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アメリカのロングトレイルの代表ジョン・ミューア・トレイル(JMT)。このスルーハイクに挑戦したヤマモトマサシさん。前回は出発前の準備編をお届けしたが、今回はいよいよトレイルに足を踏み入れる。シーズンの入り口で雪の多いトレイルやトラブルに遭いながらも持ち前のポジティブさで乗り越えていく彼のリポート第二弾。

2016/06/02 DAY0
JMTスタート前日の今日は※トレイルエンジェルのテッドさんと合流するために電車を乗り継いでサンフランシスコからモデストへ。昨日は夜にサンフランシスコに到着したが時差ボケで結局ほとんど寝れなかった。

※アメリカのロングトレイルにはトレイルエンジェルと呼ばれるハイカーを無償で助けてくれる人たちがいる。ハイカーをトレイルヘッドまで送り届けてくれたり、時には宿泊場所も提供してくれる。

昼過ぎにモデストへ到着。迎えに来てくれたテッドさんと合流してまずは明日からの必要な食料を揃えに現地のスーパーへ。

彼のアドバイスも聞きながら20日分の食料を購入しテッドさんの家へ。これで足りているのか不安だが、前半は食料を購入可能なポイントもあるし気にしないことにして、仕分けした食料の半分は途中の補給ポイントに送った。

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テッドさんもかつてJMTを歩いたことがあるそうで(なんと無補給、その頃はパーミットもなかったそうだ)ハイキングの話やJMTの話をしながら終始リラックスした時間を過ごさせてもらう。

2016/06/03 DAY1
6時起床。起きるとテッドさん夫妻が朝ごはんを作ってくれていた。ありがたい。しっかり朝ごはんもいただいてYARTS(Yosemite Area Regional Transportation System)のバス停へ。

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テッドさんとはここでお別れ。いざヨセミテバレーへ。

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バスは3時間ほどでヨセミテバレーに到着。

何をおいてもまずはパーミットを発券しにWilderness Centerへ。僕が日本でしたのはあくまで予約。発券しなければそのパーミットはキャンセル分として回されてる。

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レンジャーからレギュレーションやベアキャニスターなど必携品の有無の確認を受けて無事パーミットを取得することができた。ついでにハーフドーム登頂のパーミットが取得可能か確認すると大丈夫とのことだったのでそちらも一緒に取得した。

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これで僕も正真正銘のJMTハイカー。後はゴールのホイットニーを目指して歩くだけだ。このままスタートできるとのことなのでトレイルヘッドのハッピーアイルへ。

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トレイルヘッドにある道標。ここからゴールのホイットニーまで211マイル(340km)。

11時頃ハッピーアイルを出発。今日はリトル・ヨセミテ・バレーのキャンプサイトまで。そんなに距離はないので体慣らしのつもりで歩く。ネヴァダフォールへと続くミストトレイルは観光客やデイハイカー達でいっぱいだ。軽装な彼らと同じペースで登っていく。歩き始めると意外と約16kgあるザックの重さが気にならずにいつものペースで歩けた。

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ミストトレイルから見えたハーフドーム、リバティキャップ、ネヴァダフォール

このヨセミテ周辺の風景だけでも圧倒される。ガシガシ登っていくとあっという間に今日の目的地のリトル・ヨセミテ・バレーに到着。

到着するとすでにいくつかテントが張ってある。ここはハーフドームの手前に位置するためJMTハイカーだけでなくハーフドーム登頂への中継地点として宿泊する人も多い。キャンプだけをしに来た人もいるみたいで、どうりでPermitが取れないはずだ。

カリフォルニアは日照時間も長く20時過ぎまで明るい。まだ15時で時間もあるので、テント設営後は高度順応も兼ねてハーフドームへピストンで登ることに。

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ハーフドームの頂上へは「Cables」と呼ばれるワイヤーを頼りに登る。

最後のCables を超えて2時間で頂上へ。よくこんなところに登山道を通したもんだ。かなり軽装の観光客もいて少し驚いた。

ハーフドームへ登る途中、すれ違う男性に声をかけると何と73歳!今日でハイキングをやめるつもりだったが、ハーフドームに登って気が変わったらしくまだまだ歩き続けるそうだ。「君もJMT歩ききれよ!」と言われてしまったのでリタイアできないな。


キャンプサイト:リトル・ヨセミテ・バレー
移動距離:4.5マイル + 3.3マイル(ハーフドーム往復)
残り:206.5マイル

2016/6/4 DAY2
6時起床、7時出発

昨日歩いておいたおかげか調子もよさそうなので、予定していたサンライズより先のカセドラル・レイクを目指すことにした。

今日からがJMTは本番だ。サンライズを目指して歩いて行くサンライズまではおよそ3,500ft(約1,000m)の登り。

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歩き出してすぐに昨日サンライズでキャンプをしたというハイカーとすれ違った。彼によると、この先は雪だらけらしい。気温は高いので溶けてればいいなと淡い期待を抱いていたが、やはりかなり残っているみたいだ。

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8,500ftを超えた辺りから情報通り雪が増えてきた。ところどころ雪がトレイルを覆ってしまっているので正しいルートがわかりづらい。地図とGPSで方向を確認しながらきつい登りを進んでいく。

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昼過ぎサンライズ到着。この辺りも本来はMeadowと呼ばれる草原が広がっているはずだが今は完全に雪原。

お昼を食べてまだまだ時間はあるので予定通りカセドラル・レイクを目指して出発。お昼以降は雪が溶け始めて一気に歩きにくくなった。踏み抜きとトレイルロストに四苦八苦しながら歩いた。

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18時頃、今日の目的地のカセドラル・レイクに到着。なんと池もまだ凍っていた。湖畔に何とかスペースを見つけてこの日はそこにテントを張った。

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カセドラル・レイク付近
移動距離:12.6マイル
残り:206.5マイル

2016/6/5 DAY3
5時起床、6時出発

昨晩、事件が起きた。ザックのサイドポケットに入れておいた浄水器が見当たらない。どうやら昨日トレイルのどこかで落としてしまったらしい。

この先のマンモス・レイクまで行けば買えるだろうし、幸い雪解け水は大量にあるので楽観的に捉えて進むことに。手持ちの水は夜のうちに煮沸しておいた。

ここからトゥオルミ・メドウズへは下るだけ。トレイルも昨日と違って歩きやすく、あっという間にトゥオルミ・メドーに到着。

トゥオルミ・メドウズにはタイオガ・ロードという国道が通っていて車でアクセス可能でオートキャンプ場や小さな売店がある。

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キャンプ場はまだクローズ。売店はオープンしていた。

小さいながらも食料やちょっとしたギアも置いてある。シーズンであれば臨時の郵便局がオープンして食料などの荷物を受取ることも可能。売店を探してみたが、残念ながら浄水器は売っていなかった。この先の生水生活を覚悟してリンゴと煮沸用に追加のガスを購入。

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売店ではおいしいクラフトビールも沢山売っている。

当初の予定ではここでキャンプの予定だったが、キャンプ場もオープンしていないし浄水器問題もあるので進めるだけ進むことにしてドナヒュー・パスを目指すことにした。

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ライル・キャニオンと呼ばれる川沿いに広がる谷を歩いて行く。とにかく綺麗で歩きやすいトレイルなのでどんどん進む。

ここからは北上してきたPCTハイカーともすれ違うようになる。PCTハイカーはすでに2ヶ月近く歩いてるのでハイカートラッシュ感がでていてすぐにわかる。これまでとは違う楽しみが増えた。

15時頃、ドナヒュー・パスの登り口に到着。ここでやめるか悩むがドナヒュー・パスを超えることにする。がこれが大失敗だった。

10,000ftまでは雪もなく順調に進んだが雪が出てきた途端一気に進みが遅くなった。トレイルが見えないので直登する機会が多くなった上に、昼になって緩んだ雪で全然前に進めない。

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流石に心が折れてキャンプできそうな場所を探すが雪だらけでできそうなところがなかなか見つからない。

ふらふらでPass(峠)の付近まで来たところでやっとテントが張れそうな場所を見つけ今日はそこで寝ることにする。風がないのはラッキーだった。

今日は流石にクタクタ。雪の深さをなめていた。今後、Pass超えは午前中にやらないとダメだなーと反省した。

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ドナヒュー・パスの上で見た星空は本当に綺麗だった。


ドナヒュー・パス付近
移動距離:18.6マイル
残り:175.3マイル

2016/6/6 DAY4
5:30起床 6:30出発

Passの上なので寒いかと思ったが意外と寒くなく熟睡。
今日はドナヒュー・パスを降りてアイランド・パスを超えたら、サウザン・アイランド・レイクを代表とする氷河湖が連続する美しいエリアに突入する。
とても楽しみにしていたセクションだ。

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ヨセミテ国立公園は終了。この先はインヨー・ナショナルフォレストとなる。

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雪は朝の固いうちなら歩きやすい。一気にドナヒュー・パスを下ってアイランド・パスを登る。

今日もPCTハイカー数人とすれ違う。彼らはこれからドナヒュー・パスを登るのでお互いこの先の情報を交換しあう。

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アイランド・パスを超え下って行くとサウザン・アイランド・レイクが見えてきた。湖面は雪と氷で真っ白だがとても綺麗。ふと誰かと分かち合いたいと思うが一人なのでどうしようもない。

ここで一旦PCTとJMTはルートが別れるので、この先しばらくはPCTハイカーと会わないのが残念だ。

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次々現れる美しい湖に心奪われる。中でもガーネット・レイクの美しさは素晴らしかった。

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この日はロザリー・レイクの湖畔にテントを張ることにした。初めてストーンサークルがあるテン場。10,000ft以下のテン場でストーンサークルがあれば焚き火ができる。せっかくなので釣りもしてみるが釣れなかった。※7月以降はレギュレーションが変わり、いかなる標高でも焚き火が禁止となった。

明日は午前中にはReds Meadowに到着できるだろう。マンモス・レイクまで行けば生水生活にも終止符を打てる。


ロザリー・レイク付近
移動距離:15マイル
残り:160.3マイル

2016/6/7 DAY5
5時起床 6時出発

今日はレッズ・メドウまでほぼ下り。10マイルもないので午前中で着くだろう。レッズ・メドウにはストアもあるし、車で街へ行ける。シーズンならバスがあるらしいが、恐らくまだ出てないのでヒッチハイクすることになるだろう。
ちょうど街も恋しくなってきたところだった。今日は街で泊まりたい。

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昼まで歩けば今日のハイキングは終わりなので足取りも軽い。休憩しないでどんどん標高を下げていく。

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トレイルマジック?テキーラの瓶が置いてあった。新品だったがテキーラの気分ではなかったので飲まなかった。

デビルス・ポストパイルが向こうに見える。この辺りでPCTルートとまた合流するのでPCTハイカーとすれ違う。

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すれ違った彼らは親子でお父さんがJMTのノースバウンダー、娘さんはPCTハイカーで途中合流して一緒に歩いているそうだ。

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10:30頃、レッド・メドウへ抜ける分岐に到着した。Cold Beerの文字を見た途端ビールの口に。早く飲みたくて仕方ない。バスはないだろうけどひとまずストアの方へ。しかし、なんだか様子がおかしい。閑散としていて人が全くいない。チェーンソーで作業中の人が一人いるだけだ。ストアを覗いてみるとCLOSEDの文字。

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作業中の人に声をかけて聞いてみたところ、レッド・メドウはまだオープン前で来る人はほぼいない、もしマンモス・レイクへ行くのであれば、ここからオフトレイルで7.2マイル先のマンモス・パスウを抜けてホースシュー・レイクまで行けばたくさん車があるという。

ここでハイキングを終えるつもりで歩いてきただけにだいぶ心が折れた。浄水器のこともあって行くしか選択肢がないので信じて進むことに。

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3.6マイルはJMTルートを進む。嘗て山火事があったエリアのようで何とも不思議な景色が続く。

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オフトレイルは3.6マイル。ここから2,000ft近くの登り。あまり人が通っていないので雪が残るところはトレースがなく、オフトレイルはGPSも用意していなかったのでトレイルを見失うことも多く苦労した。

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4時間かけて何とかオフトレイルを抜けてホースシュー・レイクに到着。情報通り自転車やトレッキングを楽しむ沢山の観光客がいて、重装備の自分が何だか恥ずかしく思えたり。

マンモス・レイクはハイカーが沢山訪れるのでとてもハイカーフレンドリー。トレイルを抜けて道路をサムズアップしながら、ふらふら歩いているとすぐに車が止まってくれて街まで連れいていってくれた。

マンモス・レイクは大きなスーパーもあるのでここで少しリサプライ。食料計画を少し見直して足りないものを購入した。宿で久々のシャワーと洗濯もしてリフレッシュ。

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浄水器も無事手に入った。


マンモス・レイク宿泊
移動距離: 11.3マイル + 3.6マイル(マンモス・パス)
残り:148.9マイル

『会社員が挑戦する!ジョン・ミューア・トレイル スルーハイク03』に続きます

ヤマモト・マサシ
川崎のグループラン&バイクコミュニティ KAWASAKI BICYCLE & RUNNING COMPANY主催、TEAM JET所属。トレイルランニング、ハイキング、ファストパッキング……なんでも全力で楽しみつくしたい社会人。週末を充実させるために日々奮闘中。JMTもその一つ。