設立10周年を迎える山と道。自らが必要とするこだわりのギアやウェアを生産するだけでなく、情報発信や全国各地でのコミュニティイベントも行う、現在の日本のハイキングカルチャーを代表するブランドです。
そんな彼らが軽さや動きやすさにこだわって作るウェアは、我々トレイルランナーのニーズを十分に満たすものも多く、Run boys! Run girls! でも6年ほど前から販売をしてきました。
これまでは、取扱店によるweb販売は許可されていなかったのですが、今年の4月よりwebパートナーショップという制度がスタート。独自の目線で山と道製品の魅力を伝えるお店でのweb販売ができるようになり、幸いにもRBRGはトレイルランニング目線で山と道の魅力を伝える役割をいただきました。
ということで、今回のMARK GEARは2020年から発売が開始された山と道 DW 5-Pocket Shortsの紹介をしようと思います。
大定番 5-Pocket Shortsシリーズ
DW 5-Pocket Shortsの魅力を語るには、山と道の5-Pocketシリーズ全体の話から始めなければなりません。
2013年に「ハイカーのためのショーツ」として5-Pocket Shortsが発売されました。「ハイカーのためのショーツ」と銘打たれてはいましたが、発売直後から僕たちランナー界隈での反応も非常に良かったんですね。最初は日常使いのショーツとして使っていたランナー達も、徐々にランニングに使い始め、その使い勝手の良さに気づいていきました。
それ以降、5-Pocket Shortsは使い勝手向上のための細かいアップデートはあれど、基本の構造は変わらずに大定番商品として毎年ファンを増やし続けています。
僕も発売と同時に購入し、2013年と2015年に参加したUTMBで実際に使用。結果、2015年は無事このショーツと一緒に168km 累積標高10,000mの旅をゴールすることができました。毎年夏に行く数泊のファストパッキング(ここ数年いけていませんが…)でも僕はこのショーツを愛用しています。
続いて2015年には、5-Pocket Shortsのロング丈、5-Pocket Pantsが発売されました。僕はあまりハイキングをする方ではないのですが、その使い勝手の良さから、日常生活から旅行、キャンプまで様々なシーンでこのパンツを履き倒しています。
ランパンより軽い、超軽量 Light 5-Pocket Shorts
その次に発売されたのが、Light 5-Pocket Shorts / Pants。「ハイカーのため」から、トレイルランニングやファストパッキングまで視野を広げた結果、Light 5-Pocket Shortsは5-Pocket Shortsの約半分の重量、一般的なランパンと比べてもより軽い超軽量モデルに仕上がりました。
実際の使用感はどんなもんだろう?と思い、5,000mのタイムトライアルで携帯をLight 5-Pocket Shortsのポケットに入れたまま本気で走ってみたのですが、全くストレスなく走れてしまったことに驚きました。また、ロング丈のLight 5-Pocket Pants は超軽量生地の肌触りがとても良く、春以降暖かくなってからはこのパンツばかり履くようになりました。
3番目のショーツ、DW 5-Pocket Shortsが目指したもの
DW 5-Pocket Shortsは、5-Pocket Shorts、Light 5-Pocket Shortsに続いて2020年に発売が開始された山と道3番目のショーツです。そして、このショーツはこれまで山と道で出してきたボトムスの短所を克服すべく生まれたショーツなのです。
大定番の5-Pocket Shortsは、トレイルランニングでも十分使用が可能なとても完成度の高いショーツでしたが、生地の強度がある分、いざランパンと比較するとやはり少し重量があったり、動きが制限されたりしました。
一方のLight 5-Pocket Shortsは超軽量かつ少しストレッチする生地を用いて股下も短くしたことで、圧倒的な動きやすさを手に入れました。しかし、超軽量な生地には耐久性や大量に汗をかいたときの肌へのはりつきなどの弱点もありました。
それらの短所を克服すべくDW 5-Pocket Shortsが目指したもの、それが多湿な夏でも汗で肌に密着することなく、運動中にストレスを感じない軽さと動きやすさと強度の両立でした。そして、様々な試行錯誤を繰り返した結果、軽くて動きやすく、強度もありつつ、肌離れも良い、非常にバランスの取れたショーツが完成しました。
