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OYM running clubのトレーナーとしてチームを引っ張ってくれる肥後徳浩さんは、これまで学んできたトレーニング理論や経験を活かしてトライアスロンを楽しんでいます。トレーニングはその目的を理解することでより効果を高めることが出来ると言います。ランニングだけではなくエンデュランス系スポーツ全般に応用できて、楽しく効率的にトレーニングしていくための知識をシェアしてくれます。

無理せず楽しく続けていくことがレベルアップのコツ

健康維持やレクリエイション、シェイプアップや筋力アップ、大会参加や競技レベル向上など、スポーツをする目的や楽しみ方は人それぞれ違うと思いますが、どんなスポーツにも共通して言えるのは、無理をしないで楽しみながら続けることが大切だということです。

とくに運動習慣の少ない人が、いきなりきつい運動を長時間行ったり、休養を取らずに毎日運動したら、たちまちオーバートレーニングになってしまいます。その結果、怪我をしたり、体がつらくなって続けていけなくなる、という悪循環に陥りかねません。

きつい運動をしないとトレーニングの効果が出ない、と思われるかもしれませんが、それは普段から高度なトレーニングを行っているアスリートの場合であって、ビギナーほど軽い強度や短い時間の運動でも、続けていけばしっかりと効果が出てくるものなのです。

それに、きつくて苦しい運動よりも、らくで楽しい運動のほうが長続きします。運動を長く続けていけば自然と動きが滑らかになり、筋肉や心肺機能など体の様々な機能が発達してくるので、今までと同じ運動することがもっとらくになってきます。それに合わせて少しずつ漸増的に運動量を増やしていくことで、以前よりもレベルアップしていることに気がつくと思います。

運動量とは「時間」「強度」「頻度」の三つの要素で表されます。運動歴や身体条件、それにトレーニングの目的によって、その人にあった運動量は違ってきます。しかしどんなレベルの人でも、怪我のリスクが少なく安全に続けられる運動強度と運動量の上限を意識することが大切です。

主観的なきつさと運動強度の関係

「時間」「強度」「頻度」のうち、運動していて「きつい」と感じる原因のほとんどは「強度」にあります。運動強度はその人の身体能力に合わせた相対的なものです。有酸素運動の強度は、最大心拍数(HRMax)最大酸素摂取量(VO2Max)を基準としてその何%であるか、または主観的運動強度を基準として表すことができます。

有酸素運動の効果が高いのは「会話しながら続けられるレベル」とよく言われますが、これは「主観的なきつさ」を指標とした運動強度の表し方で、最大心拍数で言い換えると(かなり個人差があるのですが)だいたい50〜65%HRMaxに相当します。

「主観的なきつさ」で運動強度をコントロールできる人もいれば、できない人もいます。感覚が頼りですから、その人の性格やその日の気分によって、また経験があるかないかによってもかなり違いがあるのです。

心拍計はビギナーほど使う価値が高い

その点、心拍計を使えば、客観的でほとんど正確に運動強度をコントロールすることができます。運動時の心拍数をリアルタイムで知ることができるので、自分の体力やトレーニングの目的だけでなく、その日の体調にも合わせて、適切な強度と時間で安全にスポーツを楽しむことができるのです。心拍計というと上級者が使うもの、と敬遠されがちですが、実はビギナーほど使う価値が高いと言えます。

運動強度と主観的なきつさ

陸上競技や競泳、スピードスケート、自転車競技など、トップレベルのアスリートのトレーニングでは、こうした心拍数の測定に加えて、トレーニング中の選手の指先や耳たぶから血液を少量採取することで血中乳酸濃度を測定し、それによって強度や時間をコントロールするという方法が使われています。これは運動生理学や乳酸の性質を応用した新しいトレーニングの方法で、血中乳酸濃度を測ることによって体の中で起こっている変化をより多く知ることができるのです。

ただ実際に血中乳酸濃度を測定しなくても、運動生理の基本や乳酸性作業閾値の概念を理解していれば、心拍計を用いることでも十分効果的なトレーニングを行うことが可能だと思います。

体からの反応を感じることでオーバートレーニングを防ぐ

スポーツをしているとき体の中ではさまざまな反応が起こり、体はいろいろなシグナルを出してくれます。苦しさ、疲れ、怪我の予兆、アドレナリンなどといったシグナルは、がむしゃらにトレーニングしているとつい見逃してしまいがちです。しかし、そういった体からの反応をしっかり感じることで、オーバートレーニングを防ぎ、怪我のリスクを減らし、コンディション維持やトレーニングの効果を高めることができるようになるのです。

監修者:肥後徳浩

元自転車競技選手。自転車選手時代にコーチから学んだトレーニング理論をベースに、方法よりも目的を生理学的、力学的に「理解する」ことと、体の反応を「感じる」ことを大切に、日々トレーニングに取り組んでいる。音楽レーベル「Mary Joy Recordings」主宰。
www.maryjoy.net