The North Faceがこの10月に渋谷・宮下公園にオープンした新店舗〈THE NORTH FACE Backmagic〉は、「バックパックとシューズ」に焦点を当てた新業態のショップだという。若者世代が行き交うカルチャースポットに、好調のアパレルではなくギア&シューズを打ち出すその理由とは? 店舗を訪ねた。
ショップ名になっている「Backmagic」は、古くからのThe North Faceファンならニヤリとするかもしれないし、アウトドアギアの歴史に通じている人なら「おっ」と目を惹くものだろう。70年代後半から80年代にかけて、同ブランドが発表したフレームパックの名称だからだ。ブランドのバックパックの歴史を象徴するアイテムの名前を店舗に関していることからも、このショップにかける熱量が伝わってくるようだ。
若い世代にロングライフなアイテムを
新しい渋谷のランドマーク、Miyashita Parkの小洒落た店内へと足を踏み入れると、ライフスタイル寄りのアイテムが多いことに気づく。土地柄客層は若いカジュアル層が多いということもあり、コアな山用ギアというよりは、街からちょっとしたアクティビティにまで使えるバッグ、シューズそして若干のウェアが並んでいる印象だ。ショップ名にもなっているBackmagicが発売された70-80年代のアメリカの大学生のライフスタイルをイメージしているそうで、カレッジスタイルのギアとしてバックパックが提案されている。
「お店の大きな目標としては、若い方々にロングライフの商品を届ける、ということがあります。より良い未来のための選択『Choice for future』を掲げ、このコンセプトに沿った機能的なバッグやシューズを長く使っていただける提案を行っています」と店長の赤岡宏喜さん。
そんな中で、道行く人々のアイキャッチとなっているのが、目にも鮮やかなバックパック群だ。The North Faceのザックにしては大胆な配色のアイテムに足を止める人も多いのだとか。レギュラーカラーにないその配色は、〈THE NORTH FACE Backmagic〉の目玉でもある「カラーカスタマイズ」された一品だという。
すでに渋谷パルコの〈THE NORTH FACE LAB〉ではカスタムウェアサービス〈141CUSTOMS〉が提供されているが、パック類のカラーカスタマイズは今回が初めて。ウェアカスタムと異なり、こちらは事前予約なしでカラーカスタムを楽しめるというからより気軽に自分だけのアイテム作りを楽しめそうだ。
対象となるのは、〈シングルショット〉(23L)、〈ホットショット〉(26L)、〈ビッグショット〉(32L)と街でも郊外ハイキングでもよく見かけるブランド定番のバックパック3サイズ。さらに〈スウィープ〉と〈グラニュール〉の2サイズのウェストポーチだ。
カラーカスタマイズ=サステナブルという実際
話を聞くと、このカラーカスタマイズには単に自分だけの一品が作れるということ以上の意味が込められていた。ショップが掲げる『Choice for future』の文脈でも非常に大きな意味を持つサービスだという。
「カラーカスタムで使用する生地は、工場でストックされていく残反を使用しているんです。新たに生地を製造するのではなく、環境に不可をかけずに個々人のオリジナルなアイテム作りを実現しているんです。アウトドアブランドとしてのサステナブルな取り組みとしても見ていただけると嬉しいですね」(赤岡宏喜さん)
SDGsが盛んに叫ばれるようになった昨今でも、まだまだ個人レベルでできることを各人が模索している状態。「気に入ったものを長く使う」現代の若者の価値観と、環境に負荷をかけないパーソナライゼーションはとてもよくマッチしそうだ。それこそが、この渋谷にこの業態のショップをオープンさせたThe North Faceの狙いなのだろう。
カラーカスタマイズを実際に体験
残反を使うという話を聞いているうちに、私もひとつ取材用のバックパックが欲しくなってきてしまった。お店のスタッフさんと相談しながら、実際にカラーカスタマイズを体験してみた。