(写真 藤巻 翔/文 礒村真介(100miler) )
サイクルロードレースの世界ではよく知られているパワートレーニング。
実は今、ランニングの世界でも早い人は導入し始めている。
自転車の場合はペダル付近のクランクというパーツ内部にパワーメーターを設置して測定するが、ランニングでは主に靴紐に小さなポッドを装着し、ワンストライドごとのパワー(出力/単位はW=ワット)を測定する。
名著『Lore of Running』の中で、南アフリカの生物学者ティム・ノークス博士はこう述べている。
「ランニングのパフォーマンスを知るには、ランニングエコノミーが最も正確な数値である」と。
ざっくり効率的なフォームと言い換えることができ、パワーメーターの登場によりようやく数値として算出することが現実的になった。
また、パワーを測定することで練習メニューの強度も正確に把握、調整できるようになる。この2つが大きなメリットだ。
「Efficiency IndexとrFTPw」 この2つを算出できることが、パワーメーターでパワーを測定することの代えがたいメリットだ
◎改めて、パワーとは?
ランニングにおいてパワーメーターで測定できるパワーとは、ストライドの動作が生む出力の大きさ。
基本的に力を入れてスピードを上げれば出力パワーのW(ワット)数は増え、下げれば減る。
ここで大事なのは、外的要因に左右されず、そのときの動きから生まれる出力が純粋に数値化されること。
例えばフルマラソンで一定のペースを保ち続けると、疲労するにつれ心拍数は上がるが、ペースが落ちさえしなければパワーはさほど変化しない。
◎Efficiency Index について1
ランニング中のパワーは前後の方向だけでなく、上下や左右にかかるパワーも含め3方向の和がトータルで計測される。
ここで、できるだけ前後方向のみにパワーを集約できれば効率のいい走り、ランニングエコノミーが高いと言える。
ランニングエコノミーはパワーメーターを使って、ある区間の平均パワーを計測すれば算出できる。
それがE.I.(Efficiency Index)と呼ばれる指標で、〈分速ペース(m/分)÷平均パワー(W)=E.I.〉>となる。
◎Efficiency Index について2
ある区間をキロ5分のペースで走り、そのときの平均パワーが220Wだったとしよう。
キロ5分を分速に直すと200m/分となるので、E.I.は200÷250=0.8となる。
E.I.は1.0を超えると優秀で、効率的な走りとされる。
この例の0.8というのはランニング時のパワーをそれほど上手に前後方向(進行方向)への力に使えていない、ということ。
ランニングフォーム等を見直す余地があり、ランニングエコノミーの向上を目指したい。
◎rFTPw について
rFTPwは60分間持続できる最大限の平均パワーのこと。
厳密には60分で全部出し切る走りで計測できるが、3分-9分走法など近似的に算出する方法もある。
rFTPwが求められるとトレーニング強度を決める指標になり、リカバリージョグならrFTPwの80%以下のパワーで、インターバル走ではrFTPwの106~115%のパワーで行うなど、最適な強度の目安が分かる。
トレーニングが上手くいけばrFTPwは向上するので、定期的に再計測したい。
ランニング用のパワーメーターはこれだ
STRYD
ストライドはカーボン製の小さなフットポッドに3D加速度センサーを搭載し、ランニング時のパワーなどを計測できるデバイス。これ単体でも、代表的なGPSウォッチに連動させて使うことも可能。専用のポータルサイトも用意される。¥28,000 株式会社ストライド(STRYD)
GARMIN
ガーミンウォッチのユーザーであれば、このダイナミクスポッドを用いてパワーの測定が可能(機種による)。ポッド自体は腰に装着し、内部の加速度センサーのデータから推定してパワーを算出。左のストライドとはやや異なる値がでる。¥8,400 ガーミンジャパン(GARMIN)
監修:福地 孝
株式会社ロータス、ストライド代表。アルトラやルナサンダルといった新しいギアを輸入しつつ、海外の最新理論に明るいトレーナーとして、聖蹟桜ヶ丘にストライドラボを立ち上げランナーのパフォーマンスアップに貢献している。ファットアダプテーションを日本に導入した立役者。写真のトレイルランナー、Tomoさんこと井原知一さんへのアドバイスも務める。
※2019/4/10発売「mark11 トレーニングは贅沢時間」転載記事
「生涯で100マイルレースを100本走る」を掲げるトレイルランナーのTomoさんがパワートレーニングを実践した詳細記事は本誌P126-127をぜひご参照ください。
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