adidas(アディダス)イノベーションの粋を集めたランニングシューズ、ULTRABOOSTシリーズの最新作、「ULTRABOOST 21(ウルトラブースト 21)」が2月4日に発売される。開発者のインタビューと編集部インプレッションとともに、そのアップデートの全貌をお届けします。
スタンスミスやスーパースターといった歴史に残る名作を数多く創出してきたadidas。ランニングカテゴリーの代表作であるULTRABOOSTもまたそのひとつと言えます。2015年の1stモデル発売から様々なアップデートを繰り返し、21作目となる今作。まずBoostフォーム*のボリュームアップに目を奪われますが、実際はどのような改良が加えられたのか、じっくりチェックしていきましょう。
※Boostフォーム = addasがドイツの化学企業BASFと共同開発したミッドソール材。TPUと呼ばれるポリウレタンを仮発泡させた数千ものセルの集合体からなる。細かい粒をたくさん集めることで、本来は相反する反発性とクッションの両立に成功した。
Index
ULTRABOOST 20からの主なアップデートポイント
ADIDAS LEPの開発
ULTRABOOST 21の最も特徴的なアップデートは、アウトソールに搭載されていたトルションシステム*を再設計したこと。従来のトルションシステムよりも、新たに開発された「ADIDAS LEP(アディダス リニアエナジープッシュ)」は前足部の屈曲剛性が15%も向上しています。このアップデートによりもたらされるベネフィットは高い反発性。一歩毎のストライドが従来モデルよりも伸びるということです。
*トルションシステム = “足の自由”の実現を目的に開発されたオリジナルテクノロジー、アウトソールに溝(トルショングループ)を入れ、前部(つま先部分)と後部(かかと部分)に分割。一本のバー(トルションバー)でつないだ構造で、足本来の動きを確保しつつ、ねじれや危険な動きをプロテクトする。30年以上にわたりadidasの多くのモデルで使われ続けているadidasを代表するテクノロジーのひとつ。
6%増量されたBoostフォーム
ADIDAS LEPと同様に大きく改良が加えられたのがBoostフォーム。そのルックスからもわかる通り、ULTRABOOST 20と比較して、ヒール周りのみで6%増量されています。ADIDAS LEPの反発性をフォローアップし、ダメージを受けないように導き出されたベストバランスが“6%”という数値なのでしょう。反発力がありながら、着地衝撃によるストレスを限りなく小さくし、快適性を保つように設計されています。
極上のフィット感を生むPRIMEKNIT+
ADIDAS LEPとBoostフォームによる反発性と快適性の融合も、アッパーのフィット感が低いようでは足がブレて、エネルギーをロスしてしまいます。ULTRABOOST 21では、様々なカテゴリーのシューズで使われているマテリアル、PRIMEKNIT(プライムニット)を改良したPRIMEKNIT+を採用。ランニング時のエナジーリターンを最大限引き出すため、従来よりもきめ細かく密度の濃いニットアッパーでフィット感をより高めています。
開発者インタビュー
先日行われたメディア向けプレゼンテーションで、アディダス ランニング フットウェア部門 ディレクターのStephan Schneiderさんにインタビューし、今回のアップデートのポイントについて聞きました。
「ULTRABOOST 21の構想は2年ほど前からスタートしました。これまでのモデルで何を提供できていて、これから何を改善しなければいけないのか、ULTRABOOSTはアディダスにおける革新の象徴ですから、毎回決定的な発展を見せなくてはいけません。Boostフォームによる反発性とクッションのバランスが優れていることがULTRA BOOSTの最大の長所ですが、今回ディスカッションを繰り返す中で着目したのが『快適性』でした。
ULTRABOOST 21は、ULTRABOOST 20で得たフィードバックを元にしています。ポジティブな意見としてもっとも多かったのは『着地からトーオフ(蹴り出し)までのミッドソールの反応が良い』というものでした。この点を活かし、快適性を向上させることが今回の我々のミッションとなったのです。
試作を重ねていく中で生まれたのがLEP。着地の瞬間の地面を捉える力と、すぐさま反発して前進を後押しする力が改善され、思考と身体の動きの連動がよりスムーズに感じられるものができました。
そこから、安定感をもたらし、快適差を際立たるため、ヒール周りに、6%のBoostフォームを増量し、足を包み込むような感覚を追求しました。多くの人に愛されてきたシューズが持つオリジナルのDNA、ヘリテージを継承しつつ、21世紀の最新テクノロジーとを融合させたのです。ULTRABOOST 21は総合力を高めた、ランニングシューズに必要なすべての要素を兼ね備えたシューズと言えるでしょう」。
編集部インプレッション
実際に履いてみてのフィーリングを、編集部インプレッションでお伝えしましょう。
まず足入れをして感じるのはフィット力。PRIMEKNIT+を使ったアッパーはまるで自分の足になったかのように吸い付いてくる感覚があります。ULTRABOOSTシリーズは普段履きとしてのニーズも高いですが、デイリーユースするのであれば、普段履いているシューズよりも0.5cmないし、1cm大きいサイズを選ぶ方がいいかもしれません。抜群にフィット感が高く、走ってみるとその感覚は顕著に現れます。一歩一歩、蹴り出しと着地を繰り返しても、まったくシューズと足がずれる感覚がありません。
もう一点、象徴的な感覚として取り上げたいポイントはヒールカップのホールド力の高さ。外くるぶしをキュッと締めるようにフィットし、足ブレを防いでくれます。同時に姿勢を正されるような感覚も。フォームを意識して走るとその効果をより実感します。ランニングエコノミーを高めたいと思っているランナーによりマッチするシューズと言えるでしょう。
ウォーミングアップを終えて、少しペースを上げて走ってみると、Moritzさんがインタビューで話してくれたように、思考と身体がスムーズに連動し走っていることに気づきます。「快適性」とはイコール、余計なストレスを感じず、走ることに集中できることなのかもしれません。これは個人的感覚になりますが、1kmを4分20秒くらいで走っている時が最も快適な感覚で走ることができました。
ゆっくりとした強度の低いランニングになるほど反発性が際立ち、ペースを上げるほどにクッションが効いてきます。しかし、クッションが効きすぎて反応が遅れるということはありません。
反発力とクッションのバランスは従来モデルよりさらに高まり、身体の一部と感じるほどのフィット感でサポートしてくれるシューズ。ランニングのパートナーとして強力な相棒となりそうです。