1993年から展開しているGEL-KAYANOシリーズは、アシックスを代表する長距離ランニング用の高機能モデルだ。長距離走行におけるスムーズな足運びをサポートし、足元のぐらつきを抑え安定性を高めることで、多くのランナーをフルマラソン完走に導いてきた。
今作は、シリーズ誕生30周年を機に安定性再解釈したという。新たな機能を設けるとともに、足当たりがやわらかくなめらかなライド感が得られるなど、優れた快適性が追求されている。
長距離走行を分析した安定性と快適性のアップデート
走行距離が長くなり疲労が蓄積したランナーは、走り始めよりもフォームが前傾姿勢になってくる。また、足裏が地面に対してフラットに着地する傾向も強まる。着地からミッドスタンス(重心が足の前側へ移行するタイミング)にかけてプロネーション(内回)してくることで、怪我につながるリスクが高まるのだ。
そこで今作に新たに採用された〈4D Guidance System(フォーディガイダンスシステム)〉に注目だ。走行距離とともに変化するランナーの動きを研究し開発された複合的な機能構造のことで、フォームが崩れてきた時こそ、その安定性と快適性が発揮される。
まず、かかと部は外側に適切な傾斜をつけ、ヒールコンタクト(かかとからの接地)がよりスムーズになる。
また、ミッドソールは内側のかかと部から中部にかけて広がりをもたせた立体形状にすることで、走行時の過度な倒れ込みを抑制してくれる。アーチ部には横に張り出すようにやわらかなフォームパーツを配すことで、疲労時に必要となる中部の安定性と快適な履き心地が得られるようになっている。さらに、靴底の接地面積が広くなったことで安定感がアップしている。
30代目の進化
〈GEL-KAYANO 30〉はアシックススポーツ工学研究所にて走行テストが実施され、すでに快適性において高評価を獲得している。被験者からは「最初に履いたときよりも長時間走った後の方がより快適である」という声が多くあがった。長距離走行を分析して施された細やかなアップデートポイントが他にも。
ミッドソールは、全体を前作より約4mm厚くしつつも、環境に配慮したクッションフォーム材〈FF BLAST PLUS ECO (エフエフブラストプラスエコ)〉が採用され、軽量でやわらかなクッション性を実現。
また、かかと部には〈 Pure GEL(ピュアゲル)〉テクノロジーが内蔵されている。前作に搭載していたタイプと比較して約65%やわらかくなり、 なおかつ約10%軽量化した衝撃緩衝機能により足にかかる負担が軽減される。
靴底は、後部に従来ラバーと比較して約3倍の耐摩耗性をもつ素材が配されている。アッパーはニット素材を採用し、部位によって密度を変えることで、 必要箇所を補強しつつ通気性にも優れた仕様だ。
〈ASICS DESIGN〉の設計思想
4つの構成要素から成る独自の設計思想〈ASICS DESIGN(アシックステデザイン)〉が存在する。
1.ユーザーテスト (性能評価とユーザーの感覚的な着用テスト)
2.サイエンス (フィジカルと感性の両面からアスリートを支える科学的研究)
3.イノベーション (長期にわたる製品考察、継続的な改善プロセスの構築)
4.サステナビリティ(資源効率の向上や排出量削減、持続可能なプロセスの構築)人を常に中心に据えた科学的なアプローチを行い、身体や動きの特徴をあらゆる観点から詳細に分析する〈ヒューマンセントリックサイエンス(人間中心の科学)〉の研究ポリシーは変えず、さらに人に寄り添うことを目的に4つの主要分野の研究開発が軸となる、アシックスのあらたな設計思想だ。
〈GEL-KAYANO 30〉もこれに従い、身体のみならず、心にも優れた構造設計が反映されている。
特に、4つ目の『サステナビリティ』の観点に基づき、製品ライフサイクルで排出される温室効果ガス排出量(カーボンフットプリント)が、アシックスとして初めて〈GEL-KAYANO 30〉に表示された。これは製品の環境負荷を透明性をもって開示するものであり、アシックスが目指す“2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロ”の実現に向けた取り組みの一環だ。今後、他の製品にも順次表示されるようになるという。
四半世紀に渡り、 チャレンジするランナーに寄り添い、愛されてきたGEL-KAYANOシリーズ。レジェンドモデルは先進的な開発により、さらに高度な安定性と快適性が加わった。進化した〈GEL-KAYANO 30〉の発売時期は7月以降ということで、履いて走れる日が待ち遠しい。