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名前:オオカミの護符
著者:小倉美惠子
発行:新潮社
発売日:2011年12月16日
ページ数:206ページ
価格:1,575円
関連のスポーツ:トレッキング、トレイルランニング

今週はお盆休みで帰省先や旅先からこの記事をご覧になっている方も多いかも知れません。そこで、この一週間はMARK PEOPLEをお休みして、ゆっくり時間が取れるこの時期だからこそ読んで欲しい本=MARK BOOK をまとめてご紹介します。本日は登山やトレイルランニングをする方なら馴染みのある山岳信仰について改めて考えさせてくれる『オオカミの護符』です。

神奈川県川崎市宮前区といえば、人口20万を抱える東京のベッドタウン。その中でも土橋という土地は、田園都市線では鷺宮駅やたまプラーザ駅辺りに位置し、東名高速道路の川崎インターなども擁する交通の要衝でもあります。
しかし高度成長期の開発が始まるまでは、ここはわずか50世帯の村だったといいます。今回ご紹介する『オオカミの護符(ごふ)』の著者である小倉美惠子さんが、この土橋で代々続く農家に生まれたのは1962年のこと。伝統的な村の雰囲気と新興の宅地開発が交錯する狭間の時期に、多感な子ども時代を過ごしました。

なんでも自分たちの手で作り、加工し、消費する“お百姓”であった祖父母に対する敬意と愛情に導かれるようにして、著者はこの土地の伝統習俗に目を向けるようになります。そこでひときわ目を惹いたのが古い土倉に貼られた”オイヌさま”の護符でした。この護符を起点として始まる謎解きの旅は、宮前区土橋を含む多摩丘陵から御岳山(みたけさん 標高929m)へと連なる古代武蔵國の姿、そして山と里の結びつきを支えてきた”講“というシステムを浮かび上がらせます。

連載『僕たちと山』でもご紹介している通り、onyourmarkのユーザーの皆さんが身近に感じている近郊の山々には、近代登山が始まる以前から信仰の対象として、また生活の糧を得る場として、人々が足を踏み入れていました。そうした山のいわれを知って、改めて馴染みの山に登ることで、新しい発見ができるのではないでしょうか。

(文 mark編集部)