世界最大級のアスリートプラットフォームであるStrava(ストラバ)が世界規模のアクティブトランスポートデータであるStrava Metroの無料提供を2020年9月から始めていたことは意外に知られていない事実かもしれません。
Strava MetroとはStravaに記録される世界最大規模のアクティブトランスポートデータを匿名化して集計・集約したデータセットで、自転車や歩行者に優しい環境づくりに役立つツールとして、すでに世界の都市で活用されています。
世界各地のアーバンプランナーや自治体、交通インフラ関連機関にとってStravaによるアクティブトランスポートデータが貴重なものであることは想像に難くないですが、コロナ禍によるユーザーの行動変容が気候変動対策にとって有益な可能性を指し示していることがわかってきました。
Strava Metroが明らかにするコロナ禍の行動変容
コロナ禍で公共交通機関の利用に不安が募る中で自転車をはじめとしたアクティブトランスポートの増加が、世界の様々な都市で見られています。
Strava Metroの2019年と2020年の1年間の自転車移動の総数を比較すると、いずれの都市でも新型コロナウイルス感染症が拡大した初期の2020年4月は減少するものの、年間で比較するとニューヨークでは113%増、パリでは124%増、東京では125%増という結果となりました。
さらに東京では、2020年と2021年の1月~9月の総アクティブトランスポート数を比較しても116%増となっており、継続的な増加傾向も見られています。
一方で、世界でも自転車移動の促進に特に力を入れているイギリスでは、主要都市のアクティブトランスポート数が2年連続で2019年の水準を下回っており、コロナ禍の影響が大きく残っていることによる影響と推測できるとのこと。とはいえ、2021年のロンドンの自転車移動のボリュームは東京の約6倍ほどもあり、他の都市と比べても群を抜いて多く、アクティブトラベルの活況を垣間見ることができます。
また海外の都市の一つのトレンドとしては、2020年10月~2021年2月にかけてのアクティブトランスポート数に大きな減少傾向があったことがわかっています。一方で、東京では年間を通して大幅な変動は見られません。他の都市と比べても、東京は冬期においても一定量の活動があり、年間通してアクティブトランスポートに適した環境、あるいはその需要があることがデータから想像することができます。
<東京>
<ニューヨーク>
<ロンドン>
<パリ>
Strava Metroから見える自転車移動によるCO2削減の可能性
自転車による移動を車で移動した際のCO2排出量に置き換えるとアクティブトランスポートが気候変動対策に貢献する可能性も見えてくるということです*。
例えば東京のアクティブトランスポートを当てはめると、2019年は約1,678トン、2020年は約2,045トンのCO2排出量に相当します。2021年の9月時点では、CO2排出量約1,607トン分の移動がアクティブトランスポートに費やされ、2020年の同期間を上回っているのだそう。
さらに、日本の三大都市(東名阪)で見ると、2021年は9月時点で合計約2,202トンのCO2排出量がアクティブトランスポートによって削減できたと仮定できます。
*アメリカ合衆国環境保護庁による予測モデルを基にしたCO2排出量
<東京>
<名古屋>
<大阪>
「2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を2013年度比で46%減」を掲げる日本の大きなスキームの中では小さな数字に見えるかもしれませんが、自転車移動をはじめとしたアクティブトランスポートがCO2削減に結びつくことは我々ユーザーにとってもある種のモチベーションになる可能性も秘めています。
今後もStrava Metroを無償提供していく中で、サイクリストや歩行者の環境をより快適にするという使命をもち、それを共有するパートナーとともに、世界の都市にスマートでサステナブルなデザインを提案し、アスリートコミュニティに還元していくと意気込むStrava。
Strava Metroにより再構築されていくこれからの各都市の有り様にも注目が集まりそうです。