアーチの高さ、かかとの傾きなど足形を立体的に計測します。足の形状や、プロネーションと呼ばれる足の回内運動など、自分の足の特徴を良く知ることで、足に合ったシューズ選びが出来るだけでなく、それによって故障のリスクも減らすことが出来るそうです。
kkwbrさんの足囲は、左が「E」でやや細め、右が「2E」で標準、また右足のアーチが低く、着地の衝撃を和らげる働きが弱いということが分かりました。その結果、kkwbrさんに最適なモデルは「GEL-DS TRAINER 16」でした。
<ランニング・フォーム測定と全身持久力測定>
ランニング・フォームの測定では、重心、腰の高さ、足の運び、着地の様子(位置や角度)、プロネーション(足の回内運動)の度合い、ピッチやストライドなどを細かくモニターしました。
kkwbrさんのフォームは、ストライド型で力強い走りという評価。フォームの改善点としては、
(1)着地の位置が内側に入っていて上体のふらつきが大きい
→ 足を真っ直ぐに振り出す
(2)腕の振りが身体の前で大きく推進力に活かされていない
→ 肩をリラックスさせ肘から後ろに引く
(3)脚が後ろに流れていて、前方への腿の振り出しが不十分
→ 地面を蹴るのではなく、くるぶし位のハードルをまたぐようなつもりで腿を前に振り出し、その上に腰を乗せていく
というアドバイスを受けることが出来ました。
(1)については、kkwbrさんは以前ランニング本で「一本の線をなぞるように」というのを読んで、意識的に足を内側に着地させていたようです。ランニング・ラボでは、回旋した骨盤に自然に足が真っ直ぐ出てくるのが理想のフォームで、足だけ内側に入れると膝付近を中心に負担が掛かる可能性もあるためフォームを改善したほうが良いというアドバイスでした。普段、自分ではフォームを見ることは出来ないので、客観的で専門的な助言はかなり参考になったと言います。
<全身持久力測定とAT>
全身持久力測定は、緩やかなスピードから始まり一定時間ごとに少しずつスピードが上がっていくトレッドミルで行われます。呼吸に含まれる酸素と二酸化炭素の量を測定し、呼吸器・循環器系の能力から全身持久力を評価するというもの。ここでは、AT(=アネロビック・スレッショルド)という値を見つけることが目的でした。
ATというのは、感覚で言えば、快適〜少しきつい、くらいのレベル。理論上は、このペースならどこまででも走り続けられるという値です(筋肉の収縮とエネルギーが続くならば)。市民ランナーの場合は、おおよそマラソン・ペースに相当するので、この値からマラソンの完走タイムが予測出来るというのです。また、最大酸素摂取量(VO2Max)まで追い込まなくても全身持久力が測定出来るので、安全面でも大きなメリットがあると感じました。
<測定結果から分かったこと>
全身持久力測定では、kkwbrさんのATのペースは5’20”/km、心拍数は161 bpm/mという結果になりました。このATの値から予測されたフルマラソンの完走タイムは3時間53分。さらに、このATペースを意識したトレーニング方法や、レースに向けたコンディショニングの方法など、トレーニングに関する様々なことを学ぶことが出来ました。
また、故障のリスクを減らし、パフォーマンスを効率良く向上させるためには、ランニング練習だけでなく、筋力のバランスをとることや、柔軟性を高めること、関節の可動域を広げることも重要ということが分かりました。ストレッチや補強の筋力トレーニングも有効ということですね。
ランニング・ラボで行われた測定は、どれも自分では行えないものばかりで、客観的にランナーの特徴を知ることが出来るというとても貴重な体験でした。安全に楽しく、効率良く走力アップを目指すためには、まずは自分を良く知ることが大切ということですね。
今回はランニング・ラボを取材しましたが、自分の足にあうシューズを探したい、という人には、アシックス・ストアで3Dの足形測定を行うことが出来るそうなので、まずはそこからトライしてみるのも良いかもしれません。
(文 肥後徳浩 / 撮影 松田正臣)
kkwbrさん自身によるレポート・コラムはこちら
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フルマラソンに向けたトレーニングについて(1)「自分のペースをつかむ」
フルマラソンに向けたトレーニングについて(2)「ATの測定」