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3月6日に開催された東京マラソン2021で、日本人トップの4位でゴールした鈴木健吾選手。日本記録保持者に向けられた期待という重圧に耐えた一年を経て、結果で応えた。東京マラソン後の会見では、苦しみを乗り越えた爽快さを感じさせながらレースを振り返った。

日本人記録保持者の重圧

昨年日本記録を出してから一年間、自分自身と周りからのプレッシャーが重圧となっていき、苦しかったです。でも周りのトレーナー、スタッフ、もちろん妻もそうですけど、たくさんの支えのもとで、今回チャレンジャーとして東京マラソンに臨むことができました。おかげでこのような結果を出すことができたんだなと思っています。

多くの方に共通して言っていただいた、“まだ日本記録を一度出しただけなのだから、自分らしくチャレンジャーで行け”という言葉にも励まされ、スタートラインに立つことができました。

1月のニューイヤー駅伝以降の練習も思うようにできなかったこと、調子がよくなかったこともあり、早い段階で勝負を仕掛けたいと考えていました。ペースメーカーが外れる“25kmまで”が自分の中でひとつのポイントだと思っていて、そのあたりまでにある程度動こうと決めていました。前半は自分でもわかるくらい落ち着きがない走りだったなと思うんですけど、プラン通り25km以降、一人になってからは自分のペースで時計を見ながら走れていたことが良かったと思います。

今回キプチョゲ選手をはじめ、他にも外国人選手が東京に来てくれるということはとても嬉しいことでした。試合前の様子を観察していたのですが、これが世界のトップ選手か、というオーラを感じました。本調子であれば、同じ前の集団で挑戦したかったのですが、第2集団で行くことに。結果、3分の差は簡単ではなく、そこに挑むにはかなり険しい道のりだなと思っています。自分の殻を破りながら少しずつ縮めていかないと世界で戦える選手にはなれないことを実感しました。それは、何をしたらということではなく、一日一日の積み上げをしていくことだと思っています。自分の力を過信せずに、少しずつ積み上げていくことが大事になってくるんだと思います。

筋力強化に取り組み、怪我を減らす

自分の理想としている選手像は、速い選手というより、強い負けない選手。試合の目標としては、タイムより、順位や勝負を楽しんでいたい。強い選手というのは、どんなコンディションの時でも走れるということや、勝負の部分で負けないということだと思っています。もちろん世界と戦う上では、3分台のところを日本全体として目標にしていくべきだと思っているので、自分の成長とともに、タイムも意識しています。

琵琶湖で結果を出す前から、体が小さい分、筋力を鍛えていかないと42kmという距離を走り切ることができないということで、自分に必要なウェイトトレーニングを考えてもらい、全体的な筋力強化をしてきました。マラソンを始めてから怪我も多くなっているので、レベルアップするためには筋力強化にしっかり取り組み怪我を減らすことが必須です。



偏りなく鍛えるために、練習メニューに応じたシューズの履きわけを意識しています。アルファフライは反発をもらえる分コントロールする難しさもありますが、自分の走りにフィットしている感覚があります。ですが、厚底のアルファフライだけでは鍛える部位が偏ってしまうので、トレーニングによって薄いシューズ、硬めのシューズなどの使い分けや、強化のジョグなのか、リカバリーのジョグなのかという点でも自分で鍛えたいところをコントロールしています。シューズを生かすということは大事ですね。ジョグはペガサスとリアクトインフィニティを使って走っています。トラックシーズンのスパイクはドラゴンフライを履いて走ります。 

毎日の積み重ねの先に大きな結果がついてくると思っていて、地道に自分のできるトレーニングのギリギリのところをやっていく。そうするとその先に、結果がついてくるのかなと。これからも毎日コツコツと積み上げていきたいと思っています。

夏のオレゴン世界選手権、2年後のパリを見据えて

今回は前で勝負できなかったんですけど、世界選手権に出場した際には前でしっかり積極的な走りをしたいと思っています。東京オリンピックを見てから、オリンピックの舞台に立ちたいという気持ちが特別強くなりました。時間はあるようであまりないのですが、これからは海外レースの経験を増やしていきたいです。なんとしてでも代表権を掴み取って、日の丸を背負ってメダル争いができるように強さ、速さを磨いていきます。

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控えめな口調でありながら、言葉にも強さを感じさせる鈴木健吾。結果を出す者には当然更なる期待がかかる。彼はもうこれを重圧でなく、エールとして受け止める強さを獲得している。