サステナブルなシューズ作りとブランディングで知られるAllbirdsが初めてのランニングシューズ〈Tree Dashers〉を発表した。環境問題や走ることに日々前向きなランナーが、注目のこのシューズを「自撮り」写真とともにインプレッション。
2020年春にAllbirdsが日本上陸を果たしたことは、ファッションへの感度が高い人々にだけでなく、環境に高い関心を持つ人々の間でも大きな話題となった。ウールやユーカリといった自然素材から作られるシューズ、生産工程における二酸化炭素排出量の提示、D2Cによる適正価格での商品展開とストーリーテリングなど、語るべき話題には事欠かない。
そんなAllbirdsにおいて、今回フォーカスするのは、先日発表されたブランド初となるランニングシューズ〈Tree Dashers〉だ。持続的で健康的な、ランニングのあるライフスタイルを送るonyourmark読者には特に気になるであろうこの新製品を、さっそく男女2名のランナーに足入れしてもらった。撮影取材が困難な状況ということを踏まえ、それぞれの〈Tree Dashers〉体験を、それぞれの「自撮り」写真でインプレッションしてもらった。
シューズを履く前から、「目からウロコ」
「Allbirdsのシューズはずっと履いてみたいと思っていたので、すごく嬉しいです」と語るのは永山華奈さん。週末の度にどこかの山を走っているトレイルランナーで、スポーツブランドのランニングコミュニティでキャプテンを務めた経験も。留学していたオレゴン州ポートランドではサステナビリティを第二専攻として学び、自身の生活や消費に関しても環境負荷や持続可能性に意識的だ。Allbirdsをもともと知っていたのも、むべなるかな、である。
Allbirdsはブランドとユーザーが直接にコミュニケーションをとるD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)のブランドだ。だから、この春にオープンした公式オンラインストアのユーザビリティもとても高い。
「スマホからウェブサイトで注文したんですが、特に悩むところもなくスムーズでした。夜にポチって、翌日には可愛いヒツジが踊っている発送メールが届きました。早い!」
ユーザーがストレスなく購入を行えるのは、D2Cブランドにおいてキーポイントだ。しかしAllbirdsはさらに進んで、ユーザーが製品を受け取るその体験までも驚きのものにしてくれたそう。
「シューズボックスに発送伝票が貼られただけの状態で届きました。同時にソックスも注文していたんですが、それはシューズボックスの中にそのまま入っていて。無駄な包装が一切なく、スペースを有効活用して環境にも優しい。目からウロコが落ちました」
通販で購入した品物が、サイズに見合わない梱包で送られてきた経験のある人は多いだろう。それ自体は大量流通によりコスト削減に寄与しているかもしれないが、環境のことを考えると諸手を挙げて歓迎はできない。Allbirdsの一見ミニマルすぎる梱包は、資材のコストだけでなく環境への負荷も下げている。アイテムが届いたその瞬間から、ブランドが発信するメッセージに触れることになる。永山さんはそれを受け取る側の気持ちにも思いをはせる。
「たくさん梱包されていることで安心する人もいると思います。だからこそブランド側だけでなく、受け取る側も環境に配慮する気持ちをもって、双方向に理解を進めていけるといいですね」
「綿あめの上を走るような」感覚
こうしてちょっぴり驚かされながら手元に届いたシューズ〈Tree Dashers〉。足を入れてみると、まずはそのクッション性の高さに魅力を感じたという。そして走ってみると、好みのライド感だった。
「綿あめの上をぴょんぴょん走ってるような感覚でした。カカトのところに入っているメリノウールが足への当たりを優しくしてくれて、いつも履いているシューズも最初はかかとが靴ズレしちゃうんですが、〈Tree Dashers〉は初めから痛くなかったです。私は反発力のあるスピードレース用のシューズより、クッション性に優れたシューズが好みなのですが、自然素材を融合させてこれほどまでの走り心地を可能にする技術に驚かされました」
〈Tree Dashers〉を履いてのランニングは、社会状況を鑑みて家の近所ランに。とはいえ、ランニングがライフスタイルな彼女だから、「いつもの」ランニングも変化に富んでいる。
「ホームコースは、鵠沼スケートパーク~平塚までの海沿いを行くルート。今はほとんどのビーチが閉鎖されていますが、コースの一部には砂が溜まっていて、そこで砂浜ランをしたり公園のトレイルを走っています。いつも、普通のロード用のシューズで行っちゃいますね」
ランニングシューズにとっては、ハードなシチュエーション。けれど高いクッション性のある〈Tree Dashers〉を履いて、永山さんは軽快に駆けていく。永山さんらしい、楽しそうな笑顔がそこに浮かんでいる。ランニングコミュニティのキャプテンとして多くのランナーと触れ合ってきた永山さんは、ランニングが生活の中にある人にこのシューズを勧めたいという。
「ランニングのONとOFFをシームレスに、普段の生活とランとを繋いでくれるシューズですね。ちょっと走ってそのまま買い物もできるし、カフェに寄ってもいいと思います」
プロギング ランを通して環境のためにできること
もうひとつ、永山さんのいつものランには大きな特徴がある。ランニングをするときに必ず一個、ゴミを拾うようにしているのだそう。北欧発祥のゴミ拾いジョギングで『プロギング』と呼ばれるそれは、すっかり彼女のライフスタイルになっている。
「フルマラソンに初めて出場したときに、カップやジェルのゴミが道路に散乱しているのを見て言葉を失いました……。健康にいいはずのランニングが、こんなにも環境負荷の大きいスポーツでいいのかなと。そんな時に知り合いづてにプロギングを知りました。今は必ず走る時にひとつゴミを拾うというルールを課して走っているんです」
プロギングを始めた時は、軍手にビニールのゴミ袋のフル装備で走っていたという。しかしそれはゴミを拾うためのウォーキングとなり、ゴミを拾わなきゃという精神的な負荷にもなった。彼女自身、持続可能なスタイルを模索していく中で、手ぶらでスタートしてゴミをひとつ拾う、という今の方向に落ち着いた。現在はゴミに付着したウイルスを考慮して、左手にはグローブをしている。習慣化して、無理なく続けていきたいという。
海沿いは時に大量のゴミが流れ着く。それが拾われなければ、全部海洋ゴミになる。特に数百年のスパンで残存するという海洋プラスチックゴミは昨今大きな話題だ。
「Allbirdsのシューズの靴紐は、リサイクルペットボトル製だと聞きました。〈Tree Dashers〉の2本分のシューレースがペットボトル1本からできている。そう思うと、落ちているペットボトルを見る目が変わります。どんな小さなことでも、環境に対してランニングを通してできることがあると思います。プロギングもそうだし、Allbirdsのシューズを選ぶこともその一つじゃないかなと」
とはいえ、走る楽しさがなければそれは続かない。永山さんにはすでに〈Tree Dashers〉を履いて、どんなランを楽しむかのイメージが固まっている。
「ルートも設定タイムも決めないで、体が自然と動く方向に駆けてみたいですね。道に迷ってもいい。何も難しいことは考えず、このシューズのルーツである地球を駆け抜けてみることで、自分の中に新しい発見ができるかも。この間は、知らない道から富士山が見えて感動しました。家のすごく近くなのに、そんなところがあるなんて!」
〈Tree Dashers〉は、まだまだ永山さんにたくさんの発見と驚きをもたらしてくれそうだ。