個人的にも、汗を沢山かきそうな一定時間以上のトレイルランからファストパッキングまで、このショーツを使いたいシーンが幅広くありますが、実はそのバランスの良さを一番感じることができるのは他でもないトレイルランナーだと思っています。
5-Pocket Shortsに重さやごわつきを感じるのも、Light 5-Pocket Shortsに汗の張り付きを感じるのも、トレイルランがギアのスペックをフルに使うアクティビティだから。軽く使う分には上記2モデルでもそれほどストレスは生まれません。
逆に、そこから山と道のクオリティへの強いこだわりも感じ取ることができます。ハイカーのみならず、トレイルランナーなど運動強度が高い人達のニーズもしっかり満たす製品を作ろうとしているからです。
DW 5-Pocket Shorts の特徴
ここからは、DW 5-Pocket Shortsの製品としての特徴を見ていきます。
1)考え抜かれたポケット位置
5-Pocketシリーズ全てに共通していて、5-Pocketシリーズの圧倒的人気を生み出すベースとなっているのが、5つのポケットの位置です。
5つあるポケットのうち、両サイドのフロント(1st/4th)ポケットやヒップ(3rd)ポケットの3つは一般的な構造。ランニングに使うショーツとして考えるとヒップポケットはないものも多いので、ジップ仕様のしっかりとしたものがついているのは嬉しい人もいるでしょう。
特筆すべきはスマートフォンの入る2ndポケットの位置です。ヒップの側面上部にポケットが来ることで、収納物の出し入れがしやすく、かつ足の動きに干渉しません。
ランニングに使えるあらゆるボトムの中で、このポケット位置が一番スマートフォンを収納して走りやすい、そう言っても過言でないくらい。
元々ハイカーのために考え出されたポケット位置でしたが、結果としてランニング時にも最適でした。今ではこの位置にスマートフォン用ポケットを配置するランパンも出てきていますが、そういった流れの源流にこの5-Pocket Shortsシリーズがあると考えています。
左のヒップについているマップ収納を想定して作られた5thポケットも、背面ではなく側面に配置されていることで、モノの出し入れがとてもしやすくなっています。ちなみに僕は家の近所を走る時にここに家の鍵を入れています。かなりジャラジャラした鍵ですが、走る際に揺れなどが気になりません。
2)高い収納力
ポケット位置の絶妙さだけでなく、そのポケットの数から生まれる収納力の高さも特徴です。ランニング系のショーツはもちろん、Patagoniaのバギーズショーツなどと比べても、その収納力はとても際立っています。
ウルトラトレイルのレースにおいては、複数の補給食(とそのゴミ)、予定時刻を書いたタイムテーブル、スマートフォンなどの細々としたものをすぐ手の届く位置に収納しておきたいのですが、5-Pocket Shortsシリーズのポケット群は、そんなときにもとても役に立ちます。
特に収納において役立つのが左ヒップ側面の5thポケット。大きめの補給食や手ぬぐいなんかも収まるサイズですし、それでいてランニングの足上げの邪魔にならない絶妙なポケットです。
また、DW5ポケットショーツは腰回りがベルトになっているので、ある程度ものを収納してもショーツが下がってきませんし、走りながらのフィット感修正なども簡単にできます。
3)肌に張り付きづらい独自の生地構造
ここからは、DW 5-Pocket Shorts 独自の特徴の紹介。
DW 5-Pocket Shortsの生地重量は86g/㎡で、5-Pocket Shorts(120g/㎡)とLight 5-Pocket Shorts(55g/㎡)の間の重量となり、柔らかくもハリのある生地感と若干のストレッチ性(1way)をあわせ持ちます。
DW 5-Pocket Shorts開発の目的の一つに”肌離れのよさ”がありますが、生地には様々な過程を経て山と道が独自に開発を依頼したパーテックス・イクイリブリアムが採用されています。パーテックス・イクイリブリアムはLight 5-Pocket Shortsにも採用されていますが、DW 5-Pocket Shortsの生地はそれとは構造が異なります。
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DW 5-Pocket Shorts
Pertex Equilibrium (100% Nylon) 86g/㎡
Light 5-Pocket Shorts
