万有引力の法則の提唱者として知られる物理学者アイザック・ニュートンは「もし私が遠くを見ていたなら、それは巨人の肩の上に立っていたからだ」という言葉を残した。「巨人の肩に立つ」とは人類の英知の積み重ねを踏まえるといった意味だが、学問のみならずスポーツの世界でもそれはあり得る。次世代アスリートのステップとなり、彼らがモチベーションを高めて新たな高みを目指すきっかけとなる5人の偉業を振り返る。
(イラスト 竹田匡志 / 文 井上健二)
20世紀半ばまで人間は1マイル4分を切って走ることは決してできないとされてきた。
1923年、フィンランドのパーヴォ・ヌルミが37年ぶりに最速の4分10秒3で走って以来、記録更新は途絶えた。
それに挑んだのが、イギリス生まれのロジャー・バニスター。
バニスターは科学的なトレーニングを積み、2名のチームメイトにペースメーカーを依頼。
1954年5月6日、オックスフォード大学のトラックで1マイルを3分59秒4で駆け抜けた。
このときバニスターは「わがあとは洪水となれ」と予言したが、7週間後にはオーストラリアのジョン・ランディが3分58秒00で走り、彼を含めて1年以内に23人ものランナーが4分を切って走る。
この不思議な現象は、不可能という思い込みが人間の限界を作り、可能だという信念が限界を押し広げるという意味で「ロジャー・バニスター効果」と呼ばれる。
その後バニスターは医師として活躍し、2018年3月に88歳で逝去。
※2018/4/20発売「mark09 カラダのミライ」転載記事
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