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(写真 松本昇大 / 文 倉石綾子)

 初めてのフルマラソンであるJALホノルルマラソン2013を翌月に控え、いよいよトレーニングも佳境に入ってきた田中美保さん。中野ジェームズ修一さんが「最終追い込み月間」とテーマを掲げた先月の10月は初の長距離走に挑みました。

<状況>
 9月に入ってからはほぼ連日、6〜10kmの走り込みを行っていた田中さん。今ではすっかり、日々の生活習慣にランニングが根づいたようです。「10kmはともかく、5kmは余裕で走れるようになった」というのも練習の賜物でしょう。また、先月から始めたボディメイクのための筋力トレーニングには、さらに2種類のトレーニングを追加。安定した走りをかなえるためにハムストリングスと臀部のトレーニングを集中して行っています。

 順調に距離を積み、筋力トレーニングをストイックに続けてきた田中さんですが、9月後半に仕事が立て込み、半月ほどまったく走れない状況が続いてしまいました。市民ランナーなら誰しもが一度は経験する状況ですが、ここからいかに挽回するかがフルマラソン挑戦への鍵となってきます。

初めてのロング走

 追い込み月間とした10月の課題は、ずばりロング走。フルマラソン前に20〜30km程度の走り込みで調整を行います。

「一般のランナーには30km以上の走り込みは不要です。30km以上の距離を走ることで障害発生率が高くなりますから。田中さんの現時点での目標は、本番1カ月以上前に30km走を1本行うことですが、その前段階としてまずは20km走に挑戦してもらいます」

 一般的に、フルマラソンを目指す女性ランナーは1カ月に1本程度の割合で30km走を行うことが効果的、と中野さん。12月前半のレースならば、11月頭までに月1本の割合で2、3回の30km走を行うことが理想的なのだそう。
本番まであと2カ月、追い込み時期に入った田中さんのために、中野さんは「20km走を月に1回、そして11月頭までに30km走を1回」という計画を立てました。ちなみに30km走は回復に時間がかかる可能性が高いので、レースまで1カ月の回復期間を残して行うようにしましょう。

▶ここで中野さんからアドバイス“長距離を走るにあたっての注意事項”
 初心者が長距離を走る場合、大切なのは「どこを」走るか。20kmに初めてトライする場合、完全にフラットなトラックを走ることがおすすめです。

「田中さんの場合、オーバープロネーション気味(注:着地の際、足首の関節位置が過度に内側に倒れ込むこと。ランナーの多くにその傾向があると言われている。)なので、着地面が不安定だと故障してしまう可能性があります。ですから完全にフラットなトラックで走り込みを行うことにしました。ここで1回、20kmを走っておくと足が出来てきますから、やがて不安定な地面でも走ることができるようになります」

 筋肉量が少ない人はトレイルなどを走ると膝関節を傷める可能性があるので注意が必要です。

「また、トラックで走ることはメンタル面の強化にもつながります」

 たしかに、まったく景色の変わらないトラックを何十周も走るのは精神的にかなりキツい。中野さんの考えでは「初めに辛い走り込みを行っておけば、後々が楽」なのだそう。

本番を見越してギアのチェックを

 長い距離を走るにあたり、押さえるべきポイントがもう一つあります。それはシューズが足に合っているかどうかという点。

「10kmは問題なくとも、20kmになると突然靴擦れになったり、むくみや炎症を起こしたりというケースはままあります。シューズとソックスの相性、ソックスはずり落ちてこないか、ウエアがすれないかどうかなどギア関係一式も合わせてチェックしましょう」

 こうした課題を抱え、10月半ばのある日、千葉県にあるトラックで400m×50周のロング走を行いました。

「昨晩はあまり眠れなかった」という田中さん。普段は数人の仲間と走っているそうですが、昨日ははじめて一人でのランニングにトライしました。
「3kmは楽しく走れるけど、10kmはなかなか苦痛」という田中さんに、中野さんは「仕事前にちょっと走るなら3、4kmの距離が適当だし、それをコンスタンスに続けるほうが身体にはいいんです」とアドバイス。

 フルマラソンと言う目標さえなければ、毎日3、4kmのファンランを続けることが健康のためにはいいようなんですね。

 何はともあれ、田中さん自身の今日の目標は「とにかく20kmという距離を一度経験してみたい」というもの。途中で歩いてしまうかもしれないけれど、その距離感を体験するのがこの日の課題です。一方で中野さんは「でれきば、どんなに遅くてもかまわないから20kmを走り続けてもらいたい」と話します。

 さて初めての長距離は初心者ランナーの田中さんにどんな変化をもたらすでしょうか?

ロング走をふまえて次回への課題

 20kmを走り終えての感想は「最後の5、6kmがとにかく辛くて、途中歩いてしまいました」。とはいえ、「20kmという距離を体験し、次回へつながる課題や反省点も見えてきた、意義深いトレーニングだった」と中野さんも及第点を与える内容でした。何よりも、20kmを走っても、膝にはまったく違和感を感じなかったことは大収穫と言えるでしょう。オーバープロネーションを予防するシューズを慎重に選んだこと、またフラットなトラックで走ったことが功を奏したようです。

 膝にも痛みがないということで、トレーニング後は通常通りのストレッチを一通り行いました。もし、この時に筋肉に痛みがあれば必要以上にストレッチせず、すぐに氷などで冷やすことが大切です。

「3時間近く動き続けたことは人生で初めての経験。そういう意味で自分の中では感慨深い練習でした。とはいえ、途中で歩いてしまったのが悔しいので来週リベンジします!」と、田中さんは2週続けての20km走チャレンジ宣言。

 20km走を2本こなして、次なる最終ステップでは最終調整となる30km走にトライ。また、本番直前の過ごし方のコツなどもお伝えします。

中野ジェームズ修一(ナカノ・ジェームズ・シュウイチ)
メンタル・フィジカル両面のアドバイスを行うパーソナルトレーナー。(有)スポーツモチベーション代表取締役。また執筆・監修・講演活動も行う。 著書も多数。『下半身に筋肉をつけると「太らない」「疲れない」』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。最新刊は、『マラソンは最小限の練習で速くなる! 忙しい人の自己ベスト更新術』(ソフトバンク新書)などがある。

田中美保(タナカ・ミホ)
モデル。98年『セブンティーン』で本格的にモデル活動をスタート。その後『non-no』や『MORE』や『mina』など数々の女性誌に出演。本年度12月に開催されるJALホノルルマラソン完走を目指してトレーニング中。