mark08号の《第2特集 大切なヒトと過ごすアウトドア》から「背負子で楽しむ親子ハイク PLAY WITH CHILD IN NATURE」を一部抜粋してお届けします。本誌ではさらに子連れ登山の必需品や背負子ハイカーにオススメのコースをご紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
自然の中には、そこかしこにコミュニケーションの種が転がっている。それらを拾い集めれば、自然な形で子供と会話が弾み、親子の絆は一層深まる。背負子を使ったハイキングで、子供の心と言葉を育む “良質な体験“を。
(文 黒澤祐美 / mont-bell写真 鈴木泰之 / イラスト 服部あさ美)
幼い子供の言葉の吸収力には驚かされる。ハイカーとすれ違えば「コンニチハ」と大人を真似、髪がなびけば「カゼ」を感じ、川の水に手を浸せば「チメタイ(冷たい)」と笑う。自らの体験を実感として認識し、言葉として必死に取り込もうとする姿はなんとも愛おしく、親として喜びを感じる瞬間だ。こうした成長を肌で感じられる場所の一つが山であり、幼い子供との登山を可能にするのが登山用のベビーキャリア(以下・背負子)である。
背負子とは、子供が座るシートと荷物を入れる収納スペースが一体化したもの。街中の公園や里山程度であればいわゆる〝抱っこ紐〞でも不便はないが、山となれば話は別だ。フレームやパットに保護された背負子は安全性が高く、安心感もある。一緒に荷物を背負えるので、両手が空くのもありがたい。子供の体重を考えると荷物は少しでも軽くしたくなるが、準備は万全に。なぜなら子供の機嫌は山の天気のようにコロコロと変わり、不測の事態が割と頻繁に起こるため。万が一を考えて、計画にも余裕を持とう。ルートは迷いにくいピストンコース、あるいは途中で下山道があるコースを選ぶのが基本。より高い景色を求めるなら、ロープウェイである程度の標高を稼ぎ、そこから1〜2時間程度で山頂に辿りつけるコースもオススメだ。
その分、山の上では休憩時間をたっぷり確保したい。シートを広げてまずはゴロン。山の空気をたっぷり吸い込み、空を見上げる。歩き始めたばかりの1〜2歳児と一緒なら、不整地に裸足で立たせてみるのもいいだろう。いつもと違う足裏の感触に子供はケラケラと笑い出す。遊びの幅がグンと広がるのは、ある程度コミュニケーションが取れるようになった3歳くらいから。綺麗な落ち葉を拾い集めてみたり、スケッチブックにその瞬間の気持ちを表す色を塗ってみたり、大声で歌ってみたり……。親も童心に返る瞬間だ。
お弁当の時間も楽しみの一つ。おにぎりやサンドイッチを頬張るのもいいけれど、より山気分を満喫したければバーナーを使った山飯を。ただし子供はじっとしていられない。火を使うなら、短時間で。イチオシは『ULTRALUNCH』のビバークレーション。お湯を沸かして、味付きの米フレークを入れ、2分待てばできあがり。あっという間にホカホカご飯を食べられる。
こうして山の上でゆっくりと過ごせるのは、子供と一緒だからこそ。子供を授かったことでスポーツから足が遠のいてしまったお母さん、平日は忙しく子供とあまりコミュニケーションがとれていないお父さん。背負子というツールさえ使えば、月齢が低い子を連れてでも登山ができることを思い出してほしい。子供が一人で歩ききれるようになったら、また違った楽しみが待っている。けれど〝背中で眠ってくれる時期〞はほんの一瞬。心と言葉が著しく成長するこの瞬間を、自然のなかで過ごしてみてはいかがだろう。
mont-bell Baby Carrier /ベビーキャリア
生後約9カ月〜3歳(身長約90cm)までの子供を背負える自立式キャリア。子供の顔が当たる部分には通気性に優れた3Dメッシュを使用し、取り外して洗濯もできる。親の身長に合わせ背面長を調節できるバックパネルを搭載。ネックピローは標準装備。適応体重9〜16kg、重量2.24kg、容量26L。¥18,800/モンベル・カスタマー・サービス
osprey POCO AG /ポコAG
折りたたみ式の軽量フレーム、長さ調整可能なあぶみ、フレームとパッドに囲まれたチャイルドシートと基本的な安全性能をしっかり完備。加えて、子供のオモチャやおしゃぶりをつけられるトイアタッチメントループ、素早くセットできるサンシェード搭載と細かい機能も。適応体重18kgまで、重量3.13kg、容量20L。¥28,000/ロストアロー
macpac Vamoose /バムース
フロントの収納部分は取り外して小型のバックパックとして使用できるため、子供が成長してからも長く使える。日射しや虫の侵入を軽減するソンブレロと、子供の頭から本体全体を覆うことができるレインボーが付属。汗で汚れやすいハーネスとヘッドパッドは洗濯可。適応体重20kgまで、重量3.91kg、容量19L。¥45,000/ゴールドウイン
deuter Kid Comfort 2 /キッドコンフォートⅡ
サイドが開く仕様なので、子供が自分でまたげて乗り降りが簡単。クマの人形(付属品)が入ったサイドポケットは、タオルや水筒などサッと取り出したいものを収納するのに便利。ハイドレーション用ポケット搭載で、荷物を下ろさずに水分補給ができるのも嬉しい。耐重量22kgまで、重量3.25kg、容量16L。¥34,000/イワタニ・プリムス
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