Pertex Equilibrium (83% Nylon, 17% Polyester) 55g/m²
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DW 5-Pocket Shortsの生地は、より太い糸を織り込むことによってさらに生地の凹凸を際立たせ、大量の汗で肌も生地も濡れるような状況でも、生地と肌との密着を防いでドライな肌触りを保っています。ちなみに、製品名のDWは、生地の二重織り構造=Double weaveの略字です。
実際に大量に汗をかく状況で2時間ほど走って両モデルを比較してみましたが、DW 5-Pocket Shortsのほうが肌面の凹凸に加えて生地の厚みもある分、生地が汗をある程度吸い込む事ができ、Light 5-Pocket Shortsより肌に張り付きませんでした。
一方で、DW 5-Pocket Shortsは肌面の凹凸が際立っている分、肌触りに関してはLight 5-Pocket Shortsのほうが気持ちよく感じます。DW 5-Pocket Shortsはドライ時に凹凸が肌に当たると少しザラっとした肌触りになります。ただし、不快感があるわけでもありませんし、ショーツであればほとんど気にならないかと思います。
4)カラー
Light 5-Pocket Shortsが独自の鮮やかなカラーなのに対して、DW 5-Pocket Shortsは5-Pocket Shortsに近いオーセンティックなカラー展開です。
ただし、5-Pocket Shortsと生地が異なる分、色味はDW 5-Pocket Shorts独特の雰囲気があります。特にBlueは発色もよく、気持ちの良い色調です。
5)生地の引きつれの発生について
とてもバランスの取れたショーツであるDW 5-Pocket Shortsですが、使用に際して予め理解しておいてほしいこともあります。それは、生地の引きつれです。
DW 5-Pocket Shortsに使用されているパーテックス・イクイリブリアムは特徴である特殊な二重織り構造により、裏面に一定間隔で太い糸が織り込んでありますが、太い糸は極細の繊維の束になっており、その繊維と体毛が運動により擦れて絡み合うことで糸の引きつれが生じ、独特の波打ったような風合いになることがあります。
これは生地の持つ元々の特徴で、製品不良ではないことをご理解ください。
当初、山と道ではこの引きつれを防ぐべく、生地にコーティングをするなどの対策を試みたようですが、それでは生地が固くなってしまい持ち味が失われてしまったとのこと。
結果として、山と道はこの引きつれを生地の持ち味と同時に生まれる特徴として捉え、しっかりユーザーに周知して販売するという選択をしました。
何かを追い求めると別の何かが問題になる。その問題を解決すると別の問題が生じる。まるでもぐら叩きのようだ。これまで何度も制作ノートに同じことを書いてきたが、すべてにおいて完全な道具を作るのは難しい。長所と短所がトレードオフとなり、独自の風合いと着心地を作り出しているのであれば、良し悪し含めて、他には無い独特な魅力を持つ山と道らしい製品と思えるのだ。
上記は、山と道のDW 5-Pocket Shorts制作ノートからの引用です。多くの製品が弱点を隠し、良い点ばかりを喧伝するのに対し、試行錯誤の過程までを明確にしてユーザーに伝えるというのはとても誠実な姿勢だなと思います。
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以上、山と道のDW 5-Pocket Shortsに関しての紹介でした。
これまで5-Pocket ShortsやLoght 5-Pocket Shortsをガッツリ履き込んできてそれぞれのモデルの長所短所を理解している方や、5-Pocketシリーズを買うのは初めてだけどトレイルランニングを含めて様々なアクティビティで使いまくりたい、という方には、このDW 5-Pocket Shortsをぜひ試していただきたいな、と思います!
※Run boys! Run girls!では、「山と道」製品の在庫確認に関するお問い合わせに関しては、お問い合わせが大変多いのと、在庫がかなり流動的な点から営業時間内のお電話でのみ承っております。メールにてお問い合わせいただいてもご回答できませんので、予めご了承ください。
商品ページ
DW 5ポケットショーツ(MEN)